グッチ、サンローラン、バレンシアガなどのラグジュアリーブランドを擁する仏企業・ケリンググループでは、その傘下のさまざまなブランドで環境保護支援や女性支援といった社会貢献を行っています。こういった社会貢献活動なくしては企業の発展は見込めない、と発言した、グループの総帥フランソワ・アンリ・ピノー氏の真意に迫ります。

企業の社会的責任を考える

持続可能性という意味を持つ「サステイナビリティ」という言葉は、環境保護活動という意味合いで使われるようになりました。近年では、企業の活動分野でも用いられており、利益だけを追求するのではなく、社会的責任を果たすことで事業を持続させる、という意味も持つようになりました。

企業は利益なくして持続できません。それでも、マーケティングやPRのためではない「真の社会貢献」をラグジュアリーファッション界は目指し始めています。そのムーブメントを先導する一つのグループがケリングです。

ケリングが行う社会貢献活動

ケリングは、2009年に「ケリング ファンデーション」を設立し、以来、女性に対する暴力廃絶に取り組んできました。女性への暴力廃絶を目的とした「ホワイトリボンキャンペーン」にも2012年から毎年参加し、2014年にはデザイナーのステラ・マッカートニー氏がデザインしたホワイトリボン・バッジをブランドショップで配布し、話題を呼びました。

そのほか、NGOや社会起業家を支援することで女性への暴力を廃絶するためのキャンペーンも行っています。性暴力や家庭内暴力を廃絶するために、世界中で啓発活動を続けています。

またケリングでは、地球環境に配慮したビジネスを展開する、とも公表しています。2025年までに、事業によって排出される温室効果ガスを50%削減することを目標として、独自の取り組みを進めています。サプライチェーン、つまり原料の調達から販売に至るまで、あらゆる段階で温室効果ガスを削減する施策を始めました。「地球にある資源は無限ではない」ことを意識し、ラグジュアリーブランドを継続するために必要な努力を、さきがけて行っています。

サステイナブル・ファッションは実現できるのか

ラグジュアリーの反対にあるといっていいファストファッションは、現在、一般に広く浸透しています。流行の服を安く購入できることで人気を得ましたが、ファストファッションが支持を集めるに従い、とある問題も大きくなりました。それが環境問題です。

ファッションのはやり廃りといったサイクルも、ファストファッションの台頭によって早まりました。その結果、消費者は安い流行の服を買い、流行遅れになった服は簡単に廃棄してしまいます。「早さ」を売りにしているファストファッションのメーカーは、次々と新しい衣服を大量に生産し、世界にある有限な資源を大きく消費していきました。地球全体で温室効果ガスの削減に向かっている中で、これは看過できない問題です。

もう一つ、忘れてはいけない問題があります。低価格で販売されているということは、それにかけるコストも極力抑えられているということです。ではどのコストをカットしたのでしょうか。

多くのファストファッションを支えているのは、低賃金での労働を余儀なくされている発展途上国の労働者たちです。先進国では考えられないほどの低賃金で、日夜衣服を製造しています。ファストファッションメーカーのほとんどは、人件費をカットすることで商品を安く販売することに成功したのです。

ファッション業界におけるこのような問題は、ファストファッションだけのものではありません。ケリングも、「ラグジュアリーなファッションを継続したいのなら、環境問題について考え行動するべき」として、地球環境に配慮した「サステイナビリティ・ファッション」の創出にかじを切りました。

トレンドやセレブリティがファッションのすべてではなく、アイテムが作られるサプライチェーン全体を見直し、自然環境に配慮したファッションを展開することが大切だとケリングは発信します。

ケリングの今後の取り組みも要チェック

元来日本では、「物には魂が宿る」として、身近にある“モノ”を大切にする文化がありました。これからのファッションもそれと同様に、愛着の持てる最高のアイテムを、長く着こなしていくことが大切ではないでしょうか。そこにあるのは、流行に左右される自分ではなく、意志を持ち、大切なものに愛情を注ぐ自分です。

ケリンググループでは、原材料を保護する観点から、トレーサビリティーによる情報の管理を100%行うことを目標としています。また、アニマルウェルフェアに関する基準も発表する予定です。ケリングはこれからもラグジュアリーブランドの筆頭として、ファッション業界にある問題を解消するための活動を続けていくでしょう。

その先にあるのは、ラグジュアリーの本質です。不当な労働環境もなく、過剰な消費もない。誰もが満足できる、新たなファッションの常識が作られる日は、すぐそこまで来ているのかもしれません。

文・J PRIME編集部

【関連記事】