ニョッキとニューディ

本当のラグジュアリーな食事とは何だろう。 四季折々に旬の食材がとれる日本において、その時に一番美味しいものを食す。それを、自分の手で料理して、大切な人に食べてもらう。食材にこだわり、道具にこだわり、みんなを楽しい気持ちにさせる飯。毎日じゃなく週末だからできる、ちょっとわがままかもしれない“ラグメシ”。 vol.14は、2種類のニョッキ。1つめはふんわり食感の本場の味を、旬を迎えた“5月の女王”ことメークインを使って再現します。2つめはトスカーナ地方の郷土料理“ニューディ”と呼ばれるニョッキ。この2つをマスターすれば、自宅の食卓がイタリアのリストランテに早変わり! こだわりのTOOL情報や、タロアウトによるDL可能なレシピPDFもあります。

1. メークインのニョッキ、トマトソース
2. リコッタチーズとホウレンソウのニューディ

本場のニョッキは、ふわふわなんです!

YOSHIKI & TAROUT


YOSHIKI(以下Y)早速ですが、“5月の女王”と呼ばれる野菜をご存じですか?
TAROUT(以下T)5月……山菜の一種ですか?
Y 残念。メークインです!
T なるほど。MAY+QUEENですね! そんな語源があったとは知りませんでした。そして、ジャガイモにも旬があるんですね!
Y そうなんですよ。ジャガイモは収穫後にでんぷんが糖化することで甘みが増すのですが、糖化の速度は品種ごとに違うので、食べごろも異なるんです。5月に美味しいメークインは、主に北海道産のもの。前年の9月に収穫したものがゆっくりと糖化し、5月に食べごろを迎えます。
T 勉強になります。

メークイン


Y とびきり甘くなったメークインを活かすべく、今回はニョッキを作ります。
T ニョッキはパスタですよね。ほぼ小麦粉なのでは?
Y 市販のニョッキは、形がしっかりして流通させやすいように小麦粉の割合を多くしているんです。本来イタリアで提供される手打ちのものは、生地の8割以上がジャガイモ。粉を少なくし、ふんわりとした食感に仕上げるんです。
T モチモチじゃないんですか!?
Y モチモチしているのは、粉の割合が多い証拠。本場のニョッキの美味しさに、きっと驚きますよ。
T 楽しみです。ただ、ほぼジャガイモで煮崩れたりしませんか?
Y さすがですね! ジャガイモはねっとりとした食感の“粘質”と、ホクホクな“粉質”の2種類に分けられ、粘質の品種を使えば、最小限の小麦粉でもしっかり固まります。その点でも、粘質のメークインは最適なんですよ。
T メークインのほかに、おすすめの品種はありますか?
Y 「インカのめざめ」や皮が赤い「レッドムーン」。ちなみに「男爵」などの粉質タイプは、舌触りがなめらかで美味しいのですが、つながりにくく煮崩れしやすいので、初めての場合は避けるのが賢明です。もうひとつ大事なのが、加熱後すぐに調理すること!
T 冷ましたほうが、身がしっとりする印象ですが。
Y 冷やすとでんぷんが固まって粘り気が増し、ふんわりと仕上がらなくなってしまうんです。これさえ守れば、失敗知らずです。

ニョッキ


T 手で成形できるから、パスタマシンも不要。確かに手軽ですね。
Y ですよね。ということで、僕の一押しのニョッキをもう一品加えてみました。その名も「ニューディ」。イタリア語で“裸(ヌード)”という意味で、トスカーナ地方の郷土料理です。
T 裸!?
Y チーズや肉、野菜などをパスタ生地で包んだ“ラビオリ”はご存じですよね。定番の具材、リコッタチーズとホウレンソウをそのままニョッキに仕立てた料理です。パスタ生地で包んでいないことから、“裸のラビオリ”、つまり“裸”と名付けられたようです。

ラビオリ


T パスタをまとっていない=裸とは、ユニークな発想ですね(笑)。
Y ポイントは、ホウレンソウとリコッタチーズをしっかり水切りすることのみ。成形したら、メークインのニョッキと同様に茹でるだけです。
T 茹で上がりは、どうやって判断したら良いですか?
Y 沈んでいたニョッキが、浮き上がったら完成の合図です。いよいよ、ラストのソース作りです。

ニョッキ


T パスタソースは、時間がかかるのでは……?
Y お腹が空いたんですね(笑)。ご安心を! ニューディのソースは、溶かしたバターでセージを炒めるだけです。ニューディが乳製品たっぷりなので、メークインのニョッキはトマトソースでさっぱりと。トマト、ニンニク、バジル、オリーブオイルをフライパンに入れて熱すれば、イタリアで定番のパスタソース“アリオーネ”の完成です。あとは、茹で上がったニョッキに絡めるだけ。

