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(画像=LightField Studios/Shutterstock.com)

一定の資産をもつ高齢者の親族にとって、認知症によるお金のトラブルは心配の種でしょう。そこで検討したいのが、認知症から資産を守る「成年後見制度」です。その仕組みとポイントについて解説します。

認知症の高齢者が保有する資産が215兆円規模に

2018年に第一生命経済研究所が発表した試算によると、認知症の高齢者が保有する資産は2030年時点で215兆円に達します。資産を抱えたまま認知症になる高齢者が増えれば、日本経済の停滞の一因になりかねません。個人レベルで考えても家族にとって深刻な問題です。そこで認知症による資産管理リスクに有効なのが「成年後見制度」です。

この制度では、認知症や脳の障害などにより判断能力を失ってしまった人の財産や生活を守るため、後見人を代理人として立てて財産管理などの権限を与えます。成年後見制度を使えば、後見人の許可がない契約は解除可能です。またお金の管理や売買契約も後見人しかできなくなります。この後見人は、一定の要件を満たす人なら親族・専門家問わず選任できるのが特徴です。

ちなみに最高裁の統計では、親族が後見人などに選ばれる割合はわずか約 26.2%(2017年度)です。大半が弁護士などの専門家が選任されています。親の認知症リスクに有効な成年後見制度ですが、申立件数は2013~2017年で年間3万5,000件前後といった状況です。親が財産を保有している人は、この仕組みのことをしっかりと把握したうえで利用を検討するのが賢明といえます。

専門家へ後見人を依頼した場合、「月額2万円」が目安

成年後見制度一番のポイントは、「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類があることです。適切な選択をしましょう。「任意後見制度」は、本人が判断能力をなくしてしまう前に、あらかじめ後見人を決めておくことです。一方の「法定後見制度」は、すでに本人が判断能力をなくしているか、衰えつつある場合に、家庭裁判所などが後見人を選ぶことです。

もちろん本人の意思をより反映させられる選択は「任意後見制度」でしょう。すべての高齢者がそうなるわけではありませんが、ある程度の年齢になればいつ認知症などによって判断能力が衰えるかわかりません。70歳代以上の親がいる人は、元気なうちに親族でしっかり話し合い、本人の意思を尊重できる後見人を決めておくことが重要です。

財産が大きくて管理が大変な場合、弁護士や社会福祉士など、法律や福祉の専門家に後見人を依頼するのも一つの方法でしょう。しかし専門家への依頼は当然ながら報酬が発生します。2013年1月に東京家庭裁判所立川支部が公表した資料によると、成年後見人などの報酬額の目安は月額2万円です。また管理財産額が1,000万円超5,000万円未満の場合は月額3万~4万円、5,000万円超の場合は5万~6万円となっています。

任意後見契約は後見人予定者との事前契約が必須

成年後見制度の手続きは、法定・任意のどちらも家庭裁判所への申し立てが必要です。必要な書類をそろえて申し立てすると申立書類の審査および家庭裁判所による調査が行われます。場合によっては申立人との面接や親族への照会鑑定などが必要です。その結果、後見人が必要であると判断されると後見人が選任され、後見開始の審判が下ります。

ただし本人にまだ判断能力がある場合(=任意後見制度を利用する場合)は、家庭裁判所に申し立てをする前に、後見人になってもらう予定者と任意後見契約を結んでおく必要があります。任意後見契約は、公証役場で作成される公文書でなければなりませんので注意してください。

「後見人になるのは身近な親族が望ましい」という最高裁の考えも

成年後見制度を利用するうえで留意すべきこともあります。これまで日本の各家庭裁判所は、親族などによる不正を防ぐことを理由に、弁護士などの専門家を率先して選任してきました。しかし制度の利用者が横ばいとなっている中で最高裁判所は2019年3 月「身近な親族を選任することが望ましい」という考え方を示しました。この影響で親族の後見人が急増するか否かについて、注視していく必要があるでしょう。

文・J PRIME編集部

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