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ウォッチ・ディレクター篠田哲生が解説する
名作時計 〜オヤジの憧憬〜ジャガー・ルクルト「レベルソ」

歴史と伝統に彩られている高級時計の世界ですが、オリジナルの誕生から長きにわたって、そのスタイルを守り続けているモデルはかなり貴重です。ジャガー・ルクルトの大傑作「レベルソ」は、今年で誕生90周年を迎えましたが、1931年の初代モデルからスタイルは不変。まさしく時計界を代表するマスターピースです。しかし、クラシックな雰囲気とは裏腹に、かなりアバンギャルドな個性も持っている。そのギャップに惹かれてしまうのです。
時計の常識もひっくりかえしたアバンギャルドな角形時計




「レベルソ」は誕生秘話からして、すでに特別感があります。物語の始まりはイギリス統治下のインド。そこでポロを楽しむイギリス軍将校からの「ポロ競技中でも壊れない時計が欲しい」というオーダーでした。この難問にチャレンジしたのが、1833年に創業したスイス屈指の技巧派「ジャガー・ルクルト(当時はルクルト)」。当時の時計は特に風防ガラスが弱かった。そこでルクルトは、ケースがくるりとひっくり返って風防を守る反転ケースを考案します。
さらにデザイン面でも、歴史が味方しました。ケースを反転させるということは、丸型よりも角型の方が簡単。ちょうど当時はアールデコ様式が流行中で、優雅で直線的なデザインがトレンドだったのです。長方形ケースに優雅にカーブするラグを加え、さらにケースの上下にはゴドロンと呼ばれる横縞の彫り模様が入るのが決まり事。このスタイルは初代から現代まで、一貫したデザインコードとして継承されています。そしてモデル名は、ラテン語で反転を意味する「REVERSO(レベルソ)」と命名。こうして世紀の反転式ウォッチは、1931年にデビューするのでした。
現代のレベルソは、ジャガー・ルクルトらしいハイレベルなメカニズムを楽しめる時計でもあります。反転式ケースという独自性と高い技術力を融合し、表面と裏面とで異なる表示や機構を組み込む。それはレベルソだけが可能な唯一無二の個性であり、アバンギャルドな時計であることを証明しています。
むしろミーハーなオヤジにこそ楽しんで欲しい時計である


時計界を代表するマスターピースである「レベルソ」は、知的でクラシカルな時計であり、ミーハーなオヤジには退屈に思えるかもしれません。しかし考えてもみてください。ケースが反転するなんて、アバンギャルドじゃないですか。
事実、この時計は発表当時からファッショナブルな富裕層から愛されました。そもそもポロという競技自体が、優秀なサラブレットを何頭も所有しなければいけない上流階級のスポーツであったということ、そしてアールデコ様式のデザインというトレンド感、さらにはカラフルなラッカーダイヤルというオプションも用意されており、反転させると現れるケースバック側に彫金をいれたり、肖像画を描かせたりと自分流のカスタマイズも可能。例えば第2次大戦後に日本を占領したGHQの最高司令官、ダグラス・マッカーサー元帥は、自分の名前をデザイン化して「レベルソ」のケースバックに入れていましたし、自分の妻の絵を描いたマハラジャもいました。
つまり、時計に自分なりの個性を投影し、他人とは違ったオリジナリティを楽しみたいオヤジが、こぞって「レベルソ」を選んだのです。歴史ある高級時計でありながら、自分流に遊べる「レベルソ」は、時計界随一のアバンギャルドな時計でしょう。“人と同じ時計は嫌”と考える欲張りなオヤジにこそ、選んで欲しい時計です。
人生のマイルストーンは今も魅力的に進化中

かくいう私も、「レベルソ」の愛用者。購入したのは2004年で、結婚記念として「レベルソ・グランドデイト」を手に入れました。当時はスイス出張にも、この時計をつけて行っていましたが、どのブランドを取材に行っても、時計師などから「いい時計だね」と褒められたのはいい思い出です。
スクエアウォッチは知的でエガントなイメージが強く、スーツなどのドレッシーな装いにしか使えないんじゃないか、とお考えの人がほとんどかと。でも見てください。出自をポロ競技とするこの質実剛健さと、適度な存在感。「レベルソ」なら、カジュアルなスタイリングにもすんなりマッチしてくれるだけでなく、印象に程よい“知性と品格”も加味してくれるのです。また、ストラップを交換すると雰囲気が、ガラリと変わるのも面白いところ。現在はアルゼンチンのポロ用品ブランド「カーサ・ファリアーノ」が「レベルソ」用に製造した、キャンバス地×レザーの純正ストラップで愛用中。“自己流で遊ぶという、「レベルソ」のあるべき姿を実践中です。
篠田哲生さんの独自視点で選ぶ。今、買うべき!!レベルソBEST3
Best:1 裏面を主役としたくなる優美な「レベルソ」

両面にダイヤルがある「レベルソ」であっても、“顔”となるのは表面です。しかし「レベルソ・トリビュート・ノナンティエム」は、裏面がいい。ディスク上の分表示とジャンピングアワー、そしてブルーラッカー仕上げの星空の中心には、ロマンティックなデイナイト表示を組み合わせている。「レベルソ」の美的表現を広げたモデルといえるでしょう。ケース:縦49.4×横29.9㎜、ケース:18Kピンクゴールド、ムーブメント:キャリバー 826AA(手巻き)、パワーリザーブ:約42時間パワーリザーブ、防水性:3気圧、限定:190本。¥4,752,000(税込)
Best:2 トレンドカラーであり、「レベルソ」の原点でもある

2021年の新作である「レベルソ・トリビュート・スモールセコンド」は、深みのあるグリーンが特徴。トレンドカラーですが、「レベルソ」の場合は“伝統色”。アールデコ期は人工染料が開発された時代とも重なっており、鮮やかな色彩もデザインの特徴でした。つまりこれは、初期の「レベルソ」のカラーダイヤルへのオマージュをこめたもの。トレンド色にも、歴史的な意味があるのです。ケース:縦45.6×横27.4㎜、ケース:SS、ムーブメント:キャリバー 822/2(手巻き)、パワーリザーブ:約42時間パワーリザーブ、防水性:3気圧。¥1,020,800(税込)
Best:3 「レベルソ」だから可能になった世界初の4面ウォッチ


2面表示は当たり前のレベルソですが、「レベルソ・ハイブリス・メカニカ・キャリバー185」はなんと4面構成という奇想天外、空前絶後な腕時計。反転ケースを支える台座部分の表と裏も使っており、本体には永久カレンダーやミニッツリピーター、トゥールビヨンなどを、台座には北半球と南半球のムーンフェイズなどを組み込みます。ケース:縦51.2×横31㎜、ケース:18Kホワイトゴールド、ムーブメント:キャリバー 185(手巻き)、パワーリザーブ:約50時間パワーリザーブ、防水性:3気圧、限定:10本。1,350,000ユーロ

ウォッチディレクター 篠田哲生
1975年生まれ。時計専門誌、ファッション誌、ビジネス誌、新聞、ウェブなどなど、幅広い媒体で硬軟織り交ぜた時計記事を執筆。スイスのジュネーブやバーゼルで開催される新作時計展示会、時計工房などの取材はお手のもの。また、時計学校「専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ」のウォッチコースに通い、時計の理論や構造、分解組み立ての技術なども習得済み。近著に『教養としての腕時計えらび』(光文社新書)がある。
文篠田哲生
編集森谷恵一
ヘッダーデザイン_五月女幸希

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