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(画像=FotoYakov/Shutterstock.com)

他の先進国と比較して圧倒的に低い有給休暇の消化率、長時間労働の問題に加え、過労死やブラック企業などがクローズアップされる風潮が広がり、政府も働き方改革に本腰を入れ始めています。その柱の1つとして、残業時間を制限し、有給休暇の取得を奨励しています。

長時間労働から労働者を解放する一方、副業の解禁に向けた舵取りも進んでいます。転換期を迎えた今、労働者のみならず、企業にとっても新制度に沿いながら、これまでの従業員の勤務実態を改善しつつ、従来以上の企業活動が持続できるのかが気になるところです。

日本の年間労働時間はドイツより350時間も長い

過労死という言葉で表現されるように、日本人は働き過ぎであると言われます。OECD(経済協力開発機構)がまとめた1人当たりの年間総実労働時間の統計をみると、日本は1710時間(2017年)となっています。2001年には1800時間を超えていました。徐々に減少してきたものの、2009年以降は同じ水準で推移しています。

一方、欧州各国と比較すると(2017年)、オーストリア1511時間、ベルギー1545時間、フィンランド1556時間となっています。さらに、日本同様、製造業が経済を牽引するドイツは1356時間と日本より350時間も短い結果となっています。こうした国際比較のデータに加え、過労死や過重労働による心身の病を患うケースが増加傾向にあるなか、従業員の健康問題という点からも、残業時間の制限というのは企業、労働者両者にとっても受け入れられやすい環境にあると言えるでしょう。

年収ダウンから副業へ

残業時間に上限が設定されたからといって、従業員が手放しに喜んでいるというわけではありません。この上限の設定により、残業代が減り、みずほ総合研究所によると、その額は雇用者1人あたり年間87万円の減少になると見込まれています。残業から解放されるのは喜ばしい一方、収入ダウンの現実を受け入れなければならないというジレンマを抱えることになります。

従業員の中には、これまで残業代を目当てに、勤務時間中の効率性アップに積極的に取り組まない例も垣間見られました。また、こうした残業代を含めた収入で家計を管理しているため、働き方改革による残業代の減少は大きな打撃となります。

従って、残業がなくなって空いた時間に、少なくなった給与を補うために副業をスタートしたという労働者も多いでしょう。これまでのキャリアで培ったスキルを生かし、効率よく副業に取り組み、収入を確保できるのはごく一握りのケースです。

実際には、アルバイトのような形で、普段とは異なる業種で、空いた時間に働かざるを得ないケースも目立ちます。その仕事内容が肉体労働であれば、疲れがたまり、本業に影響が出る恐れもあります。

企業から従業員への還元がポイント

企業側の視点に立つと、残業の上限設定により、残業代の人件費負担が軽減されます。一方、従業員が減少した給与を補うため、副業に励んだ結果、疲労などから本業に悪影響を及ぼすリスクもあり、企業としては副業の全面解禁は手放しでは喜べないのが本音かもしれません。

従業員が残業の減少によって経済的な問題を抱え、副業に従事せざるを得ない事態を回避するためには、企業が浮いた残業代を従業員にいかに還元できるかがポイントとなりそうです。一例として、オリックスは2018年から「自分磨き制度」を導入し、年間6万円分の福利厚生ポイントを従業員に付与し、働き方改革によって生まれた自由な時間を有意義に活用し、本業に還元できるような仕組みを整備しています。

企業にとっては、残業代を管理するのみならず、さらに一歩進み、収入減に直面する従業員の生活面のサポートを念頭に、今後の生産性をどのように向上できるかという視点に立って、サポートする体制を構築できるかが鍵となるでしょう。

文・J PRIME編集部

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