ART
7月12日~18日 松坂屋名古屋店にて個展開催
世界が注目する写真家・平塚篤史が新作「Canyon’s」に込めた想いとは
フォトグラファーの道に進んだのは31歳と遅まきながら、鋭敏な感性と美的センスで独自の世界をつくりあげ、注目されている平塚篤史氏。新作のモチーフとして選んだのは、アメリカ、アンテロープ・キャニオンの大自然。平塚氏にとって写真とは何か、そして、「Canyon’s」に込めた想いなどを伺いました。
― 平塚さんは役者の経験を経て、フォトグラファーに転身されました。その異色の経歴ついてお聞かせください。
父(イラストレーターであり、グラフィックデザイナーの平塚重雄氏)の仕事の関係で、家にはイラストやポスター、写真集、LD(レーザーディスク)、模型、フィギュアなどがたくさんあって、今思えばアートに囲まれて暮らしていました。その影響もあってか、子どもの頃から表現や創作することが好きで、中高生くらいまで、よく絵を描いていましたね。仕事として最初に目指したのは、“演技”という表現です。ロンドンの演劇学校で4年間学びながら舞台やショートフィルムに出演し、帰国後は、歌舞伎役者さんの楽屋周りのお手伝いをさせていただいたこともあります。そのうち写真という演技とは異なる表現に魅せられるようになり、31歳の時にフォトグラファーに転身しました。遠回りしたように思われるかもしれませんが、演劇界や歌舞伎界での経験は、写真にすごく役立っていると思います。「Your Rubber」シリーズには女性の手をクローズアップした作品があるのですが、どんなポーズをとれば手先が美しく、艶っぽく見えるかなどは、自身が歌舞伎の所作や日本舞踏を通して学んだ経験を参考にしています。身体をどう動かし、どんな表現ができるかなど、演劇を学んだことが原点となり、写真にも活きていると思っています。
―2023年2月にYUGEN Gallery(渋谷)で開催された個展、「 Your Rubber [ could be your lover … ] 」ではフェティシズムを美しく、官能的に表現されましたが、今回の個展、「Canyon’s」は、雄大なアンテロープ・キャニオンがモチーフとなっています。フェティッシュな作品からランドスケープ作品と、テーマがガラッと大きく変わりましたね。
「Rubber」の原点は、12、13歳の時に父の仕事の参考資料で目にしたイラスト集。ボンデージファッションに身を包んだ女性が描かれていたんですが、いやらしいというより、とても美しく綺麗だなと感じたことを覚えています。写真家を志してから、いつかあの世界感を表現したいと、ずっと思っていたんです。フェティシズムというと、とてもアンダーグラウンドなイメージがありますが、実は誰もが胸の奥に秘めているもの。ならば、その感覚を美しく、スタイリッシュなものとして表現するのはおかしなことではないと。また、ボンデージ姿の黒の艶感にこだわりたく、作品を撮影するにあたり、僕の中で、中々しっくりくる素材が見つからなかったのですが、運命のように理想的なラバー素材と出会い、また僕が思い描く黒の質感を表現してくれるカメラを手に入れた矢先だったので、その時にようやく作品撮影が叶いました。また、その写真を撮るまでの写真技術や知識、ライト周辺機材の用意・・・プリント額装にし発表するまでに10年近くもの長い年月が掛かってしまいました(笑)。
対してランドスケープ写真の「Canyon’s」は、偶然の産物。一昨年の秋、コロナからの海外渡航が可能になったタイミングで友人から世界一周旅行に招待されたことがきっかけで、生まれて初めてアメリカを訪れた際に、運よくアンテロープ・キャニオンを訪問できたときのことです。当初はアンテロープ・キャニオンを訪れる予定はなかったのですが、その光景を見た瞬間に「こう撮りたい!ああ撮りたい!」と、どんどんビジョンやイメージが降っててきて、気づいたらシャッターが止まらなくなっていたんです(笑)。
アンテロープ・キャニオンは砂岩なので、触るとゴツゴツしていて固く、でも、何百万年もの間、雨水などに侵食されて地層がいくつも重なり、美しい流線型を描いているんです。それはまた「Your Rubber」での表現のひとつである、女性の持つ美しく優しいボディラインとも似てとれます。また、岩と岩の隙間から陽の光が差し込むと、神秘的な世界に浸ってしまい、まるで地球の美しさの内側に包まれて、地球と一緒に幻想的な景色を眺めているような不思議な感動でした。
