アート界が注目する技術「NFT」。芸術の新たな可能性とリスクとは?
(画像=sdecoret/stock.adobe.com)

ブロックチェーン技術の1つであるNFT(非代替性トークン)が話題を呼んでいます。この技術が影響を及ぼす領域の1つがアート界と言われています。現代アート作家の村上隆もNFTに注目、サザビーズもNFTオークションを開始するといったトピックを交える一方、被害が発生するリスクも指摘されています。本記事ではNFTアートを、新たな可能性とリスクの両側面から解説します。

NFTとは何か?

NFT(Non-Fungible Token)とは日本語で「非代替性トークン」と訳されています。ブロックチェーンと呼ばれるデジタル台帳上のデータの単位であり、デジタル資産の一種と考えていいものです。各NFTは唯一のデジタルアイテムを表すことができます。

一般的にデジタルデータは複製可能で、誰もが所有できてしまいます。しかし、NFTを利用することで、デジタル上のデータに所有権があることを証明でき、NFTを活用すれば自分が持つ資産がオリジナルであることを証明できます。

NFTアートへの期待と市場の盛り上がり

NFTを積極的に利用しようと動いたのがアート界です。デジタルデータが「作品」として売買されるためには、そのデータが唯一無二のものであることが証明され、さらに所有者を特定できることが条件となります。

まさにNFTはデジタルデータとして作成されたアート作品をユニークなデータであることを証明し、作成者や所有者を改ざんされることなく特定し続けることができます。

これによってデジタル作品がまるでカンバスなどに描かれた絵画作品と同じようにオリジナル性が証明されることになり、オークションなどで数千万ドルで落札されるようになりました。

例えば、現代アーティストの村上隆は、NFTマーケットプレイスの「オープンシー(OpenSea)」に初めてのNFT作品「Murakami.Flowers」を出品しました。この作品は、村上の代表的なモチーフである「花」が題材となっており、ファミコン画像のような24×24ピクセルで表現された作品です。

そしてこの作品の所有権は購入者が取得しますが、著作権や商標権、知的財産権は村上と彼が運営するアーティスト・マネジメント会社カイカイキキが引き続き保有すると明記しているそうです。

NFTが持つ潜在的なリスク

しかし村上は、その後NFT作品の発売延期・再検討を明らかにしました。その理由について自身のInstagramでコメントしていますが、NFTを否定しているのではなく「さまざまなテーマに対して慎重な検討と議論を重ねて、より最適な形式でNFTをご提供して行くのが良いだろう」という判断が働いたそうです。簡単に言ってしまえば、仕組みとして未整備な点が多いことが原因となっています。

こうしたアーティストの動きとともに、メディアではNFTが持つ潜在的なリスクについても議論されるようになっています。

NFTは、代替不可能なアイテムの所有権を主な対象として取引できる仕組みを提供しています。一度発行されたトークンのデータを変更することはできません。しかしこの信頼性を逆手に取った行為も派生しているのです。

米公共放送局のNPRによると、バンクシーの作風によく似た作品のNFTが1億円で落札されたものの、他のアーティストによるフェイク作品であったというケースが発生したそうです。また英テレグラフ紙は、あるアーティストがTwitter上で公開している自作アートの画像を盗用され、作品の所有権を第三者によって無断で販売されてしまったという事態を報じています。

NFTによるアート市場の展望

NFTへの熱狂について、米CNNは、「批評家たちはこれら(NFT)が大いに問題を抱えたものであり、はじけるのを待つバブルだと指摘している」と述べています。

またアーティストの中には、電子的なやり取りが行われるNFT作品は、環境への悪影響が懸念されるとして否定的な見方をする人たちも出てきているようです。

しかし一方で、NFTによる売買は、プラットフォームの仲介なしに成立するので手数料が安くなり、初回の販売だけでなく、作品が転売されるごとにロイヤルティーが得られる可能性もあります。そのためアーティストやクリエーターにとって大きなメリットが期待されています。

さらにマーケットが世界共通のプラットフォームに存在していることで、グローバルで知名度を上げていくことも容易になっています。

さまざまな問題をはらんでいることは確かですが、それらを1つずつクリアにしていくこと、つまりブロックチェーン自体の技術的進歩により、NFTによるアート市場が巨大化する可能性は大いにあるでしょう。

現実世界での実体のある「モノ」にも応用されるNFT

今回はアートとNFTの関連を中心に解説してきましたが、NFTはスポーツ、ゲーム、音楽などの分野でも活用が進んでいます。また、アパレルや不動産など現実世界で実体を持つモノのNFT化も実験的に行われ話題を呼んでいるようです。

このように今後NFTは投資関連などさまざまな分野で重要なキーワードとして登場してくる可能性が高いでしょう。アートでの活用をモデルケースとして理解しておけば、別の分野での対応もしやすくなると考えられます。

文・J PRIME編集部

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