不動産業界,DX事情
(画像=ASDF/stock.adobe.com)

経済産業省は2020年12月に公表した「DXレポート2(中間取りまとめ)」のなかで、さまざまな業種でデジタルを使った革新を実現するデジタルトランスフォーメーション(DX)を後押しする姿勢を、あらためて強調しました。旧来からの仕組みが残る不動産業界も同様に、DXが進むといわれています。それを裏付けるように、一部ではすでにIT重説やVRを用いた内見など、テクノロジーを駆使した変革が着実に進んでいます。

今回の記事では、コロナ禍で地方の物件への注目度が上がるなど不動産市場を取り巻く環境に変化が起きる中で、テクノロジーがどのような役割を果たすかを解説します。

経済産業省が取りまとめる「DXレポート」とは?

「DXレポート」とは、経済産業省内に設置されている研究会が企業のDXを加速するべく議論した内容をまとめている資料です。2018年9月に第1回レポート、そして2020年12月に第2回となる「DXレポート2(中間取りまとめ)」 が公開されました。

これまで「DXレポート」では、老朽化・複雑化・肥大化・ブラックボックス化した既存システム=「レガシーシステム」がDXを推進する上で障壁となることや、それを踏まえて2025年までに計画的にDX化を進める重要性を指摘してきました。政府は企業間でデータ活用が進まず経営改革が進まない場合、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる「2025年の崖」が起こると見ており、それに対する打ち手のひとつが企業のDXの加速であると目しているからです。

第1回レポートから、政府はさまざまな打ち手を講じ、DX支援を図ってきました。しかし、実態は芳しくなく、「DXレポート2」によるとおよそ9割以上の企業がDXに未着手、または散発的な実施にとどまっているようです。

こうした背景から、政府は今まで以上にDXの重要性を訴え、推進していく考えです。「DXレポート2」には、そのための対応策もまとめられています。

不動産業界でも同様にDXが進んでいる

政府による積極的なDX推進を受けて、不動産業界もDXが進んでいます。消費者目線でわかりやすいところでは、「IT重説」や「VR内見」などが挙げられるでしょう。

IT重説

IT重説とは、住宅・不動産分野で必要となる「重要事項説明(重説)」について、テレビ会議などのITツールを活用して行うことです。

たとえば、賃貸契約時の重説は身近な例でしょう。従来は、宅地建物取引士が「対面」で重要事項説明を行わなければならない決まりでした。しかし、2017年10月以降は賃貸契約に関する取引の重説に限り、パソコンやテレビなどの端末を利用して、対面と同様に説明、質疑応答できる双方向性のある環境が整っていれば、直接会わなくても重要事項説明を受けられるようになりました。

非対面で重要事項説明を行えるため、新型コロナウイルスの感染対策としても環境整備が加速しています。2020年5月からは暫定的に賃貸契約時だけでなく、設計受託契約時に必要な建築士法に基づく重説にもIT重説が認められています。

VR内見

VR内見とは、VR(仮想現実)技術を用いた物件の内見をオンライン上で提供するサービスです。VRは、仮想の空間を作り出し、専用のヘッドセットなどを通じて見ることで、その場に自身が存在しているような視覚的な感覚が得られる技術です。

本来の内見は、実際に現場の不動産を訪れて行うものです。実際の雰囲気、匂い、物件周囲の情報など、現場にいかなくてはわからないことも多いのも事実です。しかし、スタッフの人手には限りがあり、また契約者本人も時間が有限であるなかで、1日に内見できる数は限られています。

VR内見であれば、わざわざ現場に出向かず、不動産仲介の店舗にいながら候補となる物件の内見を行なえます。1日内見できる数が多いことや移動の手間がないことは、大きなメリットといえるでしょう。

DXの波はデベロッパーにも広がる

DXが進んでいるのは不動産仲介の分野に止まりません。デベロッパーと呼ばれる不動産開発企業の間でも、DXは競争力の源泉として注力すべき領域となっています。

三井不動産では、2021年2月には取り組みをまとめた「2020 DX白書」を公表。2025年までの長期経営方針DX VISION 2025の中で、「事業変革」「働き方改革」「推進基盤」の3領域でDXに取り組んでいます。

たとえば事業変革領域では、2020年11月に千葉県の柏の葉スマートシティで、ポータルサイト「スマートライフパス柏の葉」をリリースしました。柏の葉に住む人なら誰もが使えるサイトで、1人ひとりに合わせた健康アドバイスを行っています。このようにデータを活用し、新しいビジネスモデルを創出することこそがDXの本質ともいえます。

また、直近では東急不動産が2021年4月付でDX推進部を新設しています。データを活用しながら、全社横断でビジネスモデルを刷新していく考えで、今後の取り組みに注目が集まっています。

今後の不動産市場のDXはどうなる?

IT重説やVR内見に代表されるように、不動産市場のDXは私たちの実生活にも影響を及ぼしてきています。物件を選ぶ際の手間や、労力を大幅に削減されるなど利便性も向上しました。仕事で忙しい方やコロナ禍で外出を控えている方でも、手軽に物件選びを進めることができるでしょう。

不動産業界におけるDXは今後も進んでいくでしょう。ただし、不動産自体に実体がある以上、DXでは対応しきれない側面も残り続けるはずです。実際の内見でなければわからない情報があるのは、その最たる例です。オフラインとオンラインをうまく組み合わせて理想の取引を実現していくことが、今後の不動産市場のひとつのポイントとなるかもしれません。

文・J PRIME編集部

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