そんな僕が今回選んだのはランドスケープ写真。運命のように導かれた広大なアリゾナの大地で感じた、「地球も生きている!?」という不思議な感覚。僕があの場で感じた雄大な自然とその生命力をテーマにフォトグラファーとして表現したのが「Canyon’s」です。
作品をご覧いただいた方々が、もっと自由に空間(お部屋)と作品とを楽しんで、ご自身も含めたその全てがアートであるという感覚を感じる楽しさと出会ってほしいと願っています。そんな新しいご自分との出会いを見つけに来ていただけたら嬉しいです。
作品に、「’(アポストロフィー)」をつけたのは、「あなたにとってのCanyon(LIFE、生命)とは?」という意味を込めたからなんですよ。
―今回の個展、「Canyon’s」には7点の作品が展示されるとのこと。どんな方々に観ていただきたいですか。また、“お気に入りの1点”を選ぶ上でのアドバイスをいただけますか。
これは僕の実感でもあるのですが、写真をはじめアートが身近にあることで、日常生活はもっと豊かに、楽しいものになると思います。アートによって感覚や感性がより研ぎ澄まされれば、街で見かけたちょっとした風景が目に留まったり、美しいものに気づくようになったりして、小さな感動に出会える機会が増えるかもしれません。それが、日常に彩りを与えてくれるのではないかと思います。毎日の暮しをより充実して楽しみたい、また何か新しい変化や素敵な日々にしたいと思っていらっしゃる方々にぜひいらしていただきたいです。
作品の選び方も人それぞれだと思いますが、これが家にあったら、どんな一日がスタートするだろう、どんなライフスタイルになるだろうと想像すると選びやすい気がします。とくに「Canyon‘s」は、“空間を一緒に彩る”というインテリア性をより意識した作品なので、自宅に飾っていただきやすいと思います。「家にこういう写真を飾っているんだ」という言葉がきっかけで、お友達や知り合いが、お料理やワインなどを持って遊びに来るような、そんな楽しい出来事が起こるような作品になれたら嬉しいです。
フォトグラファーを目指し始めたころは、世界中あちこちの景色をたくさん撮影しながら、いつかランドスケープ(景色)写真の展示ができたらと思っていたこともあり、この度の個展が風景写真で飾れることをとても嬉しく感じています。
世界一周旅行では、アンテロープ・キャニオン以外にも様々な土地を訪れましたし、風景だけでなく、その地で暮らす人々も撮影させてもらいました。それらも、いずれ発表したいと思っていますので、楽しみにしていただけると嬉しいです。
催事タイトル: ―Canyon’s― ATZSHI HIRATZKA平塚篤史展
会期:7月12日(水)~18日(火)
場所:松坂屋名古屋店本館6階
平塚篤史(ひらつか あつし)
1982年東京生まれ。イギリス・ロンドンで4年間演劇を学び、俳優として活動した後、31歳の時にフォトグラファーに転身。台北 国際会議センター中国・長春で撮影した写真・作品集が中国の地下鉄で展示され、Louis Feraud がアジア圏で展開した「 “FERAUD ” 2019 S/S キャンペーン」の撮影を担当するなど、国際的に活躍する。 「APA写真家協会 広告アワード2017」入選、「JCリーダーズコンテスト 2018『街・花』」「花」部門EIZO賞受賞、「Contemporary Art Photo & Video Salon in 台北 2019」入選。現在はファッションポートレートを重点に置き活動している。
撮影 鈴木克典
ヘア&メイク 清水智也
文 村上早苗
編集 藤倉大輔
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【オープニングトークショー】
2024年12月8日(日曜)15時より
J PRIME戸賀編集長によるトーク後におこなわれるショッピングアドバイス(1組15分間 記念写真撮影込み)は
daimarushinsaibashi@panerai.com
に下記の必要事項をお送りください。
*11月15日(金)締め切り
・氏名(漢字・フリガナ)
・同伴者名(お一人でご参加の場合は不要です)
・電話番号
・誕生日
・ご興味のあるコレクション(ラジオミール、ルミノール、サブマーシブル、ルミノール ドゥエの中からお選びください)
パネライ 大丸心斎橋 ブティック
場所:大丸心斎橋店 〒542-8501 大阪府大阪市中央区心斎橋筋1-7-1