【New York】人気ドラマ「ザ・クラウン」にも協力! 〈ローイング・ブレザーズ〉の新たなプレッピースタイル


「プレッピー」はもともとはアメリカで一流大学に進学することを目指す名門私立高校(通称プレップスクール)に通う学生たちのファッションに由来する。彼らが憧れるアイビーリーグの大学生たちの装い(アイビースタイル)に遊び心を加え、より若々しくしたもので、主にワスプ(WASP: White Anglo-Saxon Protestant)と呼ばれる白人上流社会の子弟たちが好んだものだが、今では時代に呼応しながら進化を続けている。

プレッピー御用達といえば、〈ブルックスブラザーズ〉や〈Jプレス〉、そして〈ラルフ・ローレン〉などがよく知られてきたが、新進ブランドの中で今、もっとも注目されるのは2017年にスタートした〈ローイング・ブレザーズ(Rowing Blazers)〉といっていいだろう。

プレッピーを地で行く文武両道の創始者

まずブランド創始者のジャック・カールソン自身、プレッピー的な生い立ちやライフスタイルを地で行く男だ。生まれはニューヨークだが幼少時はイギリスで育ち、アメリカに帰国した後は名門ジョージタウン大学を卒業、その後オックスフォード大へ進学して考古学の分野で博士号を取得した。在学中はボート競技部に所属、アメリカ代表選手として2015年には世界大会で銅メダルも獲得しているアスリートでもある。

ジャック・カールソン
© Yumi Matsuo
幼少期は父親の仕事の関係で世界中を旅した、というジャック・カールソン。子供のころの夢は「インディアナジョーンズの映画を見すぎて(笑)、考古学者になること」だった。実際、考古学の分野で博士号を取得し、イタリアでは2年間実習もした。ローイング(=競技ボート)を始めたのは11歳のころ。


もともと特段ファッションに関心があったわけではないそうだが、「中高生のころはアバクロンビー&フィッチが流行っていたけど1枚も買ったことがなくて、代わりに両親の古いヴィンテージ、80年代の古いラコステのシャツとか、ラグビーやサッカーのジャージなどを着ていました。11歳でボート競技を始めて、いろいろなボートクラブのブレザーに興味を持つようになったんです。ストライプ柄などカラフルな生地を使って仕立てられていたり、胸のポケットにはいろんなデザインのエンブレムがついていたりするのを見て、とてもワクワクしました」と振り返る。

3色のブレザー
競技ボート部ほか、体育会系ユニフォーム用ブレザーの製造もオフィシャルに請け負う。左からロンドンのインペリアル カレッジ ボート部、スイスのサン・モリッツ トボガニング クラブ(リュージュ部)、プリンストン大学ボート部。


ブレザーへの興味が高じ、カールソンはその後オックスフォード大学大学院時代にその名も『ROWING BLAZERS』というタイトルの本を出版した。「ブレザーにはそれぞれクラブの伝統や歴史にまつわる深いストーリーがあり、エンブレムのデザインにはさまざまな意味が込められている。自分は子供の頃から紋章についても関心があり、ロンドンではイギリス政府直属の機関カレッジ・オブ・アームズでもインターンをしていたんだ。ここは紋章をデザインする部門で、その時にそれぞれのシンボルの意味について深く学ぶことができた」

ジャック・カールソン
カールソンが大学院時代に出版した『ROWING BLAZERS 』。現在、続編となる第2弾も執筆中とか。


赤いブレザー
ブレザーの語源となった、イギリスのケンブリッジ大学にあるレディマーガレットボートクラブ(Lady Margaret Boat Club at St. John’s College)のブレザー。これは1900年代のもの。


もともと“ブレザー”という言葉はボート競技に深い由縁がある。「1852年ケンブリッジ大学に属する伝統的なボートクラブ“Lady Margaret Boat Club at St. John's College”のジャケットの色がBlazing Red(燃えるような赤)だったことから、ブレザーと呼ばれるようになったんだ。今では僕らがそのクラブの公式ブレザーを製造しているのはとても光栄なことだね。ほかにもハーバード大学やプリンストン大学、アメリカやドイツのナショナルチームのために公式ブレザーを作っている」。

古い写真
オックスフォード大学時代は競技ボート部の選手として、またコーチとしても活躍した。写真はコーチしたチームが優勝した時のもの。右から2人めがカールソン。


ローイング・ブレザーズのスタッフ
マスクまできちんとコーディネートされたスタイリッシュな〈ローイング・ブレザーズ〉のスタッフたち。


『ザ・クラウン』にも登場した
羊のセーターにまつわる秘話

初めはブレザーから始まったブランドだが、その後はフルラインナップを揃えるまでに成長。コラボレーションアイテムも人気で、今話題になっているのは、ダイアナ元妃が着用したことで知られる羊柄のセーターを復刻したことだ。折しも英国王室を題材としたNetflixドラマ『ザ・クラウン』でダイアナ役を演じたエマ・コリンがゴールデングローブ賞TVドラマ部門で主演女優賞を獲得し、番組でもこのセーターを着用しているシーンがある。

羊柄のセーター
ダイアナ元妃も愛したかの有名な羊のセーターは1994年以降製造されていなかったが、〈ローイング・ブレザーズ〉によりオリジナルデザインで復刻された。イギリス人女性二人が1979年に設立した〈Warm & Wonderful〉との初の“公式”コラボレーションである。メンズウィメンズともに$295


