働きながら休む“ワーケーション”。導入企業が広がり、いよいよ日常に?
(画像=theeraphong/stock.adobe.com)

コロナ禍によりテレワークが定着しました。出社を基本に戻す会社も出てきていますが、週5日間の出社が当たり前だったころを考えると、隔世の感を持つ人もいるでしょう。働き方が大きく変わる中で、働きながら休暇を取る“ワーケーション”という言葉も耳にするようになりました。この記事では、一部企業で実証実験が進んでいるワーケーションの実態と、その展望について解説します。

実証実験が進む、ワーケーションとは?

テレワークとともに、たびたび耳にするようになったのが、“ワーケーション”という言葉です。「Work(仕事)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた造語で、地方やリゾート先など、普段の職場とは違う場所で働きながら休暇を取得する、あるいは休暇と併用しながら、旅先で業務に就きながら滞在することを意味します。

従業員にとっては、労働環境や勤務時間が自由に選べる、ハイシーズンを避けることで旅費がおさえられるなどのメリットがあります。一方、企業側にとっては、従業員の休暇取得推進、企業イメージアップによる優秀な人材の確保などにつながります。さらに、ワーケーションを受け入れる側にとっても、来訪者の拡大による新たな産業の誕生や地域の活性化が期待できます。

また、NTTデータ経営研究所、JTB、日本航空は、慶應義塾大学・島津明人教授監修のもとワーケーションの効果検証実験を実施しました。すると、次のような結果が得られたといいます。

・仕事とプライベートのメリハリがつくようになる
・情動的な組織コミットメントが12.6%向上する(従業員の会社に対する情動的な愛着や帰属意識を促進し、パフォーマンス向上にも寄与)
・仕事のパフォーマンスが20.7%上昇する
・仕事のストレスを37.3%低減させる
・運動量が2倍程度に増える

上記のように、ワーケーションが仕事の生産性・心身の健康にポジティブな効果をもたらすことがわかってきています。

求められる企業側の理解と制度の整備

ワーケーションはメリットばかりではありません。テレワークにも共通することですが、従業員にとっては社内コミュニケーションの取りづらさ、オン/オフの切り替えの難しさなどが課題になってきます。

また、企業側の制度整備と理解も課題です。ワーケーション導入のためには、労務管理やマネジメントのための環境整備、セキュリティ面の強化など、多大なコストがかかることが予想されます。さらに侮れないのが、管理側の意識改革です。旧態依然とした上長であった場合、たとえ少しの過失だったとしても、「休みながら仕事をしているせいだ」と安直に低い評価をしてしまうことも考えられます。ワーケーションの導入にはこれらをクリアすることが不可欠です。

受け入れ側の体制と仲介役の存在が鍵

愛媛県では2020年10月、全日本空輸(全日空)グループと連携し、ワーケーションの誘致に取り組むことを発表しました。首都圏の企業などに八幡浜と宇和島の2つのコースで、みかん狩りやサイクリングなどを楽しみながらの働き方を体験できるモニターツアーを行うことを検討し、今年度からの本格実施を目指します。今後、他の地方自治体がどこまでこれに追随するのか、動向が気になるところです。全日空では既に、石川県、徳島県などでのワーケーションツアーの募集も行っています。

また、ワーケーションを検討している企業と受け入れ側双方をつなぐ動きも出ています。JTBは2021年4月、企業向けのワーケーション総合情報サイト「WOW!orkation STORY(ワオケーション ストーリー)」をスタートしました。ワーケーション制度や試験導入について企業に提案するとともに、ワーケーションを検討している企業と受け入れ側のニーズを共有させることで、最適なマッチングの支援を目指すものとなっています。

週休3日制の議論も

テレワークやワーケーションとともに議論が始まっているのが週休3日制です。厚生労働省の2020年の調査によれば、週休を3日以上としている企業は8.3%で、2010年の3.9%の2倍以上となっており、みずほフィナンシャルグループ、ファーストリテイリング、ヤフー、東芝などが導入しています。

現在のところ、ごく一部の大手企業が中心ではありますが、今後は中小企業でも広がっていくかもしれません。3日間の休日を絡めることで、より長くワーケーションの期間を取れますので、遠方にも足を伸ばしやすくなると考えられます。

コロナ禍で変わる働き方

コロナ禍を機に、図らずも急速に変化しつつある日本人の働き方ですが、どんな物事にも必ずメリット、デメリットはあります。週休3日制にしても、「給与が減る」「1日あたりの労働時間が増える」などの落とし穴があり得ることを見落としてはいけません。

働き方改革やワークライフバランスなど、時代に応じた新しい仕組みを積極的に取り入れていきたい一方で、従業員として、あるいは経営者として、それが本当に意義のある取り組みなのかを、実態を踏まえて慎重に判断しておきたいところです。

文・J PRIME編集部

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