〈晴れた日〉1974年 東京都写真美術館蔵 From the series A Fine Day, 1974, Collection of Tokyo Photographic Art Museum
〈晴れた日〉1974年 東京都写真美術館蔵 From the series A Fine Day, 1974, Collection of Tokyo Photographic Art Museum

日本を代表する写真家、篠山紀信の大規模な回顧展が開催中です。本展は、昭和の時代をとらえた篠山氏の写真集『晴れた日』を軸に、116点の作品を展示。初期の代表作や、昭和から平成、令和への移り変わりの中で、急速に変化してきた東京を捉えた作品など、見どころ満載です。

写真家・篠山紀信の生い立ち

篠山紀信は日本で最も有名な写真家の1人です。1940年生まれの81歳、東京都新宿区出身。日本大学芸術学部、東京綜合写真専門学校で学び、大学在学中に広告制作プロダクションに入社。APA賞など数々の賞を受けるなど華々しいデビューを飾っています。

ヌードから歌舞伎まで多様なジャンルの被写体を作品にし、有名女優のヘアヌード写真で世間を驚かせたと思えば、北海道から沖縄まで、日本列島約80ヵ所に上る、日本の家のさまざまな様相を記録するといった業績も残しています。週刊誌や月刊誌の表紙写真のほか、生前のジョン・レノンが手掛けたラストアルバムでは、ジャケット写真も担当しています。

このように、篠山紀信という写真家は、商業的な用途の「商品」も生み出しつつ、定期的にしっかりとアートの分野に踏み込んだ作品も残しており、まさに時代が生んだ偉大な表現者と言えるでしょう。

展覧会「新・晴れた日 篠山紀信展」とは

東京都写真美術館で開催されている『新・晴れた日 篠山紀信』 は、篠山紀信にとって初となる大回顧展です。今も現役の芸術家の「回顧展」というのは少し不思議な感じもしますが、それだけ篠山の業績が膨大であり、大きな影響力を与えているということでしょう。

晴れた日というのは1974年の雑誌「アサヒグラフ」での連載作品をベースにした写真集で、長嶋茂雄やオノ・ヨーコ、リチャード・ニクソン、輪島功一といった有名人を被写体とした作品だけでなく、昭和という時代における社会の動きを鋭敏かつ広範に捉えたものも数多く掲載しています。この作品は篠山渾身の写真集として評価されており、表現者としてのスタート地点とも言えます。

新・晴れた日というネーミングからも分かる通り、この回顧展は、晴れた日を基軸に構成したものです。二部構成で116点の作品を展示し、彼がいかにして写真家の枠を超えた表現者として知られるようになったのかを探索できる展示となっています。

新・晴れた日の注目作品

新・晴れた日に注目してみましょう。

第1部は、1960年代から1970年代まで、晴れた日をはじめとした主要作品で構成しています。『誕生』は、雑誌「カメラ毎日」に掲載された初期の代表作の1つで、沖縄返還前の日本において最南端だった、奄美の徳之島で撮影されたものです。

1976年のヴェネチア・ビエンナーレにも出品された『家』は、月刊誌「潮」の1972年1月号から1975年12月号まで連載した作品群です。撮影は北海道から沖縄で行われ、農村地域の住宅や北九州の筑豊炭鉱の廃虚、東京のアパートなど時代の流れとともに消えつつある日常に注視しています。居住者の痕跡を照らし出したこの作品で、1976年のヴェネチア・ビエンナーレ日本館の代表作家に選出されました。また、雑誌「明星」の表紙も、同時期の篠山の活躍を示す原点と言える仕事の1つで、1970年代にアイドルという新しい文化を生み出しました。

第2部は1980年代以降、変化する東京の姿を捉えた作品などで構成されています。昭和の終わりから平成にかけて膨れ上がったバブル経済以後、令和に至るまでの30年余りにわたり、急速な変化を遂げてきた東京の姿を捉えたのが『TOKYO NUDE』です。複数のカメラを連結させて、一斉にシャッターを切る篠山によるジョイント写真の技法を伝えます。写真の技術に加えて、モデルの手配やメーク、ライティングなど膨大な労力を費やしたそうです。

2011年5月から秋まで4回にわたり、東日本大震災の被災地を訪れて撮影したのが『ATOKATA』です。東日本大震災の被災地に赴き、撮影。津波で倒壊した建物や打ち上げられた漁船など、恐るべきエネルギーとともに、包み込むような優しさを持つ自然の姿をとらえています。

会場では撮影エピソードなどインタビュー映像も

会場では、展示作品だけでなく、撮影エピソードを語るインタビュー映像なども見られます。思いがけない逸話や秘話と出会えるかもしれません。

「カメラマンは自分の生きている時代しか撮れないのだから、これは僕にとって時代を複写していることにほかなりません」と語る篠山紀信。回顧展では、さまざまな「時代のドキュメント」を総覧できるはずです。

新・晴れた日 篠山紀信
会期:2021年5月18日(火)〜8月15日(日)
会場:東京都写真美術館 3階展示室(第1部)、2階展示室(第2部)
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
開館時間:10:00〜18:00 (入館は閉館30分前まで)※当面のあいだ木・金曜日の夜間開館は休止
休館日:月曜日 ※月曜日が祝休日の場合は開館、翌平日休館
観覧料:共通チケット 一般 1200円、学生 950円、中高生・65歳以上 600円 ※第1部もしくは第2部のみ 一般 700円、学生 560円、中高生・65歳以上 350円
※内容は変更となる場合あり(東京都写真美術館ホームページから日時指定予約を推奨)

文・J PRIME編集部

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