スタートアップへの投資が8億ドルに達するなど、長寿・アンチエイジング分野における研究・開発が近年、注目を浴びています。テクノロジーの進化にともない、老化防止や若返りだけではなく不老不死が実現する可能性についても議論されており、世界一の高齢社会国かつ長寿国である日本でも今後の成長が期待される分野です。

不老不死への憧れが巨大ビジネスに成長

老化細胞のみを死滅させる薬剤の開発や若者の血液の輸血、ヒト胎盤幹細胞、若さや延命をサポートするサプリメント--人類の不老不死への憧れは、近年巨大ビジネスへと変ぼうを遂げています。

バイオテック企業や製薬企業、ウェルネス企業などが競うように、遺伝的不安定性やテロメア(ゲノムの末端にあるDNA)短縮、後天的変化、プロテオスタシス(たんぱく質が共存・協働している状態)の欠落、幹細胞の退化など、老化に関する様々な研究や対策に取り組んでいます。

老化防止から若返りまで がんと老化の関係にも着目

長寿・アンチエイジングといっても、老化を遅らせるものから既に老化した細胞を若返らせるものまで様々なものがあります。

老化を遅らせると期待されている医薬品および栄養補助食品製品には、「セノリキティックス(Senolytics)」「ラパマイシン(Rapamycin)」「メトホルミン(Metformin)」などがあります。これらは老化細胞を排除したり重要なタンパク質の細胞分裂を阻止したりすることで、老化防止効果を期待するものです。

若返りの分野では、分化して特定の細胞を産生できる「幹細胞」や3Dバイオプリントなどによる「臓器再生」、 老化防止や長寿を目的とする「カロリー制限療法」 などの研究も盛んです。

がん罹患年齢の中央値は66歳で、近年はがん治療とアンチエイジング対策を組み合わせた薬の開発も進められています。がんの病理を理解することで 、老化に影響を及ぼすメカニズムにおいて新たな洞察が得られる可能性があるからです。

テクノロジーが不老不死を実現させる?

長寿・アンチエイジングの研究が加速した要因の一つに、テクノロジーの進化があります。人工知能の世界的権威レイ・カーツワイル氏は、ナノテクノロジーなど先端技術を活用することで、「老化だけではなく死すらも克服できる」と主張しています。

その言葉を裏付けるかのように、Amazonの設立者ジェフ・ベゾス氏やGoogleの設立者セルゲイ・ブリン氏、ソフトウェア企業オラクル・コーポレーションの設立者ラリー・エリソン氏、オンライン決済PayPalの設立者ピーター・ティール氏などIT産業の大物が、アンチエイジング関連のスタートアップに巨額の投資を行っています。

スタートアップ動向調査企業CBIインサイツの調査によると、2015年以前は5件、総額2億ドルにも満たなかった長寿・アンチエイジング関連スタートアップへの投資は2016年以降一気に増え、2018年1~9月で25件、総額8億ドルを記録しました。ユニティ・バイオテクノロジー(UNITY Biotechnology)のように上場を果たしたスタートアップも誕生しています。

日本の課題は「健康寿命」?

今のところ、日本では長寿・アンチエイジング分野の研究が米国ほど盛んではありません。しかし27.3%という日本の高齢化率(2016年内閣府データ)や、女性87.26 歳、男性81.09 歳という平均余命(厚生労働省2018年データ)を考慮すると、日本は高齢者が若々しく健康に長生きするための「健康寿命」を伸ばすという大きな課題があります。

健康寿命が伸びれば、高齢者が生き生きとした生活を送れるだけではなく、医療費の大幅な削減にもつながります。今後、日本でもテクノロジーと医療の発達することによって、長寿・アンチエイジング分野の研究が進むことが期待されます。

文・J PRIME編集部

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