焼肉 思食(おぼしめし)


「肉を焼く」というシンプルを極めた料理ながら、素材や調理法、メニュー構成においてさまざまに進化し続ける焼肉店。その中にあってひときわ異色の存在感を放つのが、昨年オープンした「焼肉 思食(おぼしめし)」だ。焼肉のエキスパートとフレンチのシェフという驚きのコラボレーションから生み出されるのは、肉本来のおいしさを追求しつつ、斬新な試みが加わったコース料理。モダンな空間で味わえる、無二の焼肉体験をお届けします。

喧騒を抜けた路地にひっそりと佇む、隠れ家の扉を開けると……

東京・赤坂見附駅から歩いて数分、賑やかな通りを1本入った小道沿いの一軒家。店名が小さく記された扉を開けると、周囲の喧騒とは無縁の落ち着いた空間が広がる。刷毛目を残して仕上げられた1階のカウンターや2階の個室のテーブルは、いずれも左官職人の手によるもの。カッシーナのチェア、韓国や中国のアンティークと調和し、モダンながらあたたかみのある雰囲気を漂わせている。

焼肉 思食(おぼしめし)店内
韓モダンをベースにしつつどこか寛いだムードも。2階にある3つの個室は少しずつ内装が異なっている。


焼肉 思食(おぼしめし)店内
個室やコーナーに置かれているのはオーナー自らが収集した李朝や高麗時代などの骨董品。なかには驚くほど高価な品もあるとか。


「焼肉 思食」の最大の特徴は、都内の有名焼肉店「SATOブリアン」で腕を磨いた柳野友昭さんと、「ロオジエ」などを経て、パリで自身の店を切り盛りしていたシェフ・青木誠さんという2人の料理人がタッグを組んだ点だ。

「決して奇をてらったわけではなくて。第一に最高の素材と調理で焼肉を提供すること、第二に焼肉以外のメニューも、確かな技術を持った料理人が担うこと。焼肉をもう一段進化させようとした時に必要だった、このふたつの要素を勘案した結果なんです。シェフのバックボーンがフランス料理なので、フレンチの要素をうまく取り入れつつ、イノベーティブな韓国料理を提供したいと考えています」とマネージャーの木村誠さんが説明する。

高級食材を驚きと共に食する、前菜のひと皿

「例えばこういった」と出されたのが、前菜のひとつ、柔らかなユッケをたっぷりのキャピアで包み、ピンチョス仕立てにした「ユッケのキャビア包み」。ユッケという焼肉店ではなじみの深い食材を使いつつ、見た目は非常に洗練されている。それでいてキャビアや温泉卵のうまみが重なりあい、満足度も十分。このあとの期待値が高まるひと皿だ。

焼肉 思食(おぼしめし)前菜
ヒレ肉を中心にしたユッケをキャピアで包み、ウズラのポーチドエッグ、タルタルソース、アイスプラントを重ねて。ひと口でほお張ると、ねっとりとしたユッケとキャビア、温泉卵が溶け合った味わいが口いっぱいに広がる。


丁寧に育てられた黒毛和牛を多彩なアレンジで堪能

そしていよいよ肉の登場。扱う和牛はブランドを限定しないものの、抗生物質や成長剤を投与しないホルモンフリーや、炊き餌で飼育された肉を中心に厳選している。
「ホルモンフリーで育てるのは時間も手間もかかります。でも我々としては絶対においしいという確信がある。質感から違いますから。炊き餌は穀物に一度火を入れた餌。消化に負担をかけないことから脂の口溶けがよく、赤身のうまみが強い肉になります。いずれも昔ながらの飼育に近いんですよ。和牛には霜降り信仰ともいえる流れがありましたが、実は過度な脂肪分は食後にもたれる原因にもなります。現在はそこから一線を画し、肉本来の美味しさを取り戻すことに真摯に取り組む畜産農家もある。そういった生産者の方を応援したいという思いもあります」

焼肉 思食(おぼしめし)黒毛和牛
厚切りにされた肉は、いずれも手をかけて育てられたことが一目瞭然のきめ細やかな肉質。手前左から時計回りに、タン、シャトーブリアン、サガリで、基本となるラインナップ。(写真は2人前)


その日使用する肉はコースの序盤に大皿で提示され、その後、タンとサガリは塩、シャトーブリアンはタレをくぐらせたステーキ風といった具合に、各部位のおいしさを最も引き出す調理でふるまわれる。

