チームラボと草間彌生が光の祭典に参加 なぜ日本のアートは世界の心を捉えるのか
チームラボの展示作品「花と人 - A Whole Year per Hour / Flowers and People - A Whole Year per Hour」(提供:ヌール・リヤド)

サウジアラビアで6月まで開催された光とアートの祭典「ヌール・リヤド」に、世界的なアーティスト60人以上が参加し、そこに日本からチームラボと草間彌生も参加しました。なぜ日本のアートが評価され、世界の人々の心を打つのでしょうか。日本の2アーティストを招致した担当者に聞きます。さらに、コロナ禍やNFT(非代替体制トークン)によるアートと世界の在り方の変化について展望します。

世界で評価される日本のアート

ヌール・リヤドは、リヤド市にライトアート作品を集めた芸術祭。サウジアラビア国内に加え、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、アメリカ、中国などからアーティストが参加しています。街を壁のないアートギャラリーにするというプログラム「リヤド・アート」の一環です。

コンセプトは、世界が1つの空の下にあるとする「アンダー・ワン・スカイ」。リヤドの変革を象徴するものとして、2030年までに世界で最も競争力があり、住みやすい都市の1つになるという思いを込めています。国際的に活躍するダニエル・ビュラン、カールステン・ヘラーなどに加え、日本からはチームラボと草間彌生が選ばれています。グローバルのコミュニティが一堂に会し、創造表現に火をつけ、包括的な文化を創造する狙いがあります。

ダニエル・ビュランの作品「Colored Triangles by Myriad」(提供:ヌール・リヤド)
ダニエル・ビュランの作品「Colored Triangles by Myriad」(提供:ヌール・リヤド)
チームラボと草間彌生が光の祭典に参加 なぜ日本のアートは世界の心を捉えるのか
カールステン・ヘラー「LightWall(OutdoorVersion)」(提供:ヌール・リヤド)
チームラボと草間彌生が光の祭典に参加 なぜ日本のアートは世界の心を捉えるのか
ロバート・ウイルソン「PALACE OF LIGHT」(提供:ヌール・リヤド)

ヌール・リヤドのアーティスティックディレクターを務めるスマントロ・ゴース氏は「コロナ禍の中で、世界の人々が一体感を持つアンダー・ワン・スカイのコンセプトが重要と考えており、日本のアーティストにも参加してもらいたかった」と話します。

ゴース氏に話を聞きます。

――チームラボと草間彌生さんの作品を選んだ理由を教えてください。

ゴース氏:絵画、彫刻、壁画、さらに高度なデジタル技術を用いた作品がある中で、デジタルアート分野の先駆者であるチームラボの参加が不可欠でした。また、没入型で体験的な作品を探しており、草間彌生さんの作品がマッチしたのです。この2人のアーティストはアプローチが異なるものの、インタラクティブ(双方向)性を持っているという共通点があります。

チームラボと草間彌生が光の祭典に参加 なぜ日本のアートは世界の心を捉えるのか
(ヌール・リヤドのアーティスティックディレクターを務めるスマントロ・ゴース氏)

日本の文化は伝統的である一方で、超未来的でもあります。2人の作品はテクノロジーとの密接な関係を持っています。いまや光の芸術は、テクノロジーの進歩の最先端にあります。

チームラボは、ユニークなアルゴリズムと技術を活用する最先端にある集団です。チームラボの作品は「花と人-A Whole Year per Hour」。花々が1年にわたり移り変わる様子を、コンピューターのロジックを使って1時間で描き続けるというもの。人々の行動の影響を受けてそれを反映しながら、絵が絶えず変化を続けます。ゴッホとモネを意識した作品ながら、同じ絵を2度見ることはできないのが特徴です。

チームラボのアートワークには繊細さがあります。色やスクリーンパネルの使い方は、浮世絵や17世紀のアートを思わせます。花の使い方は日本文化と非常に関係のある美学を感じ、間違いなく日本人のアプローチです。現代にありながら歴史とリンクしているのです。

日本文化に関して私が知っているところによれば、デザインの原則が日常生活の一部になっています。お弁当箱の中のおかずの配置を見ても、物事が相互に接続されており、非常に美しいデザインの美学に基づいています。

一方、今回の草間彌生さんの作品は、1960年代のポップアートを参照していますが、どの物体、場所、寸法、水や光の使い方も、日本のデザインの美学を持ち合わせています。一方で、アニメなどの大衆文化における日本人のアプローチも含まれているのも特徴です。

