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永久不滅の美術品を手に入れたくありませんか? 世界初の技法を駆使して、木地などの下地を使わず、国産の漆だけで美術品を作っている兄弟が日本にいます。

「輪島塗」で知られる石川県輪島市で、漆を使った新たな技法が誕生しました。

その名も『芯漆(しんしつ)』です。芯漆技法を生み出したアーティストである山崖松花堂(やまぎししょうかどう)の兄弟・山崖宗陽(そうよう)さんと山崖松堂(しょうどう)さんは、もはや歴史に残る美術品を作っていると言っても過言ではありません。

漆
写真: 「芯漆」アーティスト。兄・山崖宗陽さん(左)と、弟・山崖松堂さん。

芯漆」とは文字通り、作品の芯となる細部から表面まで、全ての部分において、樹液である漆が使われている技法です。従来の漆器のように、下地として使われる木地を一切使っていません。木地を補強するために塗る漆としてではなく、漆だけで半永久的なモノを作る技法です。

漆

漆の性質は1億年前の化石の琥珀(こはく)とほぼ同じで、漆の耐久性は琥珀や、縄文時代に発見された漆道具が証明しており、芯漆作品は「“億”単位で半永久的に残る」「歴史に残る作品」と山崖兄弟は語ります。

従来の漆器では、下地に木が使われていることから、いずれその木が経年劣化します。また乾燥した地域に、漆器を持っていくと、湿度など気候の変化で、割れてしまうことが多々あるなど、従来の漆器には木が使われていることから、寿命があるのです。

漆のみを使って、漆の性質を最大限に生かした芯漆技法を要することで、永久不滅で経年劣化しない作品をつくれるわけです。

しかし、芯漆作品の製作年数は約8年から最長23年と、正気ではいられないほどの長い年月がかかります。漆に対する熱い想いと“愛”がなければ、芯漆技法は誕生しなかったと彼らは話しています。

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※写真:朱色の『芯漆』作品。抹茶椀(上の写真 左から2つと3つ目)は厚さ約1センチ、16年かけて国産漆を約350回塗り、製作したもの。

しかも、芯漆で使われている漆は純国産100%。従来の漆器の大半は、今や9割が安価な中国産などの漆で作られています。

漆
写真: 半分に切った『芯漆』作品(前)と、従来の漆器(後)を比較。従来の漆器の漆塗の層は0.01ミリほどで、ほとんどが木地。『芯漆』は全て漆、木地未使用。

漆の特性を生かした芯漆

漆の木は、日本の他、中国、カンボジア、タイ、インドなどの東アジアの国々に分布しているが、各地の気候風土が異なることから、漆の性質も異なります。北限は日本。日本の漆はウルシオール成分が最も多く、山崖松花堂の経験上、漆の質が最高レベルと実感しているそうです。

タイやベトナムの漆は黒色で、ウルシオールよりもゴム質が多く、限られた用途で使われることが多いのです。

漆は熱・酸・アルカリに強いだけでなく、ガラスや陶器を溶かすフッ化水素、金を溶かす王水でも溶けません。固まると液体に戻ることもありません。

漆

漆は、科学的に最も安定している有機物の一つなのです。

下地に木を使用する一般の漆器は木が経年劣化し、気候風土が異なると湿度変化で、割れてしまうことが多いです。芯漆で使う漆は、国産100%。国産の漆はウルシオール成分が最も多く、乾燥後は硬くなり、丈夫で、傷つきにくい、最高レベルの品質と言います。一般に販売している漆器の約90%は低価格の中国産漆を使用しています。

しかし、日本産の漆は高品質なのだが、中国産と比べると、倍以上どころか、10~15倍以上の価格です。

世界は漆に魅了される

漆は偏光性からなる屈折率が大きく、見る角度で光り方が変化し、昔から、その漆の“深み”が、欧州の人々を魅了。英語の「JAPAN(ジャパン)」が漆器を表すように、金、銀、貝による模様で加飾された黒く光り輝く漆工芸品は西洋に輸出され、それらは富と権力の象徴となりました。

ヨーロッパには漆の木がなかったので、日本で漆器を見た西洋人の目には、漆の深い色「漆黒」が神秘的に写ったと言われ、フランス王妃マリー・アントワネット王侯貴族は競って漆工芸品を集め、ヴェルサイユ宮殿を華やかに飾っていました。日本の「漆黒」に憧れ、その色つやを再現するために、ヨーロッパでは、ニスなどを使った模造品も流行し始めたそうです。

縄文時代、戦時中の軍艦などの悲劇的な歴史もありますが、日本の歴史上、あらゆる場面で漆は活用されてきました。現在、国宝や重要文化財の建造物 神社仏閣などの改修・補修には、100%日本産の漆を使用する方針を決定しており、国産漆の重要性を位置づけているのです。

ようやく完成した『芯漆』美術品

現在、山崖兄弟が製作した『芯漆』作品は、ぐい吞み、仏像、棗(なつめ)、香合、抹茶椀など様々で、その多くは、「一体どのようにして、樹液の漆だけでこんな作品を作ったのですか?!」と驚いてしまう作品ばかり。

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ぐい吞みでお酒やお水を飲んだ人からは、漆の柔らかさから「まるで口づけをしているようだ」「薬の喉通りが良い」との感想があるそうです。

「芯漆」作品の価格帯は7万円台から最大350万円と高額ではありますが、作品を“体感”するとそれほど価値があるものばかりだと感じることでしょう。

漆の特性を最大限に活かした「芯漆」作品、皆さんも手にして、利用してみてはいかがでしょうか。

文・J PRIME編集部 田舎バックパッカー 中川生馬

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