チャールズ・ホスキンソン氏

オープンソースで分散型のブロックチェーン「Cardano(カルダノ)」の技術研究・開発を行うインプット・アウトプットHK(IOHK)が、3月にアメリカ・フロリダ州マイアミビーチで開催した「IOHK Summit 2019」は、ブロックチェーンや仮想通貨の将来が実感できるイベントでした。

IOHKは数学者、科学者、プログラマー、大学教授、政府関係者との関係が深く、専門家と連携して、IOHKのブロックチェーン「カルダノ」や、今回新たに発表された企業向けの「Atala(アタラ)」の開発に取り組んでいます。

専門家と連携して、両者で深く検証した上で開発し、市場にオープンソースとして流通させる。事実、「IOHK Summit 2019」では、多くの専門家がステージで登壇しました。専門家との深い関係と連携は、IOHKの大きな特長でしょう。

将来的には紙のお金はなくなり、仮想通貨やブロックチェーンの時代が到来することを前提に、将来を見据えた子供向け仮想通貨「Crypto 4 Kids」も実施しています。

ブロックチェーン技術へのビジョンについて、IOHKトップのチャールズ・ホスキンソン氏に話を聞きました。エンジニア部門では、「フェイスブックなどのソーシャルメディアの競合をつくれるか」「カルダノを使ったIoTシステムがつくれるか」など、あらゆることを考えています。

納得のいくものであれば資金を募ります。IOHKの開発プロセスでは、カルダノや、イーサリアム・クラッシックを使用しています。そして、世の中に発表する全てがオープンソースで、パテント(特許)フリーです。

長期的にはあらゆるセクターのイノベーションの実践が可能となります。現在は仮想通貨関連のプロジェクトが多く、特定の国での通貨の活用方法、例えば地下鉄でのより良い支払い方法などの開発を進めています。

--- IOHKは、カルダノを基盤としたブロックチェーン開発のみを行っているのでしょうか?

いいえ。ですが、もちろんのこと、カルダノはIOHKの重要な一製品で、発展途上国の製品でも使用されています。プロジェクトの半分では、IOHKのキーとなる製品カルダノが使われています。多くは発展途上国のフィナンシャル・オペレーティングシステムの開発です。セキュリティ、通貨、貸付、保険など、発展途上国向けの開発サービスが多いです。途上国では、当たり前とされるシステムですが、発展途上国では構築が困難です。

現状、エチオピアでローンを受けると、利子が35%から85%もかかってしまう。発展途上国出身のメイドさんがロンドンで仕事し、出身国の家族に送金しようとすれば、多額の送金手数料が発生します。既存のシステムを介した貸付や送金手数料は大きな問題です。

しかし、テクノロジーにおける発展途上国には、日本のような途上国とは違い、明確な解決策がありません。

IOHKはカルダノ・ブロックチェーンを使い、数十億の人々に強い経済力を持たせる方法を考えています。エチオピアもその一つ。IOHKはエチオピアでこういった発展途上国向けのブロックチェーン技術を利活用した整備を進めています。

また、自身が所有する財産関連でもカルダノは幅広く利活用されています。食品産地の透明性、土地の所有権、投票権など、政府に関連する開発サービスを、東南アジアやアフリカで諸国でも展開しています。

--- 既存の技術ではできないのでしょうか?

答えは「ノー」です。ブロックチェーンは、監査能力や、データの更新・作成・アクセス日時に関するタイムスタンプなど、基本的に既存のテクノロジー/システムの増加・強化をするものです。

既存のデータベースでは、こういったメタデータ、データベースを変更、いわゆる、改ざんすることが簡単にできてしまいます。例えば、データベースの改ざんですが、発展途上国では、政権が替わると多くのデータが失われることがあります。

シリアは、戦災下にあり、IS含め、異なる国の勢力が国内に入り込んでいます。こういった勢力は簡単に政府のデータ情報を変更してしまいます。投票権や土地の所有権は、新たな勢力によって、決められてしまうわけです。

いずれ国が平和になり、難民が帰国し、自分の家に帰宅すると、そこには他人が住んでいることさえあります。登記簿もなくなっています。こういったことが発展途上国の現場の実情です。

だからこそ、分散型で改ざん不能なブロックチェーンが大事なのです。OracleやAzureといったデータベース単体ではなく、基盤インフラとして導入する必要があるのです。ブロックチェーンの監査能力は絶対的なものであり、データのタイムスタンプなど、全ての履歴が記録され、国境を越えて動作します。

また、人はお互いを信用できません。

例えば、医療カルテ。私はアメリカ・コロラド州に住んでいます。もし、アフリカ・エチオピア滞在中に寄生虫かマラリアで病気になったとします。エチオピアの医者は、わざわざ、コロラドの医者に私の医療情報を得るために連絡をします。

コロラドにいるかかりつけの医者は、エチオピアの病院にいる患者である私の同意を必ず確認しますが、私は意識がない状態です。異なる組織で信頼がないため、これでは医療データのやり取りができないのです。

こういった状況の下で、ブロックチェーンは調整役であるコーディネーション・レイヤーとして機能することができるのです。病院間で証明を発行し、データのやり取りを実現可能にします。“一時的”に治療のためにデータを開示するのです。

治療後、私がエチオピアを出国すると、データは無効になる仕組みを作ることができる。ブロックチェーンでは、このような仕組みを構築することができるのです。

ブロックチェーンが全てを解決するということではなく、ブロックチェーンは、信用できる調整役を担うことができるのです。我々の世界では、人がお互いを必ず信用しているわけではないのです。人が介入しない技術ももう既に存在します。今後25年は、車の自動運転技術で使われることになります。

インフラは巨大です。5G、Bluetooth 5、Wi-Fi6などを介して、自動車同士がコミュニケーションを取り合い、自動運転のインフラ間でもコミュニケートします。

車同士が会話し、交通の流れを調整する――これは容易なことではありません。自動車に巨大なウェブセンサーを構築し、車間の全体調整を行う必要があるからです。

チャールズ・ホスキンソン氏

インフラには、地方政府、連邦政府の要件を入力、トヨタ自動車、GMなどの自動車メーカーが関わる必要もあります。今後、運転する顧客のために、このようなインフラ構築に向けて自動車メーカーの協力は必要不可欠です。

そのために、様々な新たな基準ができ上がりつつあるのですが、テクノロジーの安全性はいかがなものでしょうか。自動車を識別するためのセキュア・クリプトグラフィック・アイデンティティ、法の確立、保険、タイムスタンプなども必要となります。

また、自動車会社1社だけで対応できるわけではありません。やはり、ブロックチェーンのオープン・システムで調整を行い、対話できる仕組みをつくるのです。ブロックチェーンは信頼される調整役として機能するのです。

文・J PRIME編集部

>>会員登録して限定記事を読む

【関連記事】
超富裕層が絶対にしない5つの投資ミス
「プライベートバンク」の真の価値とは?
30代スタートもあり?早くはじめるほど有利な「生前贈与」という相続
富裕層入門!富裕層の定義とは?
世界のビリオネア5人が語る「成功」の定義