アームチェア パイミオ
アルヴァ・アアルト、41 アームチェア パイミオ、1932年デザイン Photo: Tiina Ekosaari Alvar Aalto Foundation


フィンランドが誇る20世紀の北欧を代表する2人の建築家/デザイナー、アルヴァ・アアルト(Alvar Aalto)と、その妻であり公私にわたるパートナーだったアイノ・アアルト(Aino Aalto)。その2人の軌跡を追う巡回展「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド―建築・デザインの神話」が2021年3月20日より世田谷美術館で、同年7月上旬より兵庫県立美術館で開催されます。

本巡回展は、日本においてアアルト夫妻の活動を大きく取り上げた初の展覧会。公私にわたって互いを支え合ってきたアアルト夫妻が目指した、自然と調和しながら芸術と技術が融合したデザインが見どころとなります。

この記事ではアアルト夫妻の足跡を振り返るとともに、巡回展をより深く楽しむためのポイントとして、彼らの代表的な仕事を紹介します。

2人の天才、アルヴァ・アアルトとアイノ・アアルトの出会い

自然と調和しながら、アートとテクノロジー(技術)が融合したデザインに注力したアアルト夫妻。2人の出会いは、1924年にアルヴァの建築事務所をアイノが訪ねて、ともに働くようになったことがきっかけでした。

そして出会いから半年後に2人は結婚。新婚旅行で訪れたヨーロッパ建築発祥の地・イタリアをはじめ世界中の建