GOURMET
Imperial Hotel Tokyo 帝国ホテル東京
トップシェフから学ぶ、フォワグラ使いのアイデア。「帝国ホテル」総料理長杉本雄さん

記事提供:料理王国
フォワグラはフランス料理の王様
楽しみつつ堪能していただける堂々とした料理を目指したい。
「いろいろな意見はありますが、つくる側もフォワグラ料理をつくりたい、食べる側もフォワグラを食べたい。それが本音だと思います」と杉本雄さんは言う。13年間をフランスで過ごし、厨房だけでなく、ホールの接客サービスまでさまざまな経験を積んできたなかで実感したことだ。フォワグラはそれくらい食材として魅力がある、と断言する。
今回の2皿も、堂々としたフォワグラ料理でありながら、食べる側が驚いたり、ニコっと笑ってしまったりする〝仕掛け〞がいっぱいだ。
季節と素材。意外な組み合わせでフォワグラの魅力を引き出す
ひと皿目は、アワビとフォワグラの出会い。意外だったが、「肝」という共通項に着目して合わせたという。「一見対極の食材のように見えますが、肝のコクのおいしさ、海と山のアミノ酸のおいしいところをギュッと凝縮したような料理にしたい。フォワグラの脂でアワビの旨味を堪能してもらいたいと思いました」
それで塩釜焼きにした。塩釜を割るところからデクパージュまで、すべてをゲストの前で行う。「パフォーマンスも含めてひとつの料理。塩釜づくりも大切ですよね」
目で楽しんでもらい、続いて味を堪能してもらおうという趣向だ。
黒アワビとフォワグラの塩釜焼き“SHIOGAMAYAKI”

アワビとフォワグラでは、火入れの時間に差があるため、フォワグラはあらかじめ締めておくために、冷蔵庫で冷やしておく。アワビにはフランス南部のドライ・ベルモット「ノイリー酒」をかけておく。同じ大きさに切ったフォワグラとアワビを、ワカメを包む。

海藻を練り込んだ塩で、塩釜をつくる。そのなかに、ワカメを包んだフォワグラとアワビを入れて、塩で蓋をする。

塩釜と同じ材料の蓋をつくって完全に閉じ、全体を整える。それに、160℃で20分間、火を入れる。食材にダイレクトに火を入れず、塩の浸透圧を使いながら間接的に火を入れていくことで、アワビとフォワグラに適度に火が入る。

火入れが終わったら塩釜の蓋を開け、まず、フォワグラに火が通っているかを確認。塩釜からアワビとフォワグラを取り出して食べやすい大きさに切る。塩釜に残ったフォアグラとアワビの知るをアワビにかける。

海藻のゼリーとアワビの肝のペーストを敷き、食べやすい大きさに切ったアワビとフォワグラを盛り付け、ハーブのピューレなどに飾り付けたら完成。

アワビとともにワカメで包まれ、塩釜で火入れされたフォワグラは、ふっくらつややか。ゲストには、このようにして塩釜を開くところから見せていく。

アワビの肝のペーストや海藻ゼリーの磯の香りが口中に広がり、フォワグラの甘味やコクがアワビと優しくコラボする。ふたつの旨味を感じながら、フォワグラが軽やかに食せる。
トリュフ・キノコ・フォワグラ”Fake Truffle”
ふた皿目は、秋を意識して考えたガストロノミーの究極。トリュフをフォワグラとともに。「フォワグラがフランス料理の王様なら、トリュフは女王。そのふたつで、秋を満喫してほしい」と杉本さん。

しかし一見、この皿のどこにフォワグラがあるのか。すると、杉本さんはおもむろに真ん中の真っ黒なトリュフにナイフを入れた。なんと、なかにはフォワグラのムースが入っている。じつはこれ、〝フェイク・トリュフ〞だったのだ。


食用に使えるシリコンで、トリュフの型をとり、トランペットのムースのなかにフォワグラのムースを閉じ込めて型にはめ、まるで本物のトリュフのような外見をつくる。

皿のテーマは秋。落葉をイメージさせるように、フォワグラのテリーヌを薄くそぎ切りにする。ランダムな形が、秋の森の足元に散らばる落葉や枯れた植物を連想させる。

こちらも落葉をイメージした赤ワインのチュイル(焼き菓子)。プレートに赤ワインの入ったチュイル生地を薄く流し、オーブンで焼く。あえて形を整えないでちぎるように切る。
「『ル・ムーリス』でヤニック・アレノさんの下にいたとき、アレノさんがフォワグラの砂糖釜焼きをつくった」じっくり火を入れていくと、フォワグラのコンフィができ上がった。「こんな方法があるのかと驚き、目を見張りました」
シンプルにソテーしたり、ローストするだけでも十分においしいのに、こんな領域にまでチャレンジするのかと、一流シェフの発想力に舌を巻いたのだ。そんな体験があったから、今回の料理を発想したのだという。
今回は、フォワグラの脂はあえて取り除いた。しかし、それを使ってもっと料理の味わいを深め発展させることもできるかもしれない、と杉本さんは言う。「やったこと」で満足せず、常に次のステップを考える。ひとつのチャレンジが、新しい発想を次々に生んでいく。若き料理長はどん欲だった。

1980年、千葉県生まれ。1999年に帝国ホテルに入社し、2004年に退社して渡仏。ブルターニュのビストロを皮切りにさまざまな経験を積み、06年に「ル・ムーリス」へ。同ホテルのメインダイニング(三ツ星)では責任者の役割を担った。帰国し17年4月に帝国ホテルに再入社。19年に帝国ホテルの東京料理長に就任。

Imperial Hotel Tokyo 帝国ホテル 東京
東京都千代田区内幸町1-1-1
03-3504-1111
文、取材 山内章子
撮影 依田佳子
記事提供:料理王国
本記事は雑誌料理王国301号(2019年9月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は301号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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