毎月1本、季節の旬の食材によく合う日本ワインをご紹介。セレクトするのは、日本ワインに特化した定期イベント「LIFE with WINE」を主宰する栁 佐織さん。「今回は、日本ワインの新たなる銘醸地として注目される、北海道のさっぽろ藤野ワイナリーによるシャルドネをご紹介します」

条件が厳しいからこそ生まれた、希少で良質なシャルドネによるワイン
夏に降雨量が少なく、湿度も低い北海道は、ブドウの栽培に適している土地として、ワイン用ブドウの収穫量や栽培面積を急速に伸ばしています。ワインの生産量においては山梨、長野に続く3位となり、世界からも注目を集めているのです。ただし今まで栽培されてきたのは、ケルナーやミュラートゥルガウ、ツヴァイゲルトレーベなどの比較的寒冷地に適しているブドウ品種が主流でした。シャルドネやピノ・ノワールといったメジャーなブドウ品種が増えてきたのは最近のこと。今回紹介するのは、北海道産のブドウにこだわり、体に優しいワイン造りを志している「さっぽろ藤野ワイナリー」の「藤野シャルドネ」です。
お酒が好きだけれどあまり体が強くなかった弟のために、身体に優しいワインをつくりたいと、オーナー姉妹が2009年に「さっぽろ藤野ワイナリー」を設立。なるべく添加物を使わず、野生酵母と無濾過による醸造をおこなうワイナリーです。
ワイン用のブドウに関しては、自社畑と契約農家によって丁寧に育てられた北海道産ブドウに限定。現在醸造を担当している秋元崇宏さんによると、「ワイナリーは札幌の南西部に位置する山間部にあって、標高は220〜250m。北海道の中でもブドウの栽培が盛んな余市や空知と比較すると条件は厳しいほうです。霜が10月の下旬には降りてしまうので、収穫時期の見極めを栽培担当とすり合わせるのが難しくて」。本来はギリギリまで熟すのを待つほうが、ワインとなった時に複雑で深い味わいが生まれるのですが、時期を逸して枯らしてしまっては元も子もないのです。「でも2019年のシャルドネは、初めて栽培側と醸造側と同じ方向を向いて収穫時期を決めることができ、今までにないほど上質なワインを造ることができたんです」
北海道のシャルドネは酸味が特徴的。「酸には2種類あって、未熟な青さのある酸と、果実本来の良質な酸。良質な酸はしっかり熟さないと生まれにくいので、北海道ではどうしても難しいんです」と秋元さん。北海道のブドウの樹は春先の雪の重みで樹が折れないように斜めに植えられていて、秋には樹を倒して冬の間は雪の中に埋め、春には樹を起こすという大変な作業があるのです。本州と比較しても非常に冷涼で積算温度も低く、ワイン用ブドウを多く栽培している広大な北海道とはいえ、シャルドネに至っては、ほかの銘醸地に比べると高品質なものを収穫するのはかなり厳しい。「でも、果実はストレスを感じるほうが美味しくなる。作業は多いけれど、丁寧に育てればそのぶん凝縮感や洗練されたワインの味を追い求められると思っています」
良質なブドウから造られた藤野シャルドネは、きれいな酸味に加え、ほんのりミネラルと塩味を感じるスッキリとしたエレガントな味わい。白身魚やイカやエビ、北海道のアスパラやとうもろこしなどをフリットにして、塩で食すとワインが止まらなくなる、ベストマリアージュです。
Wine of the month

The perfect glass for this wine

WINE MAKER

秋元崇宏さん
さっぽろ藤野ワイナリー
北海道札幌市南区藤野670-1 ☎︎011-593-8700 http://www.vm-net.ne.jp/elk/fujino/index.html
SELECTOR
https://www.facebook.com/LIFEwithWINE/
撮影/相沢千冬 企画編集・文/横山直美(cat)
※記載の価格はすべて税込表示です。