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“クルマ通”戸賀編集長の愛車遍歴 Vol.8

戸賀編集長が語る愛車ヒストリー 第7弾 「メルセデスのラグジュアリーカー3台を乗り継いで、わかったことがあります」

2022.11.27

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戸賀編集長が語る愛車ヒストリー 第7弾 「メルセデスのラグジュアリーカー3台を乗り継いで、わかったことがあります」

業界でも屈指の “クルマ通”である戸賀編集長。数々の名車を乗り継いで来た彼が「何を基準にクルマを選んだのか?」、または「そのクルマのどこが魅力なのか?」を語ります。J PRIMEをご覧の貴兄の“今後のクルマ選び”の参考になれば…と思います。今回はゲレンデヴァーゲンの後、さらにメルセデス・ベンツを立て続けに3台乗り継いだ時のお話。聞き手は戸賀編集長の雑誌編集者時代の先輩、フリーランスエディターの高(「“クルマ通”戸賀編集長の愛車遍歴」参照)です。

「“カッコ良いクルマ選び”と“カッコ悪いクルマ選び”の違いを、この3台で学びました」

高 1997年にメルセデス・ベンツのゲレンデヴァーゲンに乗って、メルセデスというブランドの信念とそれを見事に反映させたクルマに惚れ込んでしまったんだよね。

戸賀 そうです。ゲレンデヴァーゲンに心底惚れ込んでしまい、人生で7台目にして初めて車検を取ることになったんです。初めてのSUVで。

高 そのゲレンデヴァーゲンを手放した後、さらにメルセデス・ベンツのラグジュアリーモデルを乗り継ぐんだよね。それも約2年間で3台という、超絶に早い周期で! 何かあったのかな!?

戸賀 僕が34歳の時ですね。若いファッション情報誌から移動し、大人のファッション誌『メンズイーエックス』の編集長に就任したこともあって、ラグジュアリーカーの世界を知ってみたかったんです。そこで当時も今もラグジュアリーカーの象徴とも言える、メルセデス・ベンツSL500を買ったんです。あの頃(2001年)は日本ではとっくにバブルが崩壊していましたが、深刻だったのは金融関係ばっかりで、雑誌業界や日本のクルママーケットはまだまだ影響が少なかった記憶があります。だから、フルモデルチェンジしたばかりのSLは超人気車で、正規物の新車が買えないものだから、並行輸入車がプレミアムプライスで売られてましたね。でも、僕はヤナセとの付き合いが長かったこともあって、早いタイミングで納車することができました。ボディカラーはシルバー、内装は黒ですね。

メルセデス・ベンツSLで初のハードトップ格納式。「屋根を閉じると、オープンとは別世界の快適性&静粛性が実現。初めてハードトップのオープンモデルの魅力を認識したクルマです」と、戸賀編集長はSLの“屋根”を好評価。

高 2001年というとR230か。フロントの左右に楕円形のライトが2つずつ繋がってるヤツだね。凄い人気だったよな。即納車だったってことは、モテモテだったんじゃないの?

戸賀 モテモテだったかどうかはコメントを控えますが(笑)、超目立っていましたね。でもねぇ、ダイムラーと合併したことの弊害かもしれませんが、僕にはクルマとしてのクオリティが下がってしまったな…と感じたんです。直前までW124とかG462を乗っていたもんですから、ドアが閉まる音が「安っぽくなったな」と痛感。また、V8エンジンがツインカムからシングルカムになったんですけど、メルセデスとしては燃焼効率を上げるためと説明していたとはいえ、どうしても安っぽく感じてしまいました。「これが不景気による、コストダウンの結果か」…と。

高 うむ。日本ではバブル崩壊はあったけど、ヨーロッパとアメリカはまだまだバブルは続いていて、特にヨーロッパでは「明日売れるクルマを今日作らなきゃ!」ってんで、ホイホイバンバン作っていた時代だったね。どのメーカーも「クオリティなんか気にしてられるか!」って感じ。だから、昔のメルセデス・ベンツのような“過剰品質”のクルマじゃなくなってしまったんだな。で、その実態にショックを受けて、たった半年で手放してしまったのは、ある意味潔いと思うよ。

戸賀 いや、まぁ…実は、手放した理由はそれだけじゃないんですけどね。というのも、会社の上層部の人も同じSL500に乗っていることがわかったんです。それも同じシルバー! さすがにマズいだろ!?ということで、すぐに手放したって次第(苦笑)。いくら編集長と言ったって所詮はサラリーマンですから、しかもまだ若くて序列的には下の方ですからね。

高 まぁ、サラリーマンが守るべき“暗黙のルール”を学べたというのが、せめてもの救いかな(笑)。でも、次はメルセデス・ベンツCL500を買うんでしょ!? やっぱり何も学べてねぇじゃん! だって、CL500の当時の新車価格は1100万円〜で、SL500の1380万円と大差ないじゃん(笑)。

戸賀 いやいや、「S」のクーペではなくCLなら、大人の男性ファッション誌の編集長にぴったりでしょ! それに当時はゴルフを再開したこともあって、「キャディバッグが2個載せられる」クーペはちょうど良かったんです。ボディカラーは当時のトレンドを取り入れて黒を選んだんですけど、宇宙船みたいなリアスタイルにマッチしていて、納車直後は満足して乗っていたんですよ。

