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「TACUBO」の薪焼きの旨さを科学的な視点で証明!
記事提供:料理王国
田窪さんの薪焼きの旨さを科学的な視点で証明してくれるのは、味覚センサーを使って素材や料理の味の数値化に取り組む鈴木隆一先生だ。慶應義塾大学との共同研究で、五味やコクなど、味を〝見える化〞することを目指している。
鈴木先生による「肉をおいしく焼く」科学的解説
鈴木先生は「以前も、炭焼きと薪焼きはどちらがおいしいのかを調べたことがあります」という。牛肉を使った検証で、厚切り肉であれば薪焼き肉の方が旨味が強くなるという結果が出たのだ。
「肉をおいしく焼くためのポイントは、『内部温度』と『メイラード反応』です」。肉に含まれるタンパク質のひとつで、水分を含むアクチンは66度以上で変性し水分を排出する。つまり、内部温度66度が、肉汁として旨味が出てしまう限界点ということだ。メイラード反応とは、糖とアミノ酸の過熱によって生まれる変性で、155度でもっとも活発になり、香ばしさやコクを生み出す。このことから考えると、薪焼きの方が高い熱量を持っているのではないかと、鈴木先生は分析する。「品種、塩、火、焼き時間の観点で測定しましたが、田窪シェフの薪焼きは、もっともおいしさを引き出す焼き方をされているのがわかりました」
厚切りなら炭より薪の方が旨い!
味覚センサーを使い、牛肉を炭火焼きと薪焼きで焼き比べたところ、厚切り肉を焼いたときに、旨味の数値に差が出た。薪の厚切りの旨味は3.6、炭の厚切りは3.4。0.2ポイントの差は、95%以上の人が味の違いを感じられる値であり、薪の方が、旨味が強かったのだ。旨味3.5以上は、相対的にかなり高い数値だ。
まずは田窪さんの薪焼きのポイントをチェック
1.品種と部位
水分量やサシがほしいのでサーロインを使う
普段は黒毛和牛とホルスタインの交雑種「十勝田くぼ牛」のサーロイン。「ランプだと筋があってステーキには不向き。フィレだとやわらかすぎるんです」と田窪さん。水分を抜きたくないので、熟成はしない。実験では、一般的な黒毛和牛(A3)のサーロインを使った。
2.塩
水分を出したくないので最後に
田窪さんの火入れの〝通奏低音〞になっているのが「非脱水」である。旨味をできるだけ肉に留めておきたいからだ。焼く前に塩をふらないのも「塩が浸透して水分と一緒に旨味が出ないようにしたい」から。焼き上がってから2種類を混ぜた塩をふってカットする。
3.火
強火の近火で蒸し焼き効果も
薪の熾火に触れるくらいの近火で火を入れる。それが薪焼きの特徴ともいえる。これは薪から出る水分も関係する、と田窪さんは考える。「蒸し焼きの効果もあるのではないでしょうか。炭火は、表面が乾くので魚や鳥など皮がある食材に向くように思います」
4.時間
200gの焼き時間の目安は10分
焼き時間については、実は田窪さんがもっとも気になっていたポイント。「個体差もありますが、200gを焼くのにベストだと思う焼き時間の目安は10分。それが正しいのか。数値を知りたいですね」。焼き時間を1分短くと、1分長くしたものを検証することにした。
薪焼き実験スタート
検査するのは味覚センサー 「レオ」 慶應義塾大学で開発された味覚センサー「レオ」は、人間が味を感じる仕組みを模倣したもの。舌にある味蕾(みらい)で感じる人間の味覚を再現する独自の解析方法によって、五味やコクの強度や、味覚の対比効果、抑制効果を測定することができる。数値は0~5で、5が最強。コクは、味覚刺激の総量によって決まるとしている。つまり、五味全体が強い方が、コクが強いということだ。
<1> サシか?赤身か?
黒毛和牛の方が元々旨味が強い
黒毛和牛A3のサーロインと、ニュージーランド産のサシの少ないサーロインを同じ焼き方で比べた。その前に、生の肉を検証すると、黒毛和牛の方が旨味が強いという結果が出た。薪焼きでどんな結果が出るか?
【黒毛和牛】旨味の上昇率が高い!
田窪さんが、通常通りに薪で焼いたもの。この結果が実験の基本になる。甘味、苦味、酸味に変化は見られなかったため、旨味と塩味の変化を比較していく。
【ニュージランド産】旨味がほとんど上がらず
黒毛和牛に対してもともとの旨味が弱かったこともあり、薪で焼いても旨味を引き出すことができなかった。塩味が弱いのも、肉が塩を受け止めることができていないからなのだろう。
「ドリップが多く出ていたので、旨味が出てたのでしょう。輸送時のストレスが原因かもしれません」(田窪さん)
「ニュージーランド産の牛肉には、元々旨味が少ないので焼いても旨味を引き出せなかったようです」(味博士)
<2> 塩はいつふる?
通常は塩は最後に降る
【塩を最初に降る】旨味は少大なきいな差はなし!コクは少ない
塩は通常だと最後にふる田窪さん。塩をふるタイミングでは差は出なかったが、コクは0.2の差がつき、後にふる方が強く感じるという結果に。
「塩をふるタイミングは、旨味の差は出ませんでしたがコクの比較では、後にふる方がいいようです」(味博士)
「大きな差がないのであれば、好みや目指す焼き上がりによって決めてもいいのでしょうね」(田窪さん)
<3> 火の強さは?
【熾火からの距離を2倍に 焼き時間もあわあせて2倍に】旨味、コクともに弱い結果に
旨味とコクともに0.2の差がついた理由には、内部温度とメイラード反応の不足が挙げられる。「焼き時間を延ばせば旨味は出るかもしれませんが、それでは薪の良さである強い熱量を使えない。炭焼きっぽくなりそうですね」と田窪さん。
「遠火は焼きが足らず旨味成分が出ていませんね」(味博士)
「初めて遠火で焼きましたが、思っていた以上に火の入りが遅く苦労しました。薪の良さを出しにくいように感じますね」(田窪さん)
<4> 焼き時間の正解は?
上【ジャストから1分前】焼きが足りず旨味が出てない
下【ジャストから1分後】ジャストとほぼ同じ旨味。コクも高い
短い焼き時間では、遠火の結果と同様に内部温度とメイラード反応不足が考えられる。長い焼き時間では、わずかながら、田窪さんの通常の焼き時間の方が、強い数値が出た。しっかり焼く方が旨いともいえる。
「焼き時間の差を見ると田窪さんのジャストタイムがもっとも旨味もコクも出ていますね」(味博士)
「自分の味覚に自信はありましたが今回の結果で確信にかわりました!自分が感じた味の評価と同じ結果で、よかった!」(田窪さん)
味博士 鈴木隆一先生/Ryuichi Suzuki
AISSY株式会社代表取締役社長、慶應義塾大学共同研究員(兼務)。慶應義塾大学理工学部卒業、同大大学院理工学研究科修士課程修了。大学院修了後、慶応義塾大学から出資を得てAISSY株式会社を設立。味覚や食べ合わせの研究を行う。通称「味博士」。
料理王国=取材、文
本記事は雑誌料理王国281号(2018年1月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は281号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。
記事提供:料理王国
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