トマトソース
バジル

T どちらも香りがたまらないですね。赤と緑の彩りも素敵です。
Y メークインのニョッキは香りの強いチーズや濃厚なクリームとも相性抜群。好みのソースでアレンジしてみてくださいね。
T ふわっふわですね! メークインの甘みがしっかり感じられて、感動の美味しさです。ニョッキをトマトソースで食べるのは初めてですが、すごく合いますね。
Y よかったです!
T ニューディは、リコッタチーズのコクがたまらない。セージとナツメグの香りも効いていますね。日本であまり知られていないのが不思議なくらいです。
Y そうなんですよ。ぜひ、みなさんにも試していただきたいです!

1. メークインのニョッキ、トマトソース

メークインのニョッキ


【材料/4名分】
メークイン     160g(茹でて皮をむいた状態の重さ。茹でる前の皮付き約2個分)
薄力粉       20g〜(状態を見ながら加減する)
強力粉       10g
バジル       1枝
A
トマト       400g(小サイズ約3個)
オリーブオイル   40ml
ニンニク      小2片
赤唐辛子      少量
バジル       2枝
砂糖        2つまみ
塩         2つまみ

【作り方】
1 メークインは竹串がすっと通るまで水から茹でる。熱いうちに皮をむき、ザルを使って裏ごしする。
2 1に薄力粉を、まず20g加え、ヘラで切るようにして混ぜ合わせる。生地がヘラにくっつかなくなるまで、薄力粉を5gずつ加えて調整する。

メークインのニョッキ


3 直径約2cmの棒状に伸ばし、端から約2cmごとに切り分ける。楕円形に成形し、表面にフォークで模様をつける。


メークインのニョッキ


4 トマトはヘタを取り、くし切りする。ニンニクはみじん切りにする。フライパンにAをすべて入れてフタをし、中火で加熱する。時々フタを開けて、ヘラでトマトを潰しながら10分ほど煮詰める。トマトから出た水分がとろりとしたら、火を止める。
5 バットに2を並べ、強力粉をふりかけて全体にまぶす。
6 鍋にたっぷりの湯を沸かして塩(水分量の1%)を溶かし、4を入れる。浮き上がってきたらザルにあげて水気を切り、3のフライパンに入れて軽く混ぜ合わせる。
7 皿に5を盛り、バジルを飾る。

【POINT 1:ニョッキの模様はフォークでつける】


メークインのニョッキ
切り分けた生地を、手のひらで楕円形に丸める。フォークに載せて親指で軽く押しながら、先端に向けて転がす。「縞模様をつけるのは、ソースを絡みやすくするため。このほか、フォークの腹で潰すように模様をつけてもOKです!」(藤田さん)


【POINT2:強力粉でコーティングをして型崩れ防止】

メークインのニョッキ
強力粉をまとわせてから茹でることで、表面に膜ができ、形崩れを防げる。「ニョッキが吸収しにくい強力粉がおすすめですが、ない場合は薄力粉でも問題ありません」(藤田さん)


メークインのニョッキ
「生地の粉の割合を最小限に抑えているため、粘度は低くなります。コーティングをせずに茹でると、写真のように表面が溶けてしまう可能性があるので、この工程は欠かさずに!」(藤田さん)


2. リコッタチーズとホウレンソウのニューディ


リコッタチーズとホウレンソウのニューディ


【材料/4名分】
リコッタチーズ  150g
ホウレンソウ   200g
強力粉      10g
バター      40g
セージ      約6枚
ブラックペッパー 適量

A
薄力粉      50g
パルミジャーノ  40g
卵        1/2個(約30g)
ナツメグ     小さじ1/8
塩        小さじ1/4

【作り方】
1 ホウレンソウは熱湯で2分ほど下茹でする。水気をしっかり絞り、ミキサーでペースト状にするか、包丁でみじん切りにする。
2 リコッタチーズはしっかり水切りする。※キッチンペーパーで包んでザルに置き、重しを載せた状態で最低3時間置く方法がおすすめ。水切り後の重さの目安は120g前後。パルミジャーノはすりおろして粉状にする。
3 1、2、Aをボウルに入れ、ペースト状になるまでよく混ぜ合わせる。

リコッタチーズとホウレンソウのニューディ


4 一口大に成形し、バットに並べる。強力粉をふりかけて全体にまぶす。
5 鍋にたっぷりの湯を沸かし、塩(水分量の1%)を溶かし、4を入れる。浮き上がってきたら、ザルに取り出す。
6 中火で熱したフライパンにバターを入れて溶かし、セージを入れて、葉が少し縮むまで軽く炒める。5を加え、混ぜ合わせる。
7 6を皿に盛り、好みの量のブラックペッパーをふりかける。