「このセーターは1979年、ジョアンナとサリーというふたりの若いイギリス人女性がデザインし、コベントガーデンにあるマーケットの小さなテーブルで売ったのが始まり。ダイアナ元妃のブライドメイドのひとりがこれを婚約記念にプレゼントしたのがきっかけで、80年代はコピー商品もたくさん出回ったくらい大ブレイクした。僕の母もこのセーターを持っていたんだ」

約2年前のこと、ふたりのうちのひとりのEメールアドレスを探し当てることができて、カールソンはダメもとでコンタクトを試みたという。「これほど世界で有名なセーターは他にないし、すでに多くの有名デザイナーや会社がたくさんコンタクトをしてきたに違いないから、まず返事は来ないだろうと思っていた。ところが、予想に反して翌日すぐに返事が来たんだ。『今度ロンドンに来ることがあったら教えて』って!」。

約2週間後に彼女の家に赴き、アーカイブの全てやダイアナ元妃の記事のクリッピングなどを見せてもらった。そして、セーターを製造し始めて以来、誰ひとりとしてきちんとコンタクトをしてきた人はいなかった、ということがわかった。「なんと僕が第1号だったんだ。ヨーロッパの某有名ブランドが無許可でコピー商品を売っていたことはあったらしいんだけどね(笑)」

さらにダイアナ元妃のセーターは、実は2着あったこともわかった。友人からのギフトは婚約指輪が引っかかり破れてしまったため、その後宮殿からデザイナーに直接連絡があり、代わりを送ったという。それほど、ダイアナ元妃はあのセーターを気に入っていたのだ。「羊柄のセーターを着ているダイアナ元妃の有名な写真は2枚あって、1枚は結婚前、もう1枚は結婚後なんだけど、それらのセーターはアクセントの黒い羊の位置が異なっている。これは彼女がセーターを2枚所有していたことの証拠で、ほとんどの人は知らないんだ。このようにたくさんの素敵なエピソードをシェアしてくれたうえに、最後には僕らとのコラボレーションも快諾してくれた」

ダイアナ元妃のポートレート
壁にはダイアナ元妃のポートレートも。これは"結婚後”に撮影された、2枚目のセーターを着用しているもの。


『ザ・クラウン』でエマ・コリンが着用している羊のセーターについても秘話がある。 「衣装用のセーターについては、僕が本物のヴィンテージを確保できるように協力した。というのも、たくさんの偽物が世に出回っているからね。〈ローイング・ブレザーズ〉のものを提供できればよかったんだけど、残念ながら撮影にはサンプルが間に合わなかったんだ」

エマがドラマで着用したセーターについてはさらにふたつ注目すべき点がある。 「ひとつは羊に目がないこと。ダイアナ元妃が着ていたものは目が刺繍されているんだけど、その後、セーターが人気になりすぎて、80年代後半は目を刺繍しないで出荷していた時期があるんだ。そしてもうひとつは黒い羊の位置。上半身全体が映っている最初のシーンでは黒い羊は胸の位置にあるが、その後の彼女の表情をクローズアップしたカットでは顔の横に移動している。白い羊の群れの中にいる一頭の黒い羊は、ダイアナ元妃のメタファー(隠喩)だった。だからデジタル加工によって羊を移動させたんだね」

インクルーシブに進化する
2020年代的プレッピー

プレッピーファッション
Photo Courtesy of Rowing Blazers
〈ローイング・ブレザーズ〉とNBAとのコラボレーションによるカプセルコレクション。ブレザー$895、ネクタイ$150、パンツ$295、バッグ$135


この春はNBAと 提携したカプセルコレクションを発表するなど、〈ローイング・ブレザーズ〉のプレッピースタイルは、常にコラボレーションによって進化を続けている。そしてそのバックグラウンドにはいつもスポーツマンシップがあることが大きな特徴だろう。「アメリカでもイギリスでも、もっともクラシックなメンズウェアはミリタリーかスポーツから発祥している。ボート競技のブレザーにしても、ラグビーシャツやサッカーのジャージ、テニスのポロシャツにしてもね」

腕時計
ヴィンテージ時計はジョージタウン大学時代の同級生だったディーラーなどから仕入れている。この5月には〈SEIKO〉とコラボレーションしたモデルも発売予定。


<ローイング・ブレザーズ〉にとってスポーツはブランドのDNAと言える要素なのだ。「プレッピーはアメリカの歴史においては、ある特定のグループにエクスクルージブであることに根ざしていたけれど、これからは僕らがそのイメージをもっとポジティブに変えていけたらいいな、と願っている。かつては白人の男性がブレザーにネクタイをしているようなスタイルを思い浮かべる人も多かったと思うけれど、僕らはプレッピーとは対極にあるストリートウェアからも多くインスピレーションを得ている。もともとプレッピーのアイテムは機能的でカラフル、着ていて楽しいデザインも多いからユニバーサルに受け入れられる要素はふんだんにある。今後も時代に即した新しいプレッピーのかたちを発信していきたいね」

マスク
製造過程で余った端切れを利用したマスクも今、人気のアイテム。各$25


店内の様子
ブランドのショールーム兼フラッグシップショップは近日中に移転予定。夏にかけてはポップアップイベントも予定されている。


Rowing Blazers

https://rowingblazers.com/

撮影/山田陽 取材・文/市川暁子 企画編集/横山直美(cat)

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