デジタル教科書がもたらす学びの場。「全児童に1台」時代到来のインパクト
(画像=RobertKneschke/stock.adobe.com)

政府のギガスクール構想では、2023年度までに義務教育段階にある小学1年生から中学3年生に対し学習用端末を1人1台導入していくことが掲げられています。政府の調査では2020年度終わりには、ほぼ90%近い自治体で端末が行き渡り、2021年の9月頃から、タブレットを使用した授業が始まる予定とのことです。その中で注目されているのがデジタル教科書の導入に向けた動きです。今回は、デジタル教科書の導入によるメリット、デメリットを解説します。

デジタル教科書とは

デジタル教科書とは、タブレットやノートパソコンで見ることができる教科書のことです。現時点では、紙の教科書と内容は同じ、ということになっています。しかし内容に変わりはなくとも、デジタルならではの特性があります。

本文や図版の拡大やテキストの読み上げが可能、さらに配色やフォントの変更ができ、QRコード等を利用しリンク先を設定できます。地図も地域を指定し、拡大して見られますし、教科書の画面上に自分でマーカーをつけて内容を整理できます。

黒板機能を使って本文からポイントを抜き出し、整理して友達との話し合いに活用することもできます。黒板機能では、デジタル教科書にペンツールで気づいた点を書き込みながら、教科書の内容を部分的に抜き出し、自由に並べ替えたりすることもできるので、試行錯誤しながら学習できます。ペンツールでグラフを書く場合も、何度でも簡単にやり直せるのです。

現在の普及状況

ではデジタル教科書の普及率はどれくらいなのでしょうか。文部科学省の調査によると2020年3月時点で学習者用デジタル教科書を導入した小中学校は8.2%にすぎません。指導者用デジタル教科書は小学校で56.6%、中学校で61.4%(平成30年度:文部科学省調査)とかなり普及しているのですが、生徒向けはまだまだ、というのが現状のようです。

これはタブレットやノートPCなど端末の普及率が影響していると考えられます。端末普及率は今後加速度的に増加していくことが期待できるので、デジタル教科書もそれにともなって普及していくでしょう。

デジタル教科書のメリットとデメリット

デジタル教科書のメリットは、前述したように便利な機能満載な点にあります。さらに学習ログを用いて、各生徒の学力を分析できることも利点です。教科書を利用するパターンや、機能の利用頻度などを分析すれば、個別指導もしやすくなります。また、分析結果に沿って教科書の内容を継続的に改善していくことも可能です。

デジタル化することで重い紙の教科書を持ち歩く必要もなくなり、生徒の発育に好影響をもたらすかもしれません。

デメリットとしては「端末の画面に生徒が集中しすぎてしまい、仲間や教師の方を向いてコミュニケーションをとることが減る」「視力低下の誘因にならないか」「セキュリティ管理や故障対応が難しい」などの意見が出ているようです。

デジタル教科書をより効果的に教育に生かすための教師側のスキルが問われるとの意見もあります。セキュリティや故障対応なども含めて、教師側のサポートも今後重要になるはずです。

大学入試がコンピュータで行われる?

今後は、大学入試も紙ではなくコンピュータで実施するケースが出てくると指摘されています。デジタル教科書による学習によって、Computer Based Training(CBT、コンピュータを利用した学習)に慣れ親しんでおく必要があるという意見も出ています。

このように考えていくと、中学・高校では一部のテストがコンピュータで実施するような動きが出てきても不思議はないでしょう。

現在は「デジタル教科書の利用は授業の2分の1まで」と制限がありますが、これも撤廃する方向で話が進んでいます。視力の低下などの課題も指摘されていますが、全体的な流れとしては、時間をかけながらCBTに慣れていくことを推奨する方向にありそうです。

新しい学習環境について子供たちと話し合おう

では今後デジタル教科書の普及率はどうなっていくのでしょうか。大方の予想では、GIGAスクール構想のスピードアップも手伝って、2024年にはデジタル教科書100%に達するのではないかという予測もあります。政府は、デジタル教科書の本格導入後の2025年度末までに小中学校で100%の普及率にすることを目指しています (経済財政諮問会議「新経済・財政再生計画 改革工程表2020」から)。

デジタル教科書導入の予算を政府は前年度と比較して大きく増額させており、この予測はあながち大げさなものでないでしょう。

親世代からすると、自分が経験したことのない環境で、子供たちが学習をしている時代が現実となりつつあります。どんな効果があるのかを大人の視点で考えるとともに、新しい学習環境について、子供と話してみることも大切になりそうです。

文・J PRIME編集部

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