【POINT1:リコッタチーズの水切りはしっかり、念入りに】

リコッタチーズ
リコッタチーズはキッチンペーパーで包み、重しを載せて最低3時間〜一晩置いて水切りする。


リコッタチーズ
「水分が残っていると、茹でたときに形が崩れる原因になります。使う前に手でほぐし、水気がないことを確認して」(藤田さん)


リコッタチーズ
「水分が残っていると感じたら、キッチンペーパーで包み直し、水分が出なくなるまで手でぎゅーっと押し潰しましょう。時間がない場合は、初めからこの方法で水切りしてもOKです」(藤田さん)


【POINT2:スプーン2本でラグビーボール状に成形】

リコッタチーズとホウレンソウのニューディ
スプーンで1杯分の生地をとり、もう1本のスプーンで生地を丸めるようにしてすくいあげる。スプーンからスプーンへの移動を2回ほど繰り返し、ラグビーボール状になったら、バットに置く。「ニューディは、ラグビーボール状に成形するのが定番。くぼみが深く、先端がややとがった形のスプーンを使うと、よりキレイに仕上がりますよ」(藤田さん)


【今月のこだわりTOOL1:『チーズ工房 白糠酪恵舎』のリコッタチーズ】


「酪農業がさかんな北海道白糠町にある『チーズ工房 白糠酪恵舎』。オーナーは、日本におけるモッツァレラチーズの製造・販売のパイオニアと言われています。生乳の品質に並々ならぬこだわりを持ち、搾ったままの状態を保つために、牧場から運ぶ際も極力振動させないよう注意しているそう。リコッタチーズはもちろん、ここのフレッシュチーズはどれも、やさしい味わいが特徴。料理に使っても、ほかの食材と見事に調和してくれます。価格も良心的と、素晴らしいチーズ工房さんです」(藤田さん) https://rakukeisya.jp/

リコッタチーズとホウレンソウのニューディ


【今月のこだわりTOOL2:『IKEDA』のペッパーミル&ホールペッパー】


「今回のニューディなど、乳製品をたっぷりと使った料理のアクセントとして欠かせないブラックペッパー。コショウをはじめ、スパイスは挽いた状態で保存すると、せっかくの香りが損なわれてしまうんです。そのため僕は、必ず粒状のホールタイプを買っています。ペッパーミルは、これまでさまざまなメーカーのものを試してきましたが、『IKEDA』が群を抜いて素晴らしい! 気持ちいいくらいスムーズに挽けるので、つい挽きすぎてしまうほどです(笑)。ブラックペッパーは、料理によって2種類を使い分けています」
「右は、『スピンフーズ』のブラックペッパー。香りがとびきり強く、生クリームやクセの強いチーズを使った料理でも、存在感をばっちり発揮してくれます。左は、『MARICHA』のネ・ビアンコ・ネ・ネロ・ディ・サラワク。イタリア語で“白と黒”を意味する商品名の通り、ホワイトペッパーとブラックペッパーのブレンドです。フルーティな香りが上品で、淡白な料理に合わせても主張しすぎず、絶妙な風味を加えてくれます」

『IKEDA』のペッパーミル&ホールペッパー


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メークインのニョッキレシピ
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ほうれん草のニューディ
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ラグメシ
藤田承紀 / FUJITA YOSHIKI
(プロフィール)
料理家。イタリアでの修業後、日本で野菜作りをしながら活動を開始。料理教室、ケータリング、飲食店立ち上げ、雑誌やテレビ出演等多岐にわたって活躍。王道のイタリアンから、アレルギーやヴィーガン対応の旬の野菜を使ったイタリアンも提案。日本では2020年に初めて開催された料理コンテスト「ベジタリアンチャンス ジャパン第1回」にて〈サスティナビリティ賞〉を受賞した。書籍は『野菜のスープ』(主婦と生活社)、『野菜のチップス・果実のチップス』(文化出版局)。http://fujitayoshiki.com/
ラグメシ
タロアウト / TAROUT
(プロフィール)
キャラクターアーティスト。ひとつひとつに愛情あふれるストーリーを設定して誕生させる作品が、国内外から絶大な支持を集める。これまでディオールやフェンディ、ポール・スミス、ナイキなど、名だたるブランドとコラボレート。また、現在『VOGUE GIRL』で大人気連載中の「しいたけ占い」のキャラクターデザインを担当。運動を始めてから健康を意識する中で料理に目覚め、藤田氏とフード&デザインユニット「LUNNY’S VEGGIE」を結成。2017年、「未来の笑顔をシェアする」をコンセプトに活動をスタート。

題字デザイン/タロアウト 撮影/野頭尚子 文/中西彩乃 企画編集/横山直美(cat)


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