焼肉 思食(おぼしめし)タン

焼肉 思食(おぼしめし)サガリ
最初の肉料理として提供されるのが、タン(写真上)とサガリ(写真下)。ほどよい厚みのタンは肉汁たっぷり。ネギだれとの相性は最高。サガリの表面は香ばしく、内側はほんのりとピンク色。適度な弾力のある噛みごたえで、肉本来の味を濃く感じられる。好みで岩塩やワサビをつけて。


こんがりと色づき、適切なカットを施された肉は「肉を見ていると、こうやって焼いてくれと肉が語りかけてくるんです」という言葉も納得の見事な焼き上がり。なかでも圧巻なのがシャトーブリアンで、途中で数回焼き網から肉をおろして休ませる工程を経てじっくりと火を通すことで、内部に均等に熱が入り、この上なくジューシーな味わいに。

焼肉 思食(おぼしめし)

焼肉 思食(おぼしめし)
肉質がやわらかいシャトーブリアンは特に繊細な火力調整が求められる部位。最初は肉全体をあたためるように弱めの火で。頃合いをみて火からおろし肉を休ませ、タレにくぐらせて再び網に乗せるといった作業を3回繰り返しながら焼き上げる。



焼肉 思食(おぼしめし)シャトーブリアン
じっくりと火を入れたシャトーブリアンは、表面こそ軽く焼き目がついているものの、内側は全体がピンク色でふっくらとジューシー。そのままいただくほか、添えられたおろしポン酢をつけても美味。付け合わせは季節や仕入れ状況によって変わり、この日はタケノコ、菜の花、ウルイのソテー。


もうひとつの主役、目にもおいしいサラダやデザート

プロが丹念に焼き上げる肉料理の合間に、目と舌を鮮やかなコントラストで楽しませるのがフレンチの要素が息づくサラダ。およそ3ヶ月に1度更新されるメニューでは季節を感じる食材がふんだんに取り入れられ、コース料理に奥行きを加えている。コースを締めくくるデザートも、高い完成度で評判だ。

焼肉 思食(おぼしめし)ホワイトアスパラのサラダ
「ホワイトアスパラのサラダ」。アスパラのピューレに牛とスッポンでだしを取ったコンソメのジュレをのせ、カリフラワーやエディブルフラワーを散らした。クリーミーでやさしい味わいが肉料理と絶妙な対比を生んでいる。それぞれの料理が盛りつけられた器の美しさも印象的。


焼肉 思食(おぼしめし)トリュフのプリン
「トリュフのプリン」。なめらかなカスタードプリンの中には細かく刻んだ黒トリュフが。控えめな甘さにトリュフの香りと歯ざわりがアクセントになった大人の味わい。添えられたトリュフはプリンと一緒に食べるのはもちろん、フルーツとの相性も意外なほどいい。


メニューは2種類。「本日のコース」は計11皿からなり、このほか「鮑のお粥」「ヒレカツサンド」「ヒレのすき焼き」など魅惑の品々が並ぶ。なおもうひとつの「オーナーズテーブル」も同じく11皿で展開され、+αの食材が加わったり、肉が増量したりとよりグレードアップ。

ワインは赤100種以上、白40種以上など豊富な品ぞろえでペアリングを楽しむことも可能(要予約)。1階のカウンター席、2階の3室ある個室に加え、3階はソファスペースを備えたVIPルームを設けるなど、料理以外でも既存の焼肉店のイメージを超えた試みが光る。

「よく『焼肉店じゃないね』とおっしゃっていただきます。ありがたくもあるのですが、肩肘張らずに楽しんでいただける焼肉の良さは絶対に持っていたいですね」 思食という店名には「思い出に残る食事の時間を過ごしてほしい」という思いが込められている。おそらく世界のどこにもないユニークな焼肉料理を味わうのは、深く記憶に刻まれる体験に違いない。



【ショップインフォメーション】
「焼肉 思食」
東京都港区赤坂3-19-5
☏ 03-5444-8475
営業時間
Dinner : 17:00∼23:00
本日のコース 24,200円
オーナーズテーブル 36,300円
※消費税・サービス料込

休 日曜日
https://oboshimeshi.com

撮影/福田喜一 構成・文/末元妙実 企画編集/横山直美(cat)

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