さらなるラグジュアリー、日本人独立時計師を知っていますか?
(画像=NorGal/stock.adobe.com)

時計というと国内外の有名ブランドの製品だけだと考えがちですが、プロフェッショナルな個人の技師が、アート作品のような時計を製作していることをご存じでしょうか。そうした技師には日本人時計師も大勢います。今回は彼らが生み出す「時計作品」の知られざる魅力を紹介します。

独立時計師とは?

独立時計師とは、英語では「Independent Watchmakers」と言い、企業やブランドに属さず、個人として時計製造を行う技師のことを言います。卓越した時計に関する製造技術を持ち、自らの名前をブランドとして掲げています。

「独立時計師アカデミー」(AHCI)という国際的な団体があり、数十人の独立時計師から構成され、日本の代表的な独立時計師もメンバーとなっています。しかしAHCIメンバーでなくても、独立時計師と見なされる人は増えているようです。

また個人だけでなく、小規模な独立系メーカーもIndependent Watchmakersと呼ぶケースもあり、厳密な定義があるわけではないようです。高級時計専門誌『クロノス日本版』では、独立時計師について「独立した資本で経営しており、小規模で、クリエーターの意志を反映したムーブメントを持っている」と定義しています。

いずれにせよ、ある種の工業製品として、日常に使う道具として、高い精度を持ち、さらに手作りのすばらしさ、芸術性なども兼ね備えた時計を世に出している人たちのことを指します。

日本人時計師3人

日本にも有名な独立時計師がいます。代表的なのは、菊野昌宏氏、浅岡肇氏、牧原大造氏の3人でしょう。3人ともAHCIのメンバーです。

・菊野昌宏氏
菊野氏は1983年生まれの38歳。専門学校で3年間時計の修理を学んだのち29歳の時、初めて自作の時計を販売しました。幼少のころより自動車の取扱説明書を擦り切れるほどに読み、高校卒業後は一時、自衛隊で小銃の修理を担当していました。自衛隊を除隊後は、専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジへ入学。卒業後も研究生として残り、時計製作を続けました。

フランクミュラーに所属したこともありますが、独立後は「和」のテイストを意識した独創的なデザインの時計を世に出し続けています。作品には「折鶴」「朔望」といった名前のものがあるほどです。

江戸時代に「万年時計」を製作した田中久重の影響から、手作業の製作を重視しています。コンピューターを使わず、工具や機械のみで外装を作り上げていきます。そして、ムーブメントは汎用機をベースにして、再設計・加工する手法を採ります。

菊野氏の時計は、受注生産で、通常の時計専門店で購入できません。安いものでも数百万、高いものですと数千万円の値段がつくこともあるそうです。

・浅岡肇氏
浅岡氏は1965年生まれの56歳。東京藝術大学デザイン科卒業後、時計師、プロダクトデザイナーとしてフリーランスで仕事をしています。顧客には各国の王室や世界的な時計コレクターが名を連ねています。

2009年に日本人として初めて超複雑機構・トゥールビヨン搭載の高級機械式時計を発表して話題となりました。トゥールビヨンは、超一流ブランドのみが製作できる高度で希少な機構で、機械式時計の精度を落とす原因となる姿勢差を自ら補正するシステムです。

浅岡氏はムーブメントの設計からパーツ製造、文字盤印刷などを一貫して自身で手掛ける「完全マニュファクチュール」として知られ、世界でも数人しかいない独立時計師として「トゥールビヨン ピュラ」「プロジェクトT トゥールビヨン」「ツナミ」「クロノグラフ」といった作品を世に出しています。シンプルな手巻きモデルも中にはありますが、それでも価格は数百万円となっています。

・牧原大造氏
牧原氏は、2019年に日本人として三人目のAHCIの会員となりました(準会員)。高校卒業後、調理の専門学校に進んだ後、8年間料理人として働いたあと、27歳のときに時計師の道に入りました。ヒコ・みづのジュエリーカレッジでは時計の修理を習得。その後、「時計の神様」とも呼ばれるフィリップ・デュフォー氏と出会い、独立時計師の道を志すこととなったのです。

時計製造と彫金の両方を手掛ける時計師で、時計の外装のみならず、ムーブメント装飾も行い、同時に技術も作業工程も異なる時計製造も自分で手掛けていくのです。

牧原氏のブランドである「DAIZOH MAKIHARA」は、日本の伝統工芸技術を全面に出していきます。「同じものが1つとしてない工芸品のようなオンリーワンのユニークピースとなるよう思いを込めて製作したい」というのが牧原氏のコンセプトであり、創作意欲の源泉であるようです。

独立時計師アカデミーの一員となった直後の作品では、日本の伝統工芸品で使われる江戸切子の技術を活用して、ガラスを細かく切り込んだ文字盤を持つ時計を作り出しました。ミツワ硝子工芸という会社にクリスタルガラスの上に江戸切子の細工を施すように発注し、バランスよく部品を配置し、まさに「クールジャパン」と呼びたくなる作品を生み出しました。

最高のラグジュアリー

いかがだったでしょうか。紹介した日本人時計師3人の作品はもちろん、世界中で活躍する独立時計師の作品は、時計という狭小な世界に、最高の技術を投入し、作家独自の感性を思う存分に注ぎ込んでいます。

もしこれらの作品を自宅に飾ったり、自ら身に着けたりできたなら、最高の贅沢(ラグジュアリー)でしょう。

購入するにはなかなか勇気がいると思いますが、作品を鑑賞するチャンスはどこかにあるはずです。そんなチャンスを探して情報を検索してみるのも一興でしょう。

文・J PRIME編集部

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