フェラーリ

フェラーリの未来を担うモデル、296GTBはV6ターボエンジンにプラグインハイブリッドシステムによって、総合最高出力830PSを実現! その圧倒的な動力性能について、モータージャーナリストの渡辺敏史さんがリポートします。

電動化されたフェラーリの走りにモータージャーナリスト渡辺敏史さんも大満足!

フェラーリのまったく新しいスーパースポーツとなる296GTB。その車名は2.9lの6気筒とエンジンのキャパシティに由来します。スーパーカーブームを経験した紳士には懐かしく思われるのではないでしょうか。

フェラーリ
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(画像=296GTBのスタイリングは既存のフェラーリとは異質。特に、流麗でありながら力強いピラーやマッシブなリアフェンダーが構成する後半のフォルムは特徴的です。往年の名レーシングスポーツカー「250LM」をモチーフにしたとか。)

ん、待てよ? 6気筒?
と、頭の中で?が灯った方もいらっしゃるかもしれません。厳密にいえばほぼ3l、2992ccのV6ツインターボはこのクルマのために作られたオリジナルであり、フェラーリブランドとしては初の市販車用6気筒ユニットです。往年の名車である206〜246GTB系は実質的にフェラーリでありながら、創業者エンツォの息子の愛称、ディーノをブランド名に冠することで、ラグジュアリー系のニーズにも支えられていた12気筒モデル群とは一線を画していたんですね。

なぜ今、ここにきて6気筒なのか。最大の理由はエンジンの前後長を縮めて、ミッションとの間に生まれる隙間にモーターを挟み込みたいから。つまり296GTBはエンジンとモーターの両方が稼働するだけでなく、モーターのみでの単独走行も可能なプラグイン・ハイブリッドというわけです。今やスーパーカーのカテゴリーでも、環境性能をきちんと考えないと成り立たないご時世なんですね。
が、単にそれを制約による後退としないところがフェラーリの凄さです。既に2010年代以降はラ・フェラーリやSF90ストラダーレといった特別なモデルで電動化にまつわる研鑽を積んできたわけで、それを反映した296GTBでは、これまでの今までのV8ミッドシップに対しても、新次元といえるパフォーマンスを得るに至ってます。
象徴的なのは830psという強烈なパワーでしょう。これは663psを発揮するエンジンと167psを発揮するモーターとの合算となりますが、これ、直近の主力モデルであるF8トリブートに比べて実に110psの上乗せとなります。このパフォーマンスの一方で、135km/hまでの速度であればモーターのみで走行も可能。その走行距離は7.45kWhバッテリーの満充電時から最長25kmといいますから、話半分で見積もっても、自宅と街との往復をEVとしてカバーできるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

フェラーリ
(画像=次世代のフェラーリの心臓部は意外とコンパクト! なにしろ今までのフェラーリのエンジンより、2〜6気筒も少ないんですから。すなわちV6エンジンをツインターボで武装し、さらにモーターのパワーが加えて、システム最高出力はなんと830PSです!)

電気で走る音のしないフェラーリ。それって意味ある?
と、お思いの方もいるかもしれません。でも実際この手のクルマに乗っていると、音にまつわる気苦労って多いんですよね。地下の駐車場とかビルに囲まれた道路とか、そういうところで静かに振るまえたらそれに越したことはない。家から出掛けるにも朝や夜は憚られるし、日中でも行動が筒抜けになって困る。そういった悩みがモーター走行が可能になれば、まるっと解決してしまうわけです。

まったく新しいV6エンジンは、120度という市販車では類例のないバンク角設定。谷間にタービンを2基並列配置し、エンジン中央部から排気を抜くホットVと呼ばれるレイアウトを採用しています。
実はV6にとって120度というバンク角は、直列6気筒や水平対向6気筒と同様、発生振動を完全に相殺できる理想的なレイアウトとされています。が、わかっていながら他社が採用しない理由は、前置きにすると舵角が取れず汎用性が著しく低いからです。逆に後ろ置き専用エンジンと決め打ちできるならうってつけ、フェラーリにしてみれば120度にしない理由がないということになります。

296GTBの基本的立ち位置はハイブリッドカーですから、任意でモーターのみの走行を選択しない限り、このエンジンとモーターが常に連携しながら走ることになります。で、その際の両動力源の切り替えの素早さやスムーズさは想像を上回るものでした。もちろんエンジン本体の振動の小ささが効いていることは容易に想像できますが、加えてクラッチリンケージやマウント類のチューニングなどが巧く噛み合っているのでしょう。スポーツカーらしからぬ洗練されたマナーをみせてくれます。
加えて驚かされたのが乗り心地の良さです。街乗り領域から高速巡航まで、細かな入力をさらりといなしてピタッとフラットに走ります。さすがに大きな凹凸はバネの硬さで突き上げが現れますが、それも角が丸められていて痛さはありません。モーターのみで走る状況も考慮してか、小石の跳ね上げやタイヤのノイズも低めに抑えられているようで、車内は望外の快適さ。スマホとの連携も考慮されていますから、手持ちの音楽にも心地よく耳を傾けることができます。296GTBは大きなバッテリーを搭載している割にはストレージもしっかり確保されていて、従来のV8ミッドシップと遜色ない実用性が備わっていますから、泊りがけのツーリングくらいなら荷物の置き場に困ることはありません。

フェラーリ
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(画像=スポーツマインドを刺激するインテリアは決してスパルタンな印象ではなく、むしろラグジュアリーな雰囲気ムンムン。カーボンフレームのシートはしっかりと身体をホールドしてくれますが、それでいて乗り降りもしやすいのが魅力です。ちなみにメーターパネルはフル液晶で、ステアリングのスイッチで車両や走行の情報をスムーズかつ容易に表示します。)

と、ここまで日常性が高まっているのなら、走りは妥協しているのかといえば、さにあらず。ワインディングやクローズドコースでも従来のV8モデルとまったく遜色ない、もしくはそれ以上のパフォーマンスをみせてくれました。ポイントとなるのはここでもモーターの底力。特に低中回転域のトルク増強には効いているようで、シビアに回転数を合わせずともアクセル操作でグイグイとレスポンスしてくれます。一方でエンジンをガンガン回して走りに没頭したい時には、モーターは黒子に徹して足を引っ張るようなことはありません。2つの動力源をどう配して走るかについては、かなり丁寧に作り込まれているという印象です。

軽い重いの話をすれば、決して軽くはないクルマです。が、搭載する電池のおかげで重心も低くなっていますからハンドリングの安定度はむしろ従来より上がっている印象で、830psを後ろ二輪でしっかり受け止められている印象です。ハイブリッド化に伴い電子制御化されたブレーキ系統もその制動力をより緻密に余さず発揮するように躾けられています。そのブレーキングはリアエンジンのポルシェ911もかくやのパフォーマンスをみせてくれます。
そして296GTBでなんといっても痺れるのは音。120度バンク&ショートストローク設計でレッドゾーン8500rpmの高回転化を実現したV6の放つサウンドは、これまでのV8もかくやの魅惑的な高音を響かせてくれました。普通なら環境性能強化の代償としての薄味化を覚悟するダウンサイジング&電動化ですが、フェラーリにかかればかくもリッチに仕上がるものかと驚かされること、請け合いです。

フェラーリ

【フェラーリ296GTB アセットフィオラーノ パッケージ装着車】
アセットフィオラーノ パッケージはノーマルの296GTBに、「より本格的にサーキット走行を楽しむオーナーのため」のオプションを装着した仕様です。車両重量を12kg軽減する軽量化パーツや専用の空力パーツなどが装着されています。
●全長×全幅×全高:4565×1958×1187mm
●車両重量:1470kg
●エンジン:2.9リッターV型6気筒DOHCツインターボ
●最高出力:830PS(610kW)/8000rpm
●価格:¥36,780,000〜(税込)

Ferrari(フェラーリ)
https://www.ferrari.com/

文_渡辺敏史


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