
高度成長時代には自動車を持つことが1つの社会的ステータスであり、その後のバブル経済時代には、高級ブランド品を購入することが価値観としてすっかり定着していました。しかし、バブル崩壊後、失われた20年とも言われるデフレ、低成長の時代を過ごす中、技術革新の後押しもあり、こうした価値観に変化が見られるようになりました。その画期的な変化をもたらしたのがシェアリングエコノミーで、様々な場面にサービスが広がっています。
クルマから高級ブランドバックまで広がるシェアリングエコノミ―
シェアリングサービスの先駆けにもなったのが、かつては都市部でも一家に一台が当然とされたクルマです。カーシェアリングが広がりを見せ始めたのが2010年頃からで、その後は右肩上がりに利用者が増加しています。交通エコロジー・モビリティ財団によると、カーシェアリングの車両台数は2万9,208台、サービスを利用する各社の会員数は132万794人(2018年3月時点)にまで拡大しています。
高級ブランドに目を向けると、バブル期にはエルメスやシャネル、ルイ・ヴィトンといった名立たるブランドのバッグが飛ぶように売れ、街角で高級ブランドを持っている人を見ない日はありませんでした。
高級ブランドバッグに対する憧れは、時代が変わろうとも女性にとっては同じのようです。しかし、平成が終わりを迎えようとする今、女性たちは高級ブランドのバックを購入するのではなく、レンタルしたがるという驚くべきトレンドが訪れています。毎月定額のの会費を支払い、好きなブランドのバッグをレンタルできるというサービスが人気を呼んでいるのです。
また、旅行の分野では、Airbnbが空いた部屋や家を旅行者に貸し出すサービスを世界中で展開し、シェアリングサービスの先駆けとして、そのビジネスモデルの定着に貢献しました。
低成長、伸び悩む所得と技術革新
こうしたシェリングエコノミーの拡大には様々な要素が考えられます。高度成長期やバブル期には、給与がどんどん上がり、その勢いが高額な消費に向かいました。足元の状況では、人手不足などから賃金に上昇圧力がかかっていますが、それまでの長い期間、給与がなかなか上がらない時代を経る中、若い世代は、手の届かない高額商品の購入や保有に目を向けなくなったと考えらます。一方、技術革新によって、スマホ1台で手軽に利用できるサービスが拡大したことが、シェアリングエコノミーを後押しした一面もあります。
価値観の変化
技術革新によってシェアリングエコノミーの基盤が整備されたのに合わせるように、価値観も大きく変化してきました。クルマの利便性は認識しているものの、購入して保有するのではなく、必要な時だけ使いたいという合理的なニーズが高まり、カーシェアリングのサービスが受け入れられています。
また、高級バックへの憧れはいまだ衰えず、購入はできないが、そのバッグを持ちたいという欲を満たしてくれるのがレンタルサービスというわけです。高級ホテルで贅沢に休日を過ごす旅のスタイルから、旅先でも自宅でくつろぐように過ごすため、アパートの一室を宿として借りるといった新しい価値観も生まれました。
こうした価値観の変化と、技術革新によるシェアリングエコノミーがマッチして、新しい時代のスタイルをけん引する格好となっています。さらに、持続可能性に着目して、シェアすることが選択肢の1つとして合理的であるという考え方も広がり、経済的な余裕のなさから、シェアで乗り切るという一面だけでなく、むしろ積極的にシェアリングを利用する環境も整いつつあります。
シェアリングエコノミーの存在感が強まる背景には、こうした人々の価値観の根本的な変化が存在しているのかもしれません。
文・J PRIME編集部
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