村上裕二展
(画像=© MURAKAMI  YUJI  TM & © TOHO CO., LTD.)

日本美術院展内閣総理大臣賞など、多くの受賞経歴を誇る、日本画家の村上裕二氏が、日本を代表する怪獣王『ゴジラ』を日本画に描きました。3月16日〜松坂屋・上野店で一部が展示される『未来へ 村上裕二展 特別出品「ゴジラの世界」』でその作品が並びます。村上氏のゴジラに対する思いや制作プロセスなどを伺いました。
ウルトラマンや仮面ライダーなど、日本を代表する特撮作品を題材にした作品を発表してきた村上氏の今回のテーマはゴジラ。自らの考える日本の象徴を背景に、躍動感あふれる怪獣たちの姿が表現されています。

――まず最初に、なぜ日本画でゴジラを描こうと思われたのですか?

日本画って、おそらく日本の方ですらほとんどが知らないんですよね。知る人はなかなかの美術通だと思います。でも、怪獣王『ゴジラ』なら大抵の日本人は知っている。なので、ゴジラを描くことによって子どもや初めて日本画に触れる方が「これは何かな?」と覗きこんでくれて、そこから「変わった材質だね」「どう描いているんだろうね」と、日本画を知るキッカケとなればうれしいなと。

――村上先生とゴジラの出会いを教えてください。

子どもの頃、地元のお祭りの端っこで、おっちゃんがカーテンみたいな白い布を吊り下げて、映写機でゴジラを上映していたんです。そこで、“ゴジラの暴れるシーンだけ”を観たのが最初です。いまなら問題になっちゃうと思うんですけど、当時はそういうおっちゃんがけっこういたんですよね。のちにちゃんと映画を観て『ゴジラ』って暴れ続けるだけの映画じゃないんだ、ちゃんと人間ドラマがあるんだということを知っていきました。

――幼い頃にゴジラの暴れるシーンを観てどのように感じられましたか?

興奮していたのでしょうね。お祭りから帰って、画用紙にその興奮を吐き出すように鉛筆でぐしぐしと描いていましたから。怖いという感情もあったと思いますが、幼心に「かっこいい」って焼き付いたんですよね。
ゴジラって1950年代の映画で、初めて触れて以降ビデオや映画館で何度も何十作品も観てきました。僕より詳しい方は多くいらっしゃいますが、僕もゴジラが好きです。“好きこそものの上手なれ”ということで、描いている時間はとても充実していましたよ。

――ゴジラにはカッコよさだけでなく、破壊や恐怖の象徴といった面もありますよね。

おっしゃるとおり、ゴジラ作品には日本人が思い出したくない恐怖や破壊が潜んでいますよね。でも、絵描きとして恐怖や破壊だけを描くとドロドロになっちゃうんです。それにそんなもの誰も見たがらない。でも、ゴジラならそういう裏の部分も含めて日本画で表現できると思ったんです。 絵には裏テーマって大切だと思っています。絵を見て、少しでもメッセージを感じてもらえたら嬉しい。また、そういう意図を汲んで下さってくれる方がいるから、さらにゴジラを描く意味があると思うんですよね。

――そう思って改めて観ると、少し違う目線で見ることができますよね。では、創作の際に苦労した点を教えてください。

好きなものを描いているので、ペイント自体は問題なかったのですが、描いている間に体調を崩しまして…目の手術もおこないました。そんな身体でもゴジラだったらどんどん描けたんです。自分でも不思議な感じでしたね。

――全部で290点描かれたとお伺いしました。

はい。でも、もっともっと描けそうな感じですね。やっと描き始められたっていうか、まだまだこんなもんじゃない。オープニングぐらいなもので、ゴジラを描くんだったらもっとあるぞ!と。

村上裕二展
(画像=© MURAKAMI  YUJI  TM & © TOHO CO., LTD.)

――さらなる作品、楽しみにしています。それでは、先生が考える日本画の魅力とは?

日本画の世界に約40年携わっていて「日本画をひと言で」と言われることも多いのですが “日本に向き合う創作物”ということですかね。

――“日本に向き合う創作物”ですか?

日本画の源流って大和絵なんですね。で、大和絵の源流は中国絵画。そこからさらにさかのぼると中国のクラシック絵画にたどり着きます。それを日本人が500年ほど前に受け取ってジャズ的に解釈したものなんです。 日本人って笑いというか、遊びの部分を許容できる民族だと思っているんです。それに比べると中国絵画って冗談抜きで真っ向勝負。だからすごくビシッとしていて格好いい。だけど、日本画ってその時代の日本人らしい遊びが表れていて、なんかちょっと抜けているというか、肩肘はっていない感じに見えるんです。
だから、日本画を見れば、日本人の良さも、パッとしないところも見えてくる。ある種の鏡のような絵なんですよね。

――おもしろいですね。日本画はかしこまった感じで見なければいけないというイメージがあったので。

こういう感覚で接してもらえると、日本画の良さがわかってもらえるんじゃないかなと思っています。輸入した現代美術や洋画は見た瞬間のインパクトはすごいけれど、長期的に付き合えるかっていうと、案外壁から下ろすのは早いのかもしれない。でも日本画は一度壁にかけると、その人の人生にずっと寄り添ってくれると思いますよ。

――3月16日から上野松坂屋『未来へ 村上裕二展 ゴジラの世界』が開催されますね。

上野松坂屋は僕が26年間過ごした大学に近いですし、ちょくちょく買い物に出かけていました。愛着があり、新しく生まれ変わる会場で自分の絵を並べてくださるなんて、本当に嬉しいです。
新たに日本画に触れる方や若い方はもちろん、昭和を懐かしく思う人たちにもぜひ観てもらいたいです。

村上裕二展
(画像=© MURAKAMI  YUJI  TM & © TOHO CO., LTD.)

未来へ 村上裕二展 特別出品「ゴジラの世界」
会場:松坂屋・上野店 本館7階 美術画廊(東京都台東区上野 3-29-5)
日時:2021年3月16日~22日※午前10時~午後7時 最終日は午後5時閉場

村上裕二

1964年
東京都に生まれる
1987年
東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業
1989年
同大学院研究科(日本画)修士課程修了 院展初入選
1992年
同大学院研究科(日本画)博士後期課程満期修了
1997年
再興第82回院展日本美術院賞(大観賞)受賞(同'99)
2000年
日本美術院同人推挙
2008年
得度授與、画家活動停止。延暦寺比叡山行院にて初伝に補し、四度加行所作授與
2010年
画家活動開始
2012年
再興第97回院展文部科学大臣賞受賞。画集『ウルトラマンの世界』(求龍堂)
2016年
再興第101回院展内閣総理大臣賞受賞
2017年
画集『仮面ライダーの世界』(求龍堂)
2022年
画集『ゴジラの世界』(求龍堂)3月発行予定
現 在
日本美術院同人 師・平山郁夫

文 渡辺恵理


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