
イギリスの不動産総合コンサルタント会社、ナイト・フランク(Knight Frank)の最新の「シティー・ウェルス・インデックス(City Wealth Index)」が公表されました。これは富裕層(純資産3,000万ドル以上)の人口、ビジネス、ライフスタイルの3点から都市を評価、ランク付けしているものです。
世界の中で最も富裕層に好まれる都市はどこなのでしょうか。東京がランクインしているのかも気になるところです。ここでは、同調査の内容をもとに、世界の富裕層が注目する都市についてご紹介します。
東京は何位?ランキングを紹介
まずは上記調査による、世界の都市の評価とランキングを見ていきましょう。
ナイト・フランクによる世界の都市の評価とランキング
ランキング | 国名 | 都市名 | 富裕層人口(位) | ビジネス(位) | ライフスタイル(位) |
1 | イギリス | ロンドン | 1 | 2 | 1 |
2 | アメリカ | ニューヨーク | 1 | 1 | 3 |
3 | 中国 | 香港 | 3 | 3 | 4 |
4 | シンガポール | シンガポール | 5 | 9 | 1 |
5 | アメリカ | ロサンゼルス | 13 | 3 | 13 |
6 | アメリカ | シカゴ | 19 | 8 | 7 |
7 | 中国 | 上海 | 8 | 23 | 15 |
8 | オーストラリア | シドニー | 27 | 6 | 16 |
9 | 日本 | 東京 | 28 | 19 | 5 |
10 | カナダ | トロント | 18 | 18 | 19 |
11 | フランス | パリ | 10 | 42 | 6 |
12 | ドイツ | ベルリン | 34 | 12 | 12 |
13 | ドイツ | フランクフルト | 6 | 17 | 35 |
14 | 中国 | 北京 | 3 | 37 | 20 |
15 | 韓国 | ソウル | 7 | 35 | 18 |
16 | アメリカ | サンフランシスコ | 29 | 23 | 8 |
17 | ドイツ | ミュンヘン | 10 | 20 | 34 |
18 | アメリカ | ワシントンD.C. | 50 | 5 | 9 |
19 | アメリカ | アトランタ | 21 | 10 | 37 |
20 | オランダ | アムステルダム | 48 | 14 | 10 |
世界で一番評価の高い都市は、イギリスのロンドンです。世界の最先端の流行が集まる都市というイメージのニューヨークは2位、3位は富裕層が多く集まる香港です。
1位から20位までの間にアメリカの都市が6つもランクインしています。日本は東京のみのランクイン、ランキングは9位と、「思っていたよりも低い」と感じた人もいるのではないでしょうか。
シティー・ウェルス・インデックスから見える東京の傾向
同調査で東京の評価内容を見てみると、富裕層人口が28位、ビジネスは19位、ライフスタイルが5位と、ライフスタイルにおいて高評価を得ています。
東京には高級ダイニングが多く、治安もよいことがライフスタイルの高評価につながったようです。おいしいものを探すのに苦労せず、安心して暮らせる都市という点で、富裕層から好まれていると考えられます。一方で、純資産3,000万ドルを超える超富裕層の数は28位と振るいません。
しかし、日本では純資産100万ドル以上の富裕層の人口が急増しています。フランスのコンサルタント企業、キャップジェミニのデータを見ると、HNWI(純資産100万ドル以上の富裕層)の人口は、2008年には136万5,900人だったのに対し、2017年は316万1,700人と、約10年で2倍以上の伸びを見せています。今後は、東京を含め日本全体で超富裕層が増えていくかもしれません。
なぜ富裕層は海外へ移住するのか
東京に超富裕層がそれほど多くない理由として、富裕層の海外移住が考えられます。富裕層にとって、大きな負担となるのが税の支払いです。税の負担が多い国よりも、税の負担が少ない国に移り住みたいと考える富裕層は多いでしょう。
所得が多いほど課税される累進課税の所得税に加え、財産を相続すると支払い義務が生じる相続税。この2つは富裕層の頭を悩ますものです。資産を増やすことで税を支払い、それを相続した人にも税が課せられます。
そのため、相続税・贈与税のないシンガポールや香港などの海外に目を向ける富裕層が多くなっていると考えられます。
ただし、ただ海外へ移住しただけで相続税が免除されるわけではありません。たとえ相続人が海外に移住していたとしても、被相続人が日本に住んでいる場合は相続税の対象となります。また、相続人と被相続人のどちらも海外へ移住した場合でも、移住から10年を超えていない状態で相続した場合には相続税が課税されます。
場合によっては、海外へ移住するよりも、不動産などを活用して、相続税の負担を軽減する方法を取った方がよいこともあるでしょう。税の負担が気になる人は、専門家へ相談してみることをおすすめします。
東京のランキングは9位!国全体ではアメリカが圧勝
世界の富裕層が住みたい都市はロンドンが1位、国別で見ると、アメリカの都市が多くランクインしています。日本は東京のみで9位となり、ライフスタイルの面から住みやすさはあるものの、富裕層が住みたくなる魅力は今一つ、といったところのようです。
今後、日本がランキングを伸ばすことはあるのか、来年以降のランキングにも注目していきましょう。
文・J PRIME編集部
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