月面,居住
(画像=iurii/Shutterstock.com)

2040年に月面に1,000人が住み、年間1万人が訪れる――こうした壮大な構想を描いて宇宙開発を進めているのは日本のベンチャー企業、アイスペース(ispace)です。さらにトヨタ自動車や鹿島建設など日本を代表する企業も続々と宇宙開発に参画しています。ロケットの打ち上げ成功で紙面を飾るスペースXなどの米国勢を横目に、着々と準備を進める日本企業の動きを追ってみましょう。

月面定住への第一歩

アイスペースは米グーグルが2007~2018年に開催した月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」で日本初の参加チーム「HAKUTO」を運営しました。ファイナリストにまで勝ち残る活躍を見せた後、月面探査プログラム「HAKUTO-R」を立ち上げ。月での新規ビジネスのチャンスを民間企業に提供しようと、月面着陸機のランダーと月面探査車のローバーの開発を進めています。

HAKUTO-Rは2回(2021年と2023年)の月探査ミッションを予定しており、米宇宙企業スペースXのロケットを使って打ち上げを行うとのことです。ランダー、ローバーとも小型軽量を特徴とし、低コストで定期的な輸送プラットフォームの構築を目指しています。

同社は観測機器を月へ運ぶ輸送サービスを販売し、ランダーに通信装置など移動が不要な機器、ローバーに走行データの取得など移動が必要な機器の搭載を予定しています。そこで得られたデータや結果から新規ビジネスが花開くかどうかは、柔軟な発想を持つ多くの企業家が登場するかどうかにかかっていると言えるでしょう。

地球を眺めながらドライブ? 目指すは1万キロ走破

月面に人々が到達したら、さまざまな活動に入る前に周辺環境を念入りに調べる必要があります。こうした有人探査活動に向けて、燃料電池車の技術を持つトヨタ自動車とJAXAが共同で「有人与圧ローバー」の共同研究を進めています。

目標は月面での1万キロメートル以上の走行です。燃料電池は水だけを排出するクリーンな発電方式であるだけでなく、エネルギー密度が高いため多くのエネルギーを搭載可能、このミッションに適していると判断されました。

コンセプト案の車両は全長6メートル、幅5.2メートル、高さ3.8メートルとマイクロバス約2台分の大きさ。内部の居住空間は13平方メートルで2人の滞在が可能です。岩石が散らばり放射線が降り注ぐ環境でも、このローバーがあれば安心して探査を行い、月面の把握が進むことが期待されます。

巨大建設機械を遠隔操作、居住スペースを作る

月で長期生活するには当然居住スペースが必要です。ただ、地球上とは違い、いきなり大勢の建設作業員を現地に派遣して建設するわけにはいきません。

ゼネコン大手の鹿島建設は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や大学と連携し、宇宙での拠点建設に向けた共同研究開発を進めています。拠点の建設には、土地の整地や掘削、居住空間となるモジュールの設置、隕石や放射線からモジュールを保護するために土で覆う作業などが必要となります。

こうした作業を担うのは自律的に動く建設機械です。地球からは遠隔操作で建設機械を操ることが想定されますが、地球と月の距離が約38万キロメートルあることから、通信には遅延が発生します。したがって、単に遠隔で操作できるだけでなく、機械自体が高度に自動制御していくことも求められるのです。

鹿島は3~8秒という大きな通信遅延があっても操作性や安定性を損なわずに遠隔操作を可能とする操作支援機能の開発を推進。そのほか、地形変化に応じた動作や機械同士の衝突回避を自律的に判断できる機能の開発も進めています。こうした技術が月面で実現すれば、熟練の職人がいない環境でも居住スペースの建設が可能となる日が近付くでしょう。

地産地消は月面でも?

月面に居住するには「食」の課題もクリアしなければなりません。ベンチャーファンドのリアルテックファンドは、月面で長期生活を行うには地球からの食糧輸送だけでなく現地での食料生産が必要で、生産効率や生産可能な食料の種類などで課題が多いとの認識を示しています。

同ファンドとJAXAは、そんな宇宙での食料生産・供給に関する課題解決とマーケット創出を目指して「Space Food X」プログラムを開始。既に宇宙食開発で実績のある日清食品ホールディングスやハウス食品などが参画しています。

衣食住が事足りて初めて長期滞在が可能となりますが、食へのこだわりや開発意欲の高い日本企業が課題解決をリードできるかに注目が集まります。

ロケットの開発

ロケット開発では、再利用可能なロケット「ファルコン9」を開発したスペースXや、飛行機からロケットを空中発射方式で飛ばすヴァージン・ギャラクティックなど、海外企業が注目を集めています。

一方、日本では堀江貴文氏がファウンダーのインターステラテクノロジズが低価格での打ち上げを目指してロケット開発を進め、打ち上げテストを続けています。

日本のロケットが飛び、月面に着陸し、住居を作り、食料も現地生産する――そんな日が来るのもそう遠くないかもしれません。

文・J PRIME編集部

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