NETFLIX,メディア王
(画像=Kaspars Grinvalds / Shutterstock.com)

コンテンツ産業は時代の象徴です。

ラジオ、新聞、TV、その時代を代表する会社や人物はときにメディア王と呼ばれます。

メディアはその時々で人々の日常生活に欠かせない役割を担い、ライフスタイルを劇的に変える力や世論を動かす影響力を持つ事があります。

現代はネット社会の進化に伴いユーザーが視聴体験を選択する時代に突入し、従来のメディアだけでなく様々なコンテンツが競争しながら、ユーザーの視聴時間を奪い合っています。

そのなかでも一際目立つ存在なのがネットフリックスです。

今回は、近年目覚ましい成長を続けているネットフリックスを中心に、今後のメディアの在り方を考察していきましょう。

ネットフリックスとは

ネットフリックスは1997年に創業者兼CEOのリード・ヘイスティングス氏が設立した会社です。

初期の頃はネットで申し込まれたDVDをレンタル宅配するというシンプルな事業でしたが、ネット産業の進化と共に成長を続け、2007年にはインターネットの配信サービスをスタートさせています。

さらに2013年からはオリジナルコンテンツ作りに力を注いでいますが、大きな転機は2015年にありました。

この頃、本格的にネットフリックスの勢いを感じる出来事があったのです。

それは、2015年1月米国ラスベガスで開かれた世界最大の家電展示会である「インターナショナルCES」の場で、4Kテレビを発表する世界的メーカーのソニー、パナソニック、サムスン電子、LGエレクトロニクスなど、各社はビジネスパートナーとしてネットフリックスを紹介したのです。

それ以降、ネットフリックスを無視したテレビ作りは考えられないフェーズに入ったといえるでしょう。

実際、VOD(ビデオ・オン・デマンド)の利用時間も1日平均1時間視聴するところまでシェアが拡大しており、従来の地上波放送局以上の存在感を示しているのです。

アメリカでは1980年代からVODが普及しており、ポピュラーな存在としてネットフリックスが日常生活の一部となっています。

事実、アメリカ製のゲーム機やテレビのほとんどにネットフリックスの視聴機能が内蔵されています。

いわばテレビの中にレンタルビデオが組み込まれたような存在とも言えるでしょう。

現在ではアメリカで4000万人以上の会員数を獲得し、世帯普及率約35%のシェアを誇っています。

世界中のユーザー数は1億4000万人以上を超え、同業他社を引き離して世界一を達成しています。

名実ともにネットでコンテンツを配信する、21世紀型のメディア王最有力といえるでしょう。

ネットフリックスのビジネスモデル

サブスクリプション

基本的なビジネスモデルはサブスクリプション型です。

月額課金の為、ユーザーが増える事によって、安定した資金を確保できる仕組みです。

このサブスクリプションは、新しい形という訳ではなく、新聞などの契約が同じ仕組みです。

ただし、従来のモデルとデジタルの大きな違いはユーザー自らカスタマイズできる点でしょう。

個人の好みに応じて見たい情報を選べることが大きな強みといえます。

例えばネットフリックスの場合、月額1,296円(税込)のスタンダードプランを選べば、実に190カ国以上の場所で好きな時間に視聴可能なのです。

またコンテンツのデータ供給を安定させる為に、アマゾンのクラウドサービスである「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)」を採用しています。

流通網

ネットフリックスはネットとスマートフォンの普及を最大限に生かし、顧客の心理に入り込んだサービスを展開しています。

例えばユーザーの視聴パターンをデータ収集して分析する事で、会員それぞれの趣向に沿ったオススメ動画を提案するサービスを展開しています。

これにより世界中のユーザーとの心理的な距離感を縮めることに成功しているのです。

地球上、全ての場所がビジネスチャンスであり、今後も流通網が拡大していくはずです。

キラーコンテンツ

「コンテンツ・イズ・キング」という言葉があるように、新鮮で高品質なコンテンツこそネットフリックスの核となる事業です。

これはシンプルで最も強みがあり、結果的には競合対策にもなっているのです。

最大のライバルであるアマゾン、その他にもアップルやディズニーなど続々と強敵が現れるなかで、ネットフリックスは愚直なまでにコンテンツだけに集中しているのです。

この姿勢は一貫しており、年間40億ドルとも50億ドルとも言われる投資を続け、その規模はアマゾンの2倍となる金額です。

常にライバルを意識することで、他社との違いを明確にしていると言えるでしょう。

エンタメ分野(テレビ・映画・ドキュメンタリー)に集中し、決してスポーツやニュースには手を出しません。

ネットフリックスというブランディング構築を意図的に実行しているのです。

その効果として、今では米国の視聴時間の10%を獲得するまでに成長を遂げています。

経営戦略のひとつである「選択と集中」によって、他社を引き離すことに成功しているのです。

またアマゾンやアップルは他の事業も抱えているため、現状ではネットフリックスに1日の長があるのです。

また動画コンテンツは音楽の曲数と比較すると圧倒的に数も少なく、コンテンツ産業はまだまだ成長段階にあるといえるでしょう。

とはいえ懸念材料も少なくありません。

例えば中国への進出ですが、その場合、中国政府がビジネスへ介入する可能性が高く、未だにこの巨大市場には参入していません。

また近い将来、確実に訪れるVR市場についても未知数であり、勢力図が一変する可能性も否定できないでしょう。

数字で見るネットフリックス

ネットフリックスの強さを具体的な数字で見ていきましょう。

2019年3月現在、時価総額は約1556億ドルの規模を誇り、これは世界中の企業の中でも世界51位の大きさです。

また地球上全てのインターネット通信量の15%のシェアを握り、動画サービス全体の27%を占めています。

サブスクリプションによって毎月約1535億円(世界No.1)の収入が安定して見込まれ、世界中のユーザーが1週間で視聴する合計時間は10億時間にも及びます。

番組制作のコンテンツ獲得費に年間1兆4300億円費やしており、これは日本のキー局の合計を足してもネットフリックスの25%程度に過ぎません。

数字で見ることでネットフリックスのスケールの大きさが分かると思います。

ネットフリックスの最大の強み

ネットフリックスは映画会社が儲からないと判断した企画案や、その他の理由で映画化しなかった企画案を次々に買い取り、オリジナルコンテンツとして独占配信するビジネスモデルで成功しました。

