相続対策は60代、70代などある程度の年齢になってからはじめるもの、と思われがちです。しかし、資産の多い富裕層は、30~50代のうちから相続対策をスタートするのが賢明です。それによって、本来かかる相続税を節税できたり、無税にできたりします。若いうちからはじめる相続(贈与)のコツを解説します。

相続対策を少しでも早く始めた方がよい理由

昔から「3代相続があれば財産はなくなる」と言われてきました。真偽のほどはさておき、この言葉は、相続税の負担の重さをうまく表しています。

さらに近年の日本は、相続税の課税対象者を増やし、国民の負担を拡大させています。平成28年の相続税の課税対象者は約106万人でした(被相続人ベース)。以前は、40~50万人台で推移していましたが、税制改正をきっかけに平成27年度以降の課税対象者は倍増しました。このような負担増の環境の中、富裕層は万全な相続税対策で、資産を守っていかなければなりません。

相続税対策の中でも、確実かつ容易に行えるのは「生前贈与(以下、贈与)」です。これは、財産を贈る人が生きている間に、将来財産をもらう人に現金などを移すものです。

ただし、贈与イコール節税にはなりません。贈与した時の税金と、相続した時の税金を比較すると贈与税の方が割高です。しかし、贈与税には節税になるルールがあるので、それを利用して資産を移行するのが賢いやり方です。

贈与にはいくつかの方法があり、年齢に関係なくスタートできるものもあります。後ほど詳細をお話ししますが「暦年課税」という方法は、早くはじめるほど節税メリットがあり、30~50代のうちから着手できます。

若いうちから相続対策をしている人の割合は?

「30代?40代?そんなに早いうちから相続対策をしている人なんかいるの?」と否定的な方もいるかもしれません。しかし、「40代以上の子どものいる既婚者」を対象にした調査によると、40代で生前贈与をしたことがある人は3%ながら確実にいます。やはり、富裕層であれば早くはじめた方が賢明でしょう。ちなみに、他の世代の結果は次の通りです。

● 50代男性 3.8%

● 60代男性 13.4%

● 70代男性以上 17.8%

出所:一般社団法人 信託協会「相続に関する意識調査(2014年7月)」

もちろん、相続をする人は男性ばかりではありません。女性でも生前贈与をする方はいます。その割合は次の通りです。

● 40代女性 0.9%

● 50代女性 4.2%

● 60代女性 10.9%

● 70代以上女性 11.2%

出所:一般社団法人 信託協会「相続に関する意識調査(2014年7月)」

早いうちから相続対策をするなら「暦年課税」を選択

具体的に、贈与をする方法としては、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があります。早く始めるほど有利という視点でいえば「暦年課税」の選択になります。なぜなら、「相続時精算課税」は60歳以上の方以外はできないからです。ここでは、「暦年課税」にフォーカスして解説していきます。

暦年課税には、贈与される人1人当たり毎年110万円の基礎控除があり、この範囲内なら無税で財産を移すことができます。暦年課税の大きな特徴は、贈与者(財産を贈る側)と受贈者(財産をもらう側)の年齢を問わない点です。

富裕層の方からすると、「わずか110万円の枠は小さ過ぎる」と感じられるかもしれませんが、コツコツと長年積み重ねていけばそれなりの額になります。例えば、40歳から75歳までの35年間、暦年課税を続けたとしましょう。子ども2人に毎年110万円の贈与をしていけば、トータルで7700万円の財産を移すことができるのです。

贈与の証拠を残さないと却下されるリスクもある

暦年課税を選択した時の鉄則は「贈与した証拠を残すこと」です。最悪のパターンは、書面を交わさずに現金を渡すこと。これでは証拠が残らないため、相続発生時の税務調査で否認されるリスクがあります。否認されれば、その贈与自体が却下されてしまいます。

否認のリスクを回避するには、毎年書面で贈与契約書を交わしてから贈与を行うと安全です。加えて、子専用の銀行口座をつくり、本人に印鑑と通帳の管理を任せることも大事です(自立した年齢の場合)。親が子の通帳をつくり、勝手に積み立てているようなケースでは、親の通帳と見なされることもあります。このような鉄則を守り、確実な形で資産防衛を進めていきましょう。

文・J PRIME編集部

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