FASHION
イタリアのリッチなオジサンの今 Part:3
人生で得ることができた自分らしいはトレンドを超えて洒落に写る
![人生で得ることができた自分らしいはトレンドを超えて洒落に写る](/wp-content/uploads/2023/01/alb_0103_2023_00.jpg)
イタリアのお洒落オヤジには大抵、着こなしに関してのこだわりや、ファッションについての蘊蓄があるもの。着こなしについて語らせれば必ず誰しも一家言があり、それが酒のつまみにもなってしまうほどです。
「イタリアのリッチなオジサンの今」をチェックするこのシリーズでは、そんな蘊蓄とこだわりを伺うべく、コローニ伝統工芸財団のゼネラルディレクター、およびミケランジェロ財団のエグゼクティブディレクターを務めるアルベルト・カヴァッリ氏にインタビュー。職人技の素晴らしさを広め、その存続を助けることを目的とした文化財団のトップ故に、仕立てやハンドメイドの話に終始するかと思いきや、実はファッションジャーナリスト、イタリアのハイブランドのPRとして活躍した経験もあるカヴァッリ氏、“ためになるこだわりと蘊蓄”の使い方を語ってくれました。
「ずっと同じスタイル。でも自分らしいストーリーを演出するものを必ず合わせます」
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「私のスタイルはずっと同じですよ。長く着られるものが好きなので、あえてトレンドの物は着ないようにしています。私の場合は職人技が生きたものを選ぶようにしていますが、一番大事なのは自分らしさを出せるアイテムであること。『エレガント』という言葉は、選ぶという意味のラテン語『エリーゴ』から来ていて、エレガントであるために大事なことは、アイテムを正しく選ぶことなのです。サイズは自分にフィットしているかどうか、ナチュラルに着こなせているかどうかも含めて、ね」
今日のコーディネートは、彼の服の大半を占めるというネイビー系。全身柄モノではありますが、トーンスタイルなので収まりよくまとまっています。首を出すのが嫌いで夏でも巻物をするというカヴァッリ氏は、今日もタートルネックのニットにストールを合わせました。いつも同じようなスタイルだからこそ、巻物に遊びを入れたり、裏地が大胆なコートを選ぶなど、どこかに特別感を入れるようにしているとか。時計はポエティックなデザインが印象的なヴァン クリーフ&アーペルの「palais de la chance」を合わせています。
「日本社会では他人とあまりにも違う恰好はしにくいのかもしれません。でも、だからこそどこかで自分らしさを強調することをお薦めします。それは小物でも、色でも素材でも何でもいい。いつもそれを使うことで自分らしいストーリーを演出するのです」
「自分らしい何かを着こなしの中に入れると、話のきっかけを作ってくれることも」
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もう一つのコーディネートも、エトロのコートとブルネロ クチネリのパーカ、そしてトラサルディのコーデュロイパンツという、カヴァッリ氏の鉄板色であるネイビーを中心に構成し、足元は長年愛用しているプラダで。そこにルイ・ヴィトンの大柄の巻物を合わせました。そしてラペルの部分にはブートニエール的にヴィンテージのブローチを飾っています。
「このコーディネートもそれ自体はシンプルで、もう一つのコーディネートとさほど変わり映えはしないかもしれません。ただ、ここでもボリューミーな巻物で存在感を与えたり、白の大きなブローチを付けて胸元に視線が行くように計算しています。人と会うとき、着こなしの中のちょっとした物がきっかけで会話が始まることはよくあるものです。私はシャイなので、ブローチや巻物の話を振られることが自分のことを話すための助けになってくれているのです」
確かに人が集まる場では、ファッションが話のきっかけになることも多いもの。そしてそこでちょっと蘊蓄を発揮して、そこから話が広がるようなアイテムなら、意外と人脈作りにも繋がるのかもしれません。
「約20年来、ブローチは私のトレードマークとなっています」
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着こなしの中で最もこだわっているというブローチのコレクションは約120個。これらは今やカヴァッリ氏のトレードマークともなっています。これはドルチェ&ガッバーナのPRをしていた頃、同ブランドが2003/2004年のコレクションにブローチを合わせているのを見て刺激を受け、それ以来、自分のコーディネートにも取り入れるようになったのだか。特にヴィンテージものや、職人技が生きた一点物ばかりを集めているそう。自分のスタイルに変化をつけるためにもブローチには煌びやかさを入れたいので、カラーストーンが入ったものを積極的に集めているのだそうです。
「プライベートでも美しいものと過ごしたいので、人が集まる大切な瞬間は美しい陶器で」
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もうひとつのカヴァッリ氏のコレクションは陶器。プライベートな時間こそ、美しいものに囲まれていたいというカヴァッリ氏の思いは、生活の細部にまで行き渡ります。特にイタリア人が大事にする食卓は、思い入れのあるテーブルセッティングで。カヴァッリ氏が陶器のコレクションで特に大事にしているのがジノリ1735、そしてウエッジウッドやヴィレロイ&ボッホ。ヴィンテージ物も多いとか。
Profile
Alberto Cavalli(アルベルト・カヴァッリ)
イタリア・モンツァ出身。コローニ伝統工芸財団のゼネラルディレクター、およびミケランジェロ財団のエグゼクティブディレクター。カトリカ大学を卒業後、ドルチェ&ガッバーナ社に入社、PRマネージャーとして活動すると同時にジャーナリストとしても活躍。同社退社後はロシアの雑誌の特派員を務めつつ、コローニ伝統工芸財団に勤務し、後に現職に。ミラノ工科大学デザインスクールにて教鞭もとっている。
撮影 Stefano Triulzi (ステファノ・トゥリウルツィ)
編集・文 田中美貴
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