チームラボと草間彌生が光の祭典に参加 なぜ日本のアートは世界の心を捉えるのか
草間彌生さんの展示作品「Infinity Mirror Room-Brilliance of Souls, 2014, Light Upon Light」(提供:ヌール・リヤド)

チームラボが考えるコンセプト

2001年から活動を開始したチームラボは、集団的な創造により、アート、サイエンス、テクノロジー、自然界の交差点を模索している国際的な集団といわれています。アーティスト、プログラマー、エンジニア、CGアニメーター、数学者、建築家などさまざまな分野のスペシャリストから構成されています。

東京・お台場の森ビルデジタルアートミュージアムや上海、マカオ、マイアミなど世界中で、光を用いたアート作品を展開していることで知られています。ヌール・リヤドへの出展について、チームラボに話を聞きました。

――チームラボは、デジタルアートによるアートと人との新しい関係性を模索することで、人々と世界との新しい関係を模索するとしていますが、今回の出展をどのようにとらえていますか?

チームラボ:デジタルテクノロジーの登場前は、表現は紙とインクといった物質に縛られていました。しかし、デジタルテクノロジーによって表現や情報は物質から解放され、表現や情報単独で存続できるようになったのです。それにより、人々のふるまいなどの変化を自由に表現できるようになりました。

つまり、作品を鑑賞者に対してインタラクティブにすることで、鑑賞者が作品へ参加するようになります。今回の作品は、前例のないほどインタラクティブな作品に仕上がりました。

作品はコンピュータプログラムによってリアルタイムに描かれ続けます。鑑賞者が作品に近づくにつれて、自分の存在によって作品が変化していることがわかり、自分自身と作品との境界がなくなっていくのを感じられます。1時間を通して1年間の花々が移り変わっていく。花々は生まれ、咲き、やがては散り、枯れて死んでいくことがアートの中でイメージできます。自然と人間は対立した概念ではなく、心地良い自然は人の営みも含んだ生態系であることを示しているのです。

従来のアートでは、他の鑑賞者は邪魔な存在と受け止められてきました。展示会場に他の鑑賞者がいなければ、「ラッキー」と思ったのではないでしょうか。しかし、チームラボの展覧会では、他者の存在をポジティブなものと捉えられるようにしています。チームラボのアート作品は「境界のない世界」の美しさを体験してもらうことを追求しています。

残念ながら、コロナ禍によりチームラボとしてリヤドに渡航することはできませんでした。できることならば、来場者の反応を自分たちの目で確認したかったのですが、作品の背景にある私たちのメッセージは普遍的であり、展覧会のコンセプトとも関連しています。来場者はきっと楽しんでくれたと確信しています。

コロナ禍、NFTの登場で変わるアートと人々の関係

コロナ禍により、世界の人々は何気ない日常の貴重さを改めて知ることになりました。アートの世界にも、影響は及んでいます。前述のゴース氏は「視覚芸術と現代美術において、パンデミックは壊滅的な影響を与えました。屋外で光の芸術作品を展示するアーティストの多くは、世界のライトアートの展示会に依存しており、ほとんどがキャンセルになっています」と説明します。コロナ禍は、アーティストの存続自体を揺るがす大きな影響を与えたのです。

一方で、いまアーティストにとって、一筋の光になるかもしれない動きが出てきています。それがブロックチェーン(分散型台帳)をベースに、デジタルで作成したアート作品や音楽を資産として扱うNFTです。

改ざんが難しいブロックチェーンを使い、作者や所有者の情報を示す「証明書」を発行する技術です。アート作品などのデジタルデータと連携させることで、「本物」であると証明できます。NFTによって作品が本物であることを未来にわたり証明し続けられることで、アーティストは作品の最初の販売時だけでなく、転売された場合も一定割合の金額を受け取れる可能性がでてきているのです。

2021年3月には、アメリカのツイッター社の創業者ジャック・ドーシーの初めてのツイートが、NFTの作品としてオークションにおいて3億円で落札されたことが話題になりました。ただし、売買手段となる暗号資産(仮想通貨)の上昇傾向を背景に、既にバブルの要素を呈しているのが、現在のNFTの課題となっています。

独自文化に根ざす日本のアートへの評価と世界に訪れるアートの新たな動き

ここまで、世界的なアートのイベントにおいて、日本のアーティストの作品が高く評価されていることを紹介しました。一方で、コロナ禍やNFTの登場などで、世界のアート自体が新たな方向に動き始めている事情も見えてきました。

チームラボや草間彌生に限らず、このような変化の中で、日本のアーティストがどのように対応していくのか、注目していきたいところです。

文・J PRIME編集部

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