世界に誇る日本のファッション文化を辿る、「ファッション イン ジャパン」が開催
(画像=okrasiuk/stock.adobe.com)

日本人が生み出してきたファッション文化は、その独自性によって歴史の中で世界から注目されてきました。この数年で世界中に広がった、日本の“kawaii(かわいい)”文化はその好例と言えるでしょう。

2021年6月に開催される展覧会「ファッション イン ジャパン」では、世界に誇る日本のファッション文化の変遷をたどることができます。この記事では展覧会の見どころを紹介しながら、日本のファッション文化の独自性や、その展望について探っていきます。

世界に誇る日本のファッション文化

戦後復興から立ち上がり1970年代になると、日本人デザイナーの高田賢三、山本寛斎らが国内外でコレクションを発表し、高い評価を得るようになります。日本のファッションは彼らの登場を契機に、突然生まれたかのように言われることがありますが、実際にはそうではありません。

明治期以降、洋服と和服を使い分けていた時代を経て、第二次世界大戦後に洋装が一般的になり、現在に至るまで変化を遂げてきました。そういった日本のファッションを包括的に紹介する展覧会「ファッション イン ジャパン 1945-2020―流行と社会」が国立新美術館で、2021年6月9日~9月6日に開催されます。

「ファッション イン ジャパン」の注目すべきポイント

ファッションには時代が反映されます。同展は、デザイナー、消費者、メディアという3つの軸から、各時代のファッションを社会現象とともにひも解いていく構成となっています。デザイナーは、衣服に加えて、写真、映像といった媒介物を通して流行を発信してきました。消費者はその衣服をまとい、時に流行の源になり、そしてメディアは両者をつなぐ役割を担ってきたのです。

国内屈指の服飾コレクションを持つ島根県立石見美術館、神戸ファッション美術館の2館をはじめ、アパレルメーカーからの協力を得て、各時代のアイコンとなった作品や資料も展示します。

もんぺからサステナブルまで

ファッション イン ジャパンの展示では、時代とともに移りゆく日本のファッション文化を辿っていきます。実際に、予定されている展示構成に従って、その変遷を紹介しましょう。

まずファッション イン ジャパンの始まりは明治期まで遡ります。近代化政策として洋装が取り入れられるものの、装いの中心は和服のままでした。しかし、1920年代以降、「モダンガール」と呼ばれる人々が現れ、その存在が注目を集めるようになります。戦時下でのもんぺの普及を経て、戦後になると洋裁学校で仕立てを習うのが流行。そこで学んだ女性たちが、洋服を自作するようになり、全国に普及していきます。

そして、好景気で中産階級が増えると、消費拡大が起こります。1964年の東京五輪を機にカラーテレビが普及すると、発信力の中心がテレビになります。さらに、既製服の大量生産が可能になり、洋服は仕立てるものから買うものへと変化していきます。ロンドン発の若者文化が日本に到来し、濃いアイメークやミニスカートなどが流行し、若い男性にアメリカの大学生を模した「アイビー」が広がったのもこのころです。

70年代になると、冒頭に挙げたような若手日本人デザイナーが海外コレクションに登場します。日本の経済成長が頂点となった80年代には、デザイナーの個性を打ち出した日本のメーカーブランド、いわゆる「DCブランド」を身にまとう人たちが街中にあふれました。スポーツウエアやボディコンシャスなシルエットが流行。また、低価格で高品質を追求したブランドも登場するなど、ファッションは多様化します。85年には「東京コレクション」が開催され、日本発のファッション熱はいっそう高まります。

1990年代初頭のバブル崩壊後は、原宿のキャットストリートに並ぶ人気店のファッションを取り入れた「裏原系」や女子高生ブームなど、主役は街の若者になっていきます。インターネット黎明期の90年代後半は、ストリートスナップ専門誌やコギャル向けなど、対象を細分化した雑誌が誕生しました。

読者モデルが影響力を持ち、ファッションリーダーとなっていくなど、メディア史としても興味深い時代に突入します。日本発の「Kawaii」カルチャーが世界でも注目され、ビジュアル系バンドがけん引した「ゴシック」や「ロリータ」など、西洋ルーツのファッションを日本の若者が独自に解釈したスタイルや、「モテ」を意識した服装が流行しました。

こうして振り返るだけでも、懐かしいファッションワードがたくさんあり、当時の衣装を鑑賞しながら思い出に浸るだけでも、十分に楽しめそうです。

2011年の東日本大震災後は、環境への負荷が少ない「サステナブル(持続可能)」な社会が求められるようになります。いわゆる「丁寧な暮らし」と呼ばれるライフスタイルが登場しました。また、景気へのダメージが深まったことから、低価格の衣服で最先端の流行を楽しめる「ファストファッション」が台頭し、存在感を増していきました。

どうなる? これからの日本のファッション文化

現代は、SNSやオンラインメディアの普及などによって都心と地方の情報格差が縮まってきています。ECサイトを使えば、最新の流行を意識した衣服を手軽に購入できるようになりました。こうした環境の変化を背景に、消費サイクルが早まる一方で、サステナブルであることを常に意識するべき時代になっています。

そこにきて、人々を直撃したのが今回のコロナ禍です。世界中が経験したことのない事態を迎える中で、日本のファッションが今後何を提案していけるのかが問われています。日本のファッション文化を振り返るファッション イン ジャパンの試みは、現在、そして未来のファッションと社会のありようについて再考する機会になるでしょう。

文・J PRIME編集部

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