シアター・オリンピックス,日露
(画像=Jack.Q / Shutterstock.com)

国際的な舞台芸術の祭典「シアター・オリンピックス」が8月下旬~9月下旬に富山県の南蛎市利賀村と黒部市で開催されています。日本の舞台演出家である鈴木忠志氏やギリシャの演出家、テオドロス・テルゾプロス氏ら世界的に活躍する舞台芸術の関係者8人が始めたこの祭典。2019年で9回目を迎え、初の2ヵ国共同開催の形で日本とロシアで公演が行われます。

人類の未来のために世界の演劇人が連携

シアター・オリンピックスは、1993年に世界的な演出家や劇作家が国際委員会を立ち上げて発足しました。委員会の初代事務局長を務めた斉藤郁子氏によれば、鈴木氏の主催する芸術祭への公演で来日していたテルゾプロス氏が、米ソ冷戦後に欧州で民族紛争が起きる中、人類の未来のために演劇人が連帯して取り組むべきだと提案。鈴木氏もこれに同調して共同で呼び掛け、両氏のほか以下の諸氏が発起人となって発足しました。

・ロバート・ウィルソン(米国)
・ハイナー・ミュラー(ドイツ)
・ユーリ・リュビーモフ(ロシア)
・トニー・ハリソン(英国)
・ヌリア・エスペル(スペイン)
・アントゥネス・フィーリョ(ブラジル)

1994年にはシアター・オリンピックス憲章を採択。サブタイトルには「クロッシング・ミレニア(千年紀をよぎる)」が付けられました。翌1995年にギリシャで第1回、1999年に日本で第2回を開催した後は、世紀をまたいでロシア、トルコ、韓国、中国、ポーランド、インドで公演を実施。芸術メディアのシアター・タイムズによると2018年に行われたインドでは世界35ヵ国以上が参加し、17都市で465公演が開かれました。

「動物性エネルギー」の可能性を忘れるべきではない

第9回となる今回はロシア西部の港湾都市、サンクトペテルブルクで6~12月に開催されるほか、鈴木氏が長年活動の拠点を置く利賀や黒部でも8月23日~9月23日に公演が予定されています。鈴木氏の「リア王」「世界の果てからこんにちは」「サド公爵夫人(第二幕)」「ディオニュソス」、テルゾプロス氏の「トロイアの女」など多数の公演があり、劇作家・演出家の平田オリザ氏の作品「東京ノート・インターナショナルバージョン」も上演されます。

今回芸術監督を務める鈴木氏は、情報伝達システムが張り巡らされた現在の世界は「あらゆる物事を、その現場で経験し、人間が共存して生きていく時の知恵を養ってきた時代」とは異なると指摘。この全く新しい環境を成立させるには石油や電気、原子力といった「非動物性エネルギー」の力が不可欠となる一方、個々人が持つ「動物性エネルギー」の豊かな可能性を忘れるべきではないと警鐘を鳴らし、祭典の意義を強調しています。

「舞台芸術やスポーツが持つ価値はそこにあり、民族や地域で異なる動物性エネルギーの使い方、楽しみ方が文化的な個性となり、その共通性と違いを知ることが人類の未来への共存に資する」と説いています。

なぜ大都会でない利賀や黒部で開催?

鈴木氏は大都市でなく富山で開催する理由をロシアメディアのスプートニクに対し語っています。鈴木氏が主催し利賀を拠点とする劇団「SCOT」の公演に触れて、「観客は山の中の宿舎やテントに泊まり、芝居後に議論したり感想を述べ合ったりする機会になる」と指摘。また「これは大都会では成立しない状況で演劇を見るだけでなく観客同士で作る楽しい時間があるだろう」と述べています。

合掌造りのステージや野外劇場など自然環境や日本の伝統に包まれながら、そこで描かれる人間ドラマを見に、初秋から中秋を迎える富山を訪れてはいかがでしょうか。

文・J PRIME編集部

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