森美術館のアナザーエナジー展で感じる女性の力
三島喜美代展示風景 手前:作品 21-A 奥:作品 92-N(出典:森美術館)

東京・六本木の森美術館にて、展覧会「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力──世界の女性アーティスト16人」が2021年9月26日まで開催中です。

フェミニズムをはじめ、ジェンダー、人種、民族、信条といったさまざまな個々のアイデンティティの不均衡を批判し、ダイバーシティ(多様性)を尊重する動きは、近年になってますます盛んになっています。それは現代アートの世界においても該当すると言えるでしょう。

第二次世界大戦後の動乱を経て、現代アートの表現はさまざまな広がりを見せるようになりました。そんな中、あくまで男性目線で書かれた歴史や芸術の解釈、評価についての疑問が次第に生じるようになります。ジェンダー・イクオリティ(男女平等)に関するこれらの初期の運動は、まずは欧米を中心に始まりました。昨今はグローバルな議論にも発展していっています。こういった背景から、1950年代後半から70年代にキャリアをスタートさせ、そこから現在に至るまで精力的に活動を続ける女性アーティストたちに、今大きな関心が集まっているのです。

アートに向けられた強い意志と決意を感じさせる作品

本展では世界各地で挑戦をし続ける、70代以上の女性アーティスト16名に注目し、その活動にスポットを当てています。年齢は71歳から、なんと105歳まで。その全員が50年以上のキャリアをもちます。自らを取り巻く環境や時代が激しく変化し、美術館やアート・マーケットの評価や流行もめまぐるしく変わっていく中、彼女たちはそれらにとらわれることなく創作活動を続けてきました。そこから生まれる表現はモダニズムの発展だけでなく、時には各地の文化的伝統や社会情勢も反映したものなど多岐にわたりますが、どの作品にも共通して感じられるのはアートに向けられた強い意志と決意です。

世界14カ国からアーティストが参加

本展のアーティストたちの出身地は、日本、アメリカ、インド、エジプト、韓国など世界14カ国におよび、今現在の活動拠点もさまざまです。注目の参加アーティストのプロフィールを紹介しましょう。

スイス出身のミリアム・カーン(72歳)は、1970年代に反核運動やフェミニズム、パフォーマンス・アートなどの社会的動向に影響を受け、アーティストとしての活動をスタートさせました。ユダヤ人女性としての自らのアイデンティティー、差別や暴力などの社会問題、戦争と深く関わりながら、木炭によるドローイングや美しい色あいをたたえた油彩を制作しています。

ブラジルを代表するアーティストのひとり、アンナ・ベラ・ガイゲル(87歳)は、ブラジルの政治的混乱の中でポーランド系移民として西洋近代を経験。地図や写真、ポストカードなどを用いることで、大陸あるいは政治的な「境界」がそれぞれのアイデンティティーにどう影響してきたのかを再考し続けてきました。今回は版画やコラージュをはじめ、70年代に制作された映像作品も展示されています。

日本人アーティストからも2名が出展しています。大阪府出身の三島喜美代(89歳)は、1950年代の後半から、印刷物や廃品を用いたコラージュ、油彩など、実験的な平面作品を発表し、注目を集めました。1973年以降になると陶にシルクスクリーンで印刷を施した立体作品を制作。使い捨てができない陶にプリントされた新聞紙や空き缶という、表面と素材との間にある違和感には、当時から問題となっていた大量消費社会や情報化社会への批判が込められています。現在も大型のインスタレーションや立体作品を発表するなど精力的な活動を続け、さらに国内外での評価が高まっています。

森美術館のアナザーエナジー展で感じる女性の力
宮本和子 展示風景(出典:森美術館)

もう一人の日本人アーティストは、東京出身の宮本和子(79歳)です。1964年に現代美術研究所を卒業後、米国アート・ステューデント・リーグで学んだ後ニューヨークを拠点に活動を始めました。ミニマリズムに関する研究を続け、女性アーティストが設立したA.I.R.ギャラリーの活動にも参加しました。今回展示の細かな設計に基づくストリング(糸)を使用したインスタレーションの他、彫刻、パフォーマンスなど幅広いメディアで活動を続けています。

特別な力「アナザーエナジー」とは?

会場には16名による絵画、映像、彫刻、大規模インスタレーション、パフォーマンスなど130点を一堂に展示。個々のアーティストとしての活動や、これまで歩んできた人生の軌跡、さらに異なる背景をもつアーティストたちの作品に見られる共通点などにも触れながら、彼女たちを突き動かす特別な力である「アナザーエナジー」とは一体なんなのかを考える構成となっています。世界中がかつて経験したことのない事態に直面している今、16名の女性アーティストたちが自らの信念を貫きながら歩みを止めない姿は、この困難を乗り越えながら未来に向けて新たな挑戦するためのパワーを与えてくれることでしょう。

アナザーエナジー展:挑戦しつづける力──世界の女性アーティスト16人
会期: 2021.4.22(木)~ 9.26(日)会期中無休
開館時間:10:00~20:00(最終入館 19:30)
※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)
※最新情報は公式サイトを要確認
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)

文・J PRIME編集部

>>会員登録して限定記事を読む

【関連記事】