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“クルマ通”戸賀編集長の愛車遍歴 Vol.6

戸賀編集長が語る愛車ヒストリー 第6弾! 「ゲレンデヴァーゲンに乗ったら、スポーツカーに戻れなくなっちゃいました」

2022.09.24

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戸賀編集長が語る愛車ヒストリー 第6弾! 「ゲレンデヴァーゲンに乗ったら、スポーツカーに戻れなくなっちゃいました」

業界でも屈指の“クルマ通”である戸賀編集長。数々の名車を乗り継いで来た彼が「何を基準にクルマを選んだのか?」、または「そのクルマのどこが魅力なのか?」を語ります。J PRIMEをご覧の貴兄の“今後のクルマ選び”の参考になれば…と思います。今回ご紹介するのは、初めて所有したSUVのお話。聞き手は戸賀編集長の雑誌編集者時代の先輩、フリーランスエディターの高(「“クルマ通”戸賀編集長の愛車遍歴」参照)です。

「まさしく“質実剛健”という言葉そのもののクルマです」

高 1990年半ば、オープンカーと実用ワゴンの2台持ちで迷走したあと、メルセデス・ベンツに乗ってクルマの本質に気づいたんだよね。

戸賀 そうです。2台持ちで失敗した要因は、僕が中途半端なクルマ選びをしたから! 2台いっぺんに所有するということは、車両の購入価格も維持費も2倍になるため、僕が車両選びに妥協してしまったんです。いや、もちろんそれぞれのクルマ自体は満足したんですけど、2台セットになるとお互いの良さを打ち消しちゃうような感じだったんです。今さらあの当時を振り返ると、“お財布”事情の許される範囲でもっと違うセレクトがあったと思うんですけどね(苦笑)。

高 なるほどねぇ。クルマ選びってお財布事情とは上手く折り合いをつけなきゃいけないけど、自分が欲しいクルマが「本当にライフスタイルに合っているのか?」「乗っていて本当に楽しいのか?」を考え、そのクルマの本質(キャラクター)を吟味しなきゃいけないんだな。さすがの戸賀編集長もまだまだ若かったせいで、意外なミスをしちゃったんだね。でも、当時の戸賀青年は若いくせに、メルセデス・ベンツのEクラスを乗って、「メルセデス・ベンツは宇宙一素晴らしいブランド」と悟ってしまったんだよね。

戸賀 そうです。Eクラスを手放した後、1997年にまたメルセデス・ベンツのゲレンデヴァーゲンに乗ったんです。折しも993型のポルシェ911の最終年ということもあって、「最後の空冷911」に乗っておこうか!?…と悩んでいたんですけどねェ。僕自身、スポーツカーへの欲求はありましたが、まわりから「戸賀っちは993に乗らなきゃダメだろ!」って声が多かったし…。

高 それが…なんでまたゲレンデヴァーゲンに決めちゃったのかしら?

戸賀 1990年後半はバブル崩壊の影響で、クルマメーカーのほとんどはコストダウンを余儀なくされていました。それまでのメルセデス・ベンツはいつの時代も自社のクルマ作りに妥協せず、例えば横転した際に乗員を守るためにガラスサンルーフではなく鉄のサンルーフを採用し続けていたり、あるいはテールランプの表面に横溝状の凹凸を付けて汚れても被視認性を損なわないようにしたり、さらにはフロントウィンドウの雨滴を効率よく拭き取るために長さが可変する1本ワイパーを採用していたんです。そうしたメルセデス・ベンツの信念がゲレンデヴァーゲンにはまだまだ残っていたので、素晴らしいクルマだと感激したんです。

高 なるほどねェ。それまでの戸賀青年は「速さ」とか「馬力」とか「カッコ良さ」とか、わかりやすい基準でクルマを選択(=評価)していたんだけど、メーカーのクルマ作りのコンセプトとそのクルマの成り立ちや出来栄えをきちんと評価できるようになったんだね。

戸賀 そのとおりです。ブランドの信念とクルマの完成度がシンクロしていれば、そのクルマはおのずと「素晴らしいクルマ」になるんです。それがまさしくゲレンデヴァーゲンで、納車されてドアを閉めた瞬間に確信しましたね。何しろ剛性&密閉性が高くて、ドアをバンッて強く閉めないときちんと閉まらないんですから! そういう剛性感はすべてにおいて一貫していて、ステアリングやトランスミッション、アクセル&ブレーキ、サスペンションはもちろん、スイッチ類さえも剛性が高くてホレボレしましたね。当時、モータージャーナリストの岡崎宏司さんが「さながら2トンを超えるライカ」と表現していたのを、今でも覚えています。

高 ふ〜ん。戸賀っちがこだわったメーカーの信念やクルマ作りのコンセプトって、現代のクルマ選びの基準としても大切なことだよね。また、戸賀っちが感激していたクルマの剛性感っていうのも、みんなが意外と忘れているけどクルマの評価には欠かせないファクターだよな。でも、そういう事柄って、選んだ自分(乗っている本人)は満足できるけど、第三者にはなかなかわからないよね。特に女のコには(笑)。

戸賀 当時、エンジンは3.2リットル直列6気筒のみで、ボディタイプはロングとショートとカブリオ(ショートのみ)の3種あり、僕はショートボディを選びました。色はシルバーで、内装は黒のレザーだったと思います。いやはや、重くて全然走らなかったなぁ。風切り音がうるさいし、乗り心地はトラックみたいにピョコピョコ跳ねるので、女のコにはまったくウケませんでしたね(笑)。そもそも当時はメルセデス・ベンツといえども、ゲレンデヴァーゲンはまったく認知されていなかったんですよ。女のコは当然としても、男でも「ジープ?」っていうヤツがいたくらいですから。

1997年当時のゲレンデヴァーゲンのボディバリエーション。ロングホイールベース、ショートホイールベース、オープンモデルの3タイプあり、戸賀編集長は真ん中のショートホイールベースのシルバーカラーをチョイス。
1997年当時は内装はレザーの他、ファブリックも選択できました。ディーラーの在庫の中から選んだ戸賀編集長は、黒レザーの内装という仕様。

高 そういうトラウマ(笑)もあったから、最近になって現行ゲレンデヴァーゲンを買ったのかね? 確かV8エンジンだっけ?

戸賀 V8のG550に2年乗ったあと、ベントレー ベンテイガを挟み、この夏の終わりからディーゼルのG400dに乗っています。実は21年前のゲレンデヴァーゲンの後、レンジローバーを3台乗り継いだんですけどね。こんな風にめっきりSUV好きになったのは、ゲレンデヴァーゲン、レンジローバー、ベンテイガというラグジュアリーSUVを代表する3台が皆、「ブランドの信念とクルマの完成度がシンクロ」していたからだと思います。

高 3台のレンジローバーやベンテイガなどについては、今後の「愛車遍歴」でおいおい語っていただきましょうか。

文 高 成浩(POW-DER)

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