実際にあるケースとして、米国には6大配給会社があり、その一角を担う大手配給会社が配給権を握っていたものの、いざ映画撮影に入る段階で制作費が1億ドル以上と予想以上に高騰してしまいました。

そこで配給会社は採算と照らし合わせて、この映画プロジェクトの配給権を断念したのです。

こうした場合、魅力的なコンテンツと判断したら、ネットフリックスはさらに数億ドルを上乗せしてまで出資して、配給権を買い取るケースが当たり前のように起こっています。

このように、ネットフリックスは対象のコンテンツを買う野心と財力、経営判断のスピード、その全てを持ち合わせているのです。

これこそネットフリックスの最大の強みでしょう。

今ではハリウッド産業の受け皿となりつつあり、絶対的な王者として君臨し始めています。

ネットフリックスによるリモコンボタン戦略

日本のテレビリモコンの顔を一変させたのがネットフリックスです。

2015年からネットフリックスはリモコンという最高の広告の場所を見出し、家電メーカーに対してリモコン製造費用の10%を負担する事を提案する代わりに、「ネットフリックス」をリモコンボタンに付けることに成功しました。

とはいえ、当初は家電メーカーも民法キー局との関係性を重視して、ネットフリックスのボタンは民法各局よりも下の場所にありました。

状況が一変したのは2018年の夏からです。

ソニーが新型「ブラビア」を発表したのを機に、リモコン最上部にネットフリックスのボタンを設置しました。

この出来事が契機となり、リモコンボタンの入札合戦は激しさを増していきます。

その一方で、入札競争に参加しないのがアマゾンです。

アマゾンは家電量販店にとっても最大のライバルであり、そのことを配慮する家電メーカーは当面の間、アマゾンにボタンを渡す事はないだろうと考えられます。

様々な諸条件から、リモコンボタンは財力のあるネットフリックスがとても有利にリードしており、ここでも盤石な体制が揃っているといえるでしょう。

ネットフリックスのライバル企業比較(競合他社)

動画配信市場が大きくなるにつれて、アップル、アマゾン、ディズニーなどのライバル企業が次々と参入しています。

今年3月25日にアップル本社で発表された記者会見では、今秋から提供予定の「アップルTV+」への意気込みを感じました。

ゲストにスティーブン・スピルバーグ監督やハリウッド俳優らが登場し、アップルがiPhoneの端末販売だけでなくサブスクリプションビジネスに参入することを明確にしたのです。

ユーザーの画面数で言えば断トツであるアップルがどんな戦略に打って出るのか、今後も目が話せない楽しみな展開が続くでしょう。

一方アマゾンは、地域にあった番組作りに定評があり、ネットフリックスが参入していないスポーツ分野の配信にも力を注いでいます。

日本においてはネットフリックスよりも、アマゾンプライムビデオの方が存在感を発揮しています。

そして、今、最も勢いがありネットフリックスを猛追しているのがディズニーです。

今年の3月には21世紀フォックスの買収が完了し、それに伴い動画配信サービスのHuluの持ち株は60%を超えました。

またヒーロー映画「マーベル」を買収するなど攻勢が続き、コンテンツ帝国へと拡大を続けています。

今後、コンテンツの獲得合戦がさらに激化すれば、ネットフリックスの成長スピードが鈍化していく可能性も否定できないでしょう。

とはいえユーザー側にとっては、より楽しく、より多くのコンテンツをさらに便利に視聴できる可能性を充分に秘めており、ライバル企業がいる事でコンテンツ産業はさらに盛り上がりを見せていくでしょう。

おわりに

現代社会は多種多様なコンテンツが溢れる群雄割拠の時代です。

分野を超えて、いかにユーザーの時間を握れるのかが鍵となっています。

21世紀のメディアの形は変化の真っ只中にあり、ライフスタイルが多様化していく中で、時間や場所を超えたサービスが当たり前となりつつあります。

現段階でユーザーが視聴時間を費やしたくなる最有力プラットフォーマーこそ、ネットフリックスと言えるでしょう。

今なお急成長と変革への意欲旺盛なネットフリックスの企業文化の根幹にあるものは、「会社は家族ではない」、「言いたい事は面と向かって言う」という2つの揺るぎない方針によるものです。

時にドライにも見えるネットフリックスの厳しい姿勢は「逸材を採用したければ、解雇する能力を磨け」という、「自由と責任」の企業文化がベースとなっているのです。

独立心旺盛な沢山の社員が、上下関係なく本音でぶつかり合う職場環境ともいえるでしょう。

この一貫したブレない企業姿勢を今後も継続できれば、アメリカ発のネットフリックスが21世紀のメディア王と呼ばれる日も、そう遠くない未来に訪れるはずです。

文・The Motley Fool Japan編集部/The Motley Fool Japan

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