高 ところが、そんなウキウキの戸賀青年に悲劇が起こるんだよね? でなければたった2カ月で手放すわけないもんな。

ショルダーライン下はセダンボディ、上はクーペという独特のフォルムがよくわかるカット。「運転席に座ると、シートベルトのアームが後ろからニュ〜ッと伸びてくるんです。だからシートベルトがハメやすいんですよね。こうした機構は素晴らしいです」と戸賀編集長。※画像はシルバーですが、戸賀編集長は黒をチョイス。

戸賀 そのとおり! ウキウキで乗ってたら、銀座の女性から「若いうちからこんなクルマに乗って、まるでプロ野球の人気球団の若手選手みたい」って、冷たく言われてしまったんです。彼女たちはリッチなオジサンをたくさん見ているのですから、その観察力は尊敬に値します。そんな女性の言葉はとてもショックでしたね。だって、当時はちょうどJリーグが発動し、カッコいいサッカー選手が話題をさらっていた時代だったでしょ!? それと反比例してプロ野球選手がどんどん野暮ったくなっていた時代に、「プロ野球選手みたい」って言われてしまったんですから(苦笑)。

高 う〜む。高校か大学を出て間もない若手選手が高額な年棒を貰うと、とかく“ベンツ”を買っちゃうよね。先輩の手前Sクラスじゃなくて、下のグレードの“ベンツ”を! その女性は戸賀っちのことをカッコ悪いと指摘したんじゃなく、戸賀っちの年功序列や階級制度に縛られたクルマ選びがカッコ悪いと言いたかったんじゃないかな。

戸賀 まさにソレ! とかく人間って「上に行きついたら、もう下には降りれない」と思いがちですよね。でも、そんなことは無いと思うんです。メルセデス・ベンツのフラッグシップに乗っていたからと言って、次のクルマがSより小さかったりパワーが無かったり安かったりしたって構わないと思うんです。きちんと自分の趣味嗜好に合ったクルマならば、全然カッコ悪く無い! ところがあの時の僕は、SL500の後にCLは「なんか格下げしたかな?」と思っちゃって、せめてエンジンは5リットルV8を選んじゃったりして…。なにもかも中途半端というか、妥協の産物というか…。例えばファッションに気を遣ってないオヤジなのに時計だけ金ロレしてたり、あるいは小柄な女性が無駄にデカいバーキンを持ってたり…というちぐはぐ感が滑稽だったんだな。

高 うむ。最後の例えだけわかるようでよくわからないけど(苦笑)、まぁ、戸賀っちが言いたいことは伝わったよ。で、あまりのショックでCL500を、たった2カ月で売って、今度はCLS500にするんだよね。CLSがデビューした時は、「2ドアクーペかよ」って言いたくなるような流麗なフォルムで、大センセーションを巻き起こしたっけ。

戸賀 そうそう。美しい4ドア・ハードトップでした。前回のCL500で学んだので、エンジンは3.5リットルのV6でも良かったんですが、新古車がたまたまCLS500だったんです。ボディカラーは濃いグリーンメタリックで、内装はベージュという、まるで英国車みたいなメルセデスでした(笑)。僕が「メルセデスっていいな」とベタ惚れしたゲレンデヴァーゲンとW124は、“過剰品質”や“質実剛健”の象徴でした。僕はそこに惚れ込んで乗っていたんですが、実は「もう少し色気があってもいいんじゃないか」とも思っていたんです。で、少しだけ…いや、結構たっぷり色気を加えたメルセデスが、このCLS500だったというわけ。でも、僕の周りのクルマ関係者は「リアシートに座る時、ピラーに頭をぶつける」とか「まるでカリーナEDだろ」とか、けちょんけちょんに貶していました。

高 そうそう、嫌味なモータージャーナリストはそういう辛辣なことを言ってたな。でもさ、戸賀っちの評価どおり、CLSはのちのち大当たりしたもんな。モータージャーナリストの中にはクルマの性能しか見てなくて、そのクルマを社会的&多角的に評価できない人が少なくないね。さて、30歳半ばにしてメルセデス・ベンツのラグジュアリーモデルを乗り継いだおかげで、社会の縮図とともにカッコ悪いクルマ選び方を学んだ戸賀っち。その後はさらに個性的なメルセデス・ベンツを2台乗り、フレンチコンパクトを乗ったり、またポルシェ911に戻ったり、はたまた英国SUVに乗ったりと、また迷走を繰り返すんだっけ?

戸賀 迷走じゃありませんよ。そのへんのことは次回に話しましょうか。

高 新旧のメルセデス・ベンツを乗ったことがある戸賀っちが、「色気があるメルセデス」として好評価を下すCLS500は、意外と狙い目なんじゃないのかな。あのクーペのような流麗で美しいフォルムは、20年経った今でも十分に通用するし。

流麗で美しいフォルムは、デビューから20年経った今でも斬新。セカンドマーケットでは、グッドコンディションのCLS500が100〜150万円で探せます。なんであれば普段の足として乗ってもいいかもしれませんね。※画像はシルバーですが、戸賀編集長はグリーンメタをチョイス。

戸賀 いやいや、意外どころか強くお薦めしたい1台ですよ。リアシートはセパレートした贅沢は2座仕様ですしね。当時の新車価格が1000万オーバーだったのに、セカンドマーケットではグッドコンディションのクルマが100〜150万円で探せます。ファーストカーが超ド級スーパースポーツカーとかラグジュアリーSUVの人は、セカンドカーとして乗るとかなりお得感はあると思いますよ。

高 なんだ、既にチェック済みなのかよ(笑)。

文 高 成浩(POW-DER)

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