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アートと食の融合
ポエムのような一皿を求めて。予約が取れない英国レストラン
![ポエムのような一皿を求めて。予約が取れない英国レストラン](/wp-content/uploads/2023/02/rk_0225_2023_00.jpg)
記事提供:料理王国
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オープンから1年半が経った今も、繁忙時の予約が難しいカリスマ・レストランの手腕とは? 「アートと食の融合」というコンセプトでロンドンから世界へ向けて羽ばたく新進ビジネスの勢いが、2023年も止まりそうにない。
今ロンドンで最も注目されているレストランの一つに、2021年夏に創業したSessions Arts Club / セッションズ・アーツ・クラブがある。オープン直後から半年はほぼ予約不可能。1年半が経過した今でさえ、時間帯によっては常に満席で、現在は30日先までの予約しか受け付けていないそうだ。
人気の理由はいくつか。まずは秘密めいたロケーション。看板もない、レストラン名も刻まれていない古い建物の5階。プライベートの会員制クラブのようなイメージ戦略だが、実際は一般に開かれている。とはいえ18世紀のジョージ王朝時代に裁判所として建造され、のちに35年に渡ってフリーメイソンの集会所に使われたという建物自体の歴史を振り返ると、あながち的外れなイメージでもなさそうだ。
この歴史ある旧裁判所は6年かけて丁寧に改修され、アート・ギャラリーなどを含むヒップな空間に生まれ変わった。このプロジェクトの中心的な人物であり、クリエイティブ・ディレクターとして空間キュレーションを手がけたのは、アーティストのJonny Gent / ジョニー・ジェントさんとそのチームだ。ひときわ天井の高いジョージ王朝時代の空間を活用し、暖かいリゾート地にいるようなムードを作り出すことに成功している。しかし「予約が取れない」理由は、もちろんそれだけではない。
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厨房を指揮しているのは、この10年でロンドンのトップ・シェフの仲間入りを果たしたFlolence Knight / フローレンス・ナイトさんである。
フローレンスさんはSoho地区にあったヴェネチア料理レストラン「Polpetto」で一躍その名を知られることになった。旬を生かす彼女のみずみずしい料理は実にシンプルで飽きがこず、プレゼンテーションはまるで夢見る詩篇のような趣があった。料理哲学についてはシェフ本人がレシピ・ブックにこう書いている。「私は料理をほとんど映画のように捉えています。ストーリーに必要なのは、一人の主役、それと大抵の場合は2人の脇役です。それ以上になるとプロットは混乱してしまう」。
視覚を重視したドラマチックとも言えるフローレンスさんの料理は芸術をコンセプトとするセッションズ・アーツ・クラブのオーナー陣の目に留まり、現在はエグゼクティブ・シェフとして事業拡大に貢献中だ。
今回の訪問で最も印象的だったのは、ウナギの料理。ポテト・ミルフィーユの間に丁寧に下処理した新鮮なウナギを挟み、カリカリにグリルしてイクラをトッピング。ソースにはクレームフレッシェを使っている。その斬新なアイディアと味の良さには、度肝を抜かれてしまった。セッションズ・アーツ・クラブは栄えある英国レストラン・アワードのランキング100において、現在第30位と大健闘中だ。
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昨年夏には、このレストランを成功させたチームが同様に「食とアート」をコア・バリューとして英国北部スコットランドへ進出。北部沿岸の広大な土地に佇むマンション・ハウスを利用したブティック・ホテル「Boath House / ボーザ・ハウス」を創り上げた。19世紀の屋敷や16世紀にまで遡るウォールガーデンは麗しく、そこで採れた作物を使ったフローレンスさんの料理が花を添える。
面白いのは定期的にアーティストを無料招待して滞在中に作品を作ってもらうレジデンシー・プロジェクトで、いずれホテルはオリジナルのアートで埋め尽くされることになるのだろう。スタッフの雇用に際しても何らかの芸術的なことに興味のある人材を優先するなど、コンセプトをあらゆる面で浸透させていくようだ。
チームはさらに英国内はもとより、南仏、スペイン、ニューヨークなど世界へ向けて同様のコンセプトで拠点を増やしていく冒険に乗り出したところ。いずれの場所も、「アート」そして「地域社会との協働」がキーとなっていく。
Sessions Arts Club
https://sessionsartsclub.com
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text・photo:江國まゆ Mayu Ekuni
記事提供:料理王国
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