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(画像=foxaon1987/Shutterstock.com)

全身がんになりながらも、がんになって本当によかったと語った樹木希林さんの生き方は私達に何を残したでしょうか。

がんになって本当によかった

2018年に亡くなった女優の樹木希林さんは、2005年に乳がんの手術を受け、2013年に全身にがんがあると公表しました。それでも亡くなる直前まで変わらない様子で映画やテレビへの出演を続け、存在感を放っていました。樹木さんの関連書籍は「2019年上半期ベストセラー」総合1位になるなど、今も多くの人の心を捉えているようです。

なかでも、樹木さんの「がんになって本当によかった」という言葉は印象的です。樹木さんはその理由について、「自分の体と向き合うようになったから」だと話したそうです。延命よりも生活の質を重視するといった治療の選択に関する報道もありましたが、何よりも彼女独自のがんとの向き合い方には学ぶところがあります。

樹木さんは、「どんな物事にも表と裏、善と悪があり、両面を受け入れることで人はたくましくなる。健康を善、病を悪とする人生はつまらない」などと語ったとされています。

がんの告知を受けて海外への家族旅行をキャンセルしたエピソードについても話しています。旅行先に予定していた場所で後に大災害が発生したことから、家族が災害に巻き込まれて自分だけが生き残った後の余生を想像し、「がんになって幸せ」だと心底思ったのだそうです。

「がんになったことに意味がある」として、病と闘うのではなく病とともに生きる、そして普通であればマイナスととらえるような状況をプラスとして受け入れる。そんな彼女の生き方に励まされ、はっとさせられる人は多いのではないでしょうか。

自分を最後まで使い切る

樹木さんを起用した宝島社の企業広告からは、さらに深い彼女の死生観や人生観が読み取れます。2016年に全国紙に掲載された「死ぬときぐらい好きにさせてよ」というキャッチコピーの広告には、次のようなメッセージが書かれています。

「人は必ず死ぬというのに。長生きを叶える技術ばかりが進化して なんとまあ死ににくい時代になったことでしょう。死を疎むことなく、死を焦ることもなく。ひとつひとつの欲を手放して、身じまいをしていきたいと思うのです。人は死ねば宇宙の塵芥。せめて美しく輝く塵になりたい。それが、私の最後の欲なのです」

広告は、英国の画家ミレイの傑作「オフィーリア」をモチーフにしたものです。シェイクスピアの戯曲「ハムレット」に登場するオフィーリアが溺死する前に仰向けになって歌いながら川に浮かんでいる姿を描いた作品ですが、広告では樹木さんがオフィーリアに扮し、生と死の境を漂っているかのように小川で横たわっています。この広告は死をテーマにしながらも、独特のユーモアとそのメッセージで大きなインパクトを与えていました。

また樹木さんの死後、2018年に読売新聞に掲載された広告には、次のようなメッセージが書かれています。

「靴下でもシャツでも、最後は掃除道具として、最後まで使い切る。人間も十分生きて自分を使い切ったと思えることが、人間冥利に尽きるんじゃないかしら。そういう意味で、がんになって死ぬのがいちばん幸せなのよ。用意ができる。片付けして、その準備ができるのは最高だと思う。/ひょっとしたら、この人は来年はいないかもしれないと思ったら、その人との時間は大事でしょう?そうやって考えると、がんは面白いのよ。」

誰にでも必ず訪れる死と正面から向き合い、死ぬまでの時間をいかに生きるかということを存分に考えた上で、焦らずなりゆきに任せて生きたその姿勢は、さまざまな状況に置かれた人に生き方を見直すきっかけを与えてくれそうです。

日常に転がる幸せを感じられるようになる、あるいは物事を複雑に捉えすぎず、もっと大胆に幸せを追求するといったように、それぞれが自分にとって納得できる毎日を過ごし、人生を使い切ることができれば理想的かもしれません。

無理をしなくても自分を置ける場所

樹木さんが晩年に出演した映画「日日是好日」は、主人公が茶道を通して「自由や生きる喜び、かけがえのない今」に触れる様子を描いた作品です。主人公の師匠を演じた樹木さんは、この映画のインタビューで、「踏み迷う時に、そこへ行くとあまり無理しなくても自分をふと置ける場所を作っておくといいかもしれません」と話しています。

「生涯であと何本映画に出られるかという中、慎重に選んだ作品だったのではないか」とプロデューサーは語ったようですが、樹木さんが女優という仕事にどう向き合ったのかをうかがえる作品かもしれません。そして、浮き沈みある日々の中で季節や色、音などの情景まで全身で感じ、その素晴らしさに気づくことの大切さ、日常を生きやすくするためのエッセンスについて伝えてくれているようです。

文・J PRIME編集部

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