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唯一無二のRRスポーツ ポルシェ911ヒストリー Vol.1

正真正銘のエンスーだけが分かる初代911はまぎれもないエンスーRRスポーツなのであった!〈901型〉

2022.03.28

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正真正銘のエンスーだけが分かる初代911はまぎれもないエンスーRRスポーツなのであった!〈901型〉

「ポルシェ」と聞いて気持ちが高ぶらないオトコがいるでしょうか!? しかも「911」が追加されれば、リッチなオジサンの股間…いや、胸が熱くなるのは間違いありません。そこで短期連載企画として、時代を超えてクルマ好きなオトコを魅了してきた911について、改めて紹介したいと思います。
第1回目は、911伝説が始まった初代911、すなわち「901型」を、あくまでもJ PRIMEの目線から解説します。

「フラット6・RRレイアウト・2+2クーペ」のスポーツカーが完成!

初代911…901型は正直言って、1967年生まれのJ PRIME戸賀編集長も、1963年生まれの筆者も、ちと時代がズレているんですよね。兄に連れられて映画館で観た『栄光のル・マン』の冒頭シーンで、故スティーブ・マックイーンが乗っていたのが911S(ブルーだっけ!? グレーだっけ!?)だったと記憶しているくらい。でも、私らよりもう少し世代が上のオヤジなら、あのオープニングシーンで鳴り響いたカァ〜ンというフラット6特有のサウンドに魅了されたコトでしょう。

ポルシェ911
1963年にフランクフルトモーターショーでプロトタイプがワールドプレミアされ、翌年に生産・販売を開始。車名を901から911に変更したのは、プジョーが「3桁数字の真ん中が0(ゼロ)なのは、俺らのルールだもんね」とクレームをつけたそうです。オヤジの薀蓄話にどうぞ。

さて、その911Sが登場するのは1970年のこと。初代911=901型が世に出たのは、遡ること7年前、1963年のフランクフルトのモーターショーでした。フォルクスワーゲンのパーツを数多く流用した356で高性能スポーツカーメーカーとしてその地位(人気も!)を確立したポルシェが、7年がかりの開発を行い、さらなる発展を期した新型車…それがこの901型です。
翌年、車名を911に変更して911「O」シリーズとして発売。4163×1610×1320mmというボディに搭載される水平対向6気筒エンジンは2リットルで、130PSを発揮していました。車両重量がたったの1095kgだったことを考えると、十分に速かったと思います(すみません、編集長も筆者も載っていないので)。

1965年には販売が本格化し、160馬力の911Sとタルガが生産を開始。その後1967年にAシリーズに移行し、スポルトマチックを追加。1968年にはBシリーズに移行し、ホイールベースを延長。翌1969年にはエンジンを2.2リットル化。1970年にDシリーズへ移行し、ついに1971年にはエンジンを2.4リットル化し、190馬力のEシリーズを発売。このようにポルシェはほぼ1年ごとに911ユーザーを侮蔑…じゃなかった魅了する新モデルを発売(昔も今も変わっていませんね。苦笑)。

ポルシェ911
1967年の911はスポルトマチック追加がトピックス。また、この年は前年に生産開始したルーフパネルとリアウィンドウが脱着できるタルガが、オープンカーの規制が強まったアメリカで大人気だったとか。

かようにたくさんある初代911の中でも、911ファンの憧れ、かつ垂涎のモデルが1972年発表のFシリーズ(…と言ってもピンと来ませんか)、1973年発売のカレラRS2.7…通称ナナサン・カレラでしょう。「カレラ」とはスペイン語で「レース」…’50年代前半にポルシェが活躍した「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」に由来する車名のモデルは、初代911の中でもダントツに有名!! 当時のFIAグループ4規定に基づくホモロゲーションモデルは、その性能、その希少性で911ファンはおろか世界中のカーマニアを虜にしました。その中にはJ PRIMEをご覧のクルマ大好きオヤジも、きっといたことでしょう。

ポルシェ911
1972年の911E。この頃になるとフロントエアダムが標準装備になっています。1967年でアメリカで人気を博した「脱着可能なリアウィンドウ」が、この年に全車固定式になってしまいました。世の中がどんどん安全性を意識し始めた時代ですな。

このナナサン・カレラの存在意義はパフォーマンスやプレミアム性だけではなく、ポルシェというメーカーに、いやクルマ業界全体にホモロゲーションモデルという「ビジネスケース」をもたらしたこと! 数年に一度(?)ボディやエンジンに大幅に手を加えた特別限定モデルをリリースする“商法”が、911ファンの物欲とセカンドマーケットの相場を煽り続けた結果、ナナサン・カレラの価格は今や6000万円をはるかにオーバーしています。

まぁ、逆に言えば「911はリセールバリューが期待できる」「911は投資にもなる」とも! 特別過ぎる1973年911カレラRS2.7はさておき、他にも狙い目の911はいろいろあります。例えばホイールベースが2271mmに延長されて操縦性が格段に改善された1968年911Bなんて良いですし、あるいはエンジンが2.4リットルに拡大されパワーが190馬力にアップし、それに伴ってマニュアルトランスミッション&クラッチが強化された1971年911Eなんてのはほぼ完成形と言えるんじゃないでしょうか。

ポルシェ911
言わずと知れた911カレラRS2.7。2.4リットルの911Sをベースにボディを徹底的に軽量化し、エンジンをボアアップして2.7リットルに拡大。シャシーもモディファイし、トレッドを拡幅しつつ、偏平・幅広ホイール&タイヤを装着。大きく膨らんだフェンダーとエンジンフード一体型のFRP製リアスポイラーが、当時(今も!)のカーマニアの琴線を刺激しました。

…ってな具合に、初代911には現代でも魅力的なモデルがめじろ押しですが、その中でも911の歴史に詳しいJ PRIME戸賀編集長が強く薦めるのが、実は1968年から1973年までカタログに載っていた低出力&廉価モデルの「T」です。いや、今「廉価モデル」と言いましたが、911Tって価格は確かに安いんですが、決して廉価版ではありませんでした。
レース活動に積極的だったポルシェがプライベーターたちに、レースマシンのベース者として提供していたのがこの911Tなのです。つまり、基本的にはハイグレードの911Sと変わりませんが、どうせレースの際には交換するパーツのみ簡素なものを装着しただけ。つまり、「走りを意識したモデルなのにハード過ぎないところが、イマドキのエンスーっぽいでしょ!」と、戸賀編集長は太鼓判を押しています。例えばセカンドマーケットで911Tを買って、当時のサーキット仕様に仕上げてもいいし、あるいは現代のパーツと技術でもっと速い911に仕上げるのもいいでしょう。911Tのセカンドマーケットの相場は600万円後半から(ナナサン・カレラの10分の1)なので、財布と相談しつつコンディションの良い911Tを探してはいかがですか!?

ポルシェ911
サーキット競技に参加するプライベーターのために、ポルシェが用意したのがこの911T。レースのために交換してしまうパーツをあらかじめ簡素な物を装着し、逆に捨ててしまう内装を初めから取っ払うことで価格を安く設定。だから、911Tは決して安いだけの廉価版ではないのです。

文 高 成浩

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