米国,ディフェンシブ投資
(画像=everything possible/Shutterstock.com)

米中の貿易摩擦や世界経済のリセッション入りが指摘されている現在、資産をどのように守るべきかで悩んでいる投資家の方も多いのではないでしょうか。

投資関係の書籍や雑誌などを読むと、景気後退局面に強いディフェンシブセクターの紹介がされています。

「ディフェンシブ」と聞くと何となく資産を守るのに良さそうな気がしてきます。

しかしディフェンシブセクターを買えば下げ相場を乗り切れるのかというと決してそんなことはありません。

本当に資産を守るのにディフェンシブセクターを考えなしに買うのは有効なのでしょうか。

ディフェンシブセクターの一般論

まずはディフェンシブセクターの一般論について簡単にご紹介します。

ちなみにディフェンシブセクターの対にオフェンシブセクターという言葉もありそうですが、一般的には存在しません。

その代わり景気に左右されやすい「シクリカルセクター」という言葉はあります。

ディフェンシブセクターとは

ディフェンシブセクターとは景気動向に業績が左右されにくい業種グループのことです。

一般的には生活必需品や電気・水道などのインフラ関連、ガス、通信などの企業がディフェンシブセクターに分類されます。

景気動向に業績が左右されやすいシクリカルセクターとは異なり、安定した業績で経営できると言われています。

ディフェンシブセクターの強み

ディフェンシブセクターの強みは、ボラティリティが低いため一般的には安定した運用に適しているところです。

景気動向に業績が左右されづらいため、株価も比較的振れ幅が小さくなる傾向があり、安心してポジションを取りやすいのも強みです。

株価の上昇そのものよりも、ディフェンシブセクターで高配当な銘柄でポートフォリオを組む投資家も珍しくありません。

相場の上昇を牽引する成長株は下げ相場の時には下げの主役になります。大きく上昇した分、大きく下がるのです。

過去のITバブルの崩壊では下げの主役は大きく上昇したIT関連銘柄でした。また同じように新興国バブルの時は新興国市場が下げの主役でした。

ディフェンシブセクターは上昇相場を牽引することはあまりない代わりに、下落相場でも相対的に下げ幅が小さいのが強みと言われています。

ディフェンシブセクターがディフェンシブでなくなってきた

ディフェンシブセクターは景気に業績が左右されづらいから、景気後退局面なら迷わずディフェンシブセクターでポートフォリオを組めば良いのかと考える投資家も多いのではないでしょうか。

しかし、そう単純な話でもありません。

ディフェンシブという名前につられて何となく景気が悪い局面でディフェンシブセクターを買う前に、一度立ち止まって考えてみることも大切です。

通商紛争で生活必需品が苦戦

ご存知の通り、米中貿易摩擦が2019年現在株価の上値を重くしています。

生活必需品は景気に左右されづらいディフェンシブセクターの代表です。

景気に関係なく必要なものの需要はあまり変動しないからというのが一般的な理屈です。

しかし生活必需品は通商紛争が長引けば、製品の製造コストが圧迫されます。

また生活必需品も米国内だけで売られているわけではなく、世界中に輸出・販売されています。

輸出先の景気の鈍化は多少なりとも需要に響きます。

ロイター通信によるとディフェンシブ銘柄でも2019年の5月の値動きでは生活必需品セクターは3.5%の下落。

一方で同じディフェンシブセクターのS&Pの公益株指数は0.6%の下落で持ちこたえています。

つまりディフェンシブセクターに入っているからといって必ずしも業績が安定するわけではないということです。

貿易摩擦や景気の動向などでディフェンシブセクターといえど業績が不安定になることもあります。

ディフェンシブだから安心と考えるのは少し短絡的な考えです。

薄れつつあるセクターの境界線

そもそもセクターとは業種ごとの分類です。しかしセクターの境界線自体が日々移り変わっています。

身近な例を挙げると、アメリカのコストコホールセールはEコマースに力を入れています。

日本でも2019年にECサイトを展開することも発表されています。

つまり業種の垣根を越えることが当たり前になっているのです。

マクドナルドがイスラエルのIT企業を買収し、AI技術を活用するなど様々な分野で業種の垣根を超える事例が見られます。

ディフェンシブセクターと景気敏感のシクリカルセクターの境目も曖昧になっているのではないないかという見方もできます。

ディフェンシブセクターはひとつの目安で、最終的な投資判断をするにはセクター以外の市場の動向や個別銘柄の事情などもしっかりと見極める必要があります。

不景気・暴落局面では株そのものが売られる

不景気・暴落の局面ではそもそも業績に関係なく「株」という資産アセット自体が売り込まれます。

リーマンショックでは成長株もディフェンシブセクターの株も結局は暴落に巻きこまれました。

つまりディフェンシブセクターもシクリカルも関係なく売り込まれる時は売り込まれるものなのです。

例えばS&P500の一般消費財指数はリーマンショック後は約30%高値から下落しています。

本当に資産を守るなら現金が一番

「休むも相場」という相場の格言があります。

個人投資家の強みはキャッシュポジションを自由に使えるところです。

多くの機関投資家は預かっている資産を一時的に全て現金にして運用をストップすることができません。

機関投資家は大きな額を運用しており、様々なルールに縛られながら運用をしています。

そのため、アクティブファンドがディフェンシブ銘柄にスイッチングすることで、他のインデックスやアクティブファンドに比べてなるべくアンダーパフォームしないようにするなどしています。

しかし個人投資家は、本当に資産を守るためなら無理にディフェンシブセクターに投資をしなくても現金で待機することもできます。

現金の比率を高めてポートフォリオを暴落から守ることも実は容易なのです。

NISA口座などスイッチングすると投資枠を使用してしまう等の制約がある場合は、この限りではありませんが、一般的な口座ならば無理にディフェンシブセクターに投資をする必要もありません。

ボラティリティの低いポートフォリオをつくる上で、ディフェンシブセクターという切り口から銘柄を選ぶのは悪いことではありません。

ポートフォリオの質は値上がり・値下がりの率だけではなくボラティリティの高さ・低さという視点もあるからです。

同じ値上がり・値下がり率のポートフォリオがあるなら、ボラティリティが低い組み合わせの方が優れているという見方もあるのです。

資産を守るためにディフェンシブセクターに投資をするのではなく、ボラティリティを抑えた運用をするためにディフェンシブセクターから銘柄を選ぶという視点を持ちましょう。

まとめ

ディフェンシブセクターは生活必需品やインフラなど景気に業績が大きく左右されない業種グループのことです。

しかしディフェンシブセクターだから景気後退の局面・暴落の局面で安全かといえば、そうとも言い切れません。

様々な要因でディフェンシブとはいえない状況になることもあります。

またディフェンシブセクターという枠組自体が産業構造次第で意味をなさなくなることもあります。

ディフェンシブセクターは確かにボラティティをおさえた運用には良いかもしれません。

しかし景気後退・暴落などの時に資金を本当に守れるのは現金、つまりキャッシュポジションです。

「ディフェンシブ=安心」と単純には考えられないのです。

文・The Motley Fool Japan編集部/The Motley Fool Japan

>>会員登録して限定記事を読む

【関連記事】
いま世界的に「ブランドロイヤルティ」が低下しているわけ?
超富裕層が絶対にしない5つの投資ミス
「プライベートバンク」の真の価値とは?
30代スタートもあり?早くはじめるほど有利な「生前贈与」という相続
富裕層入門!富裕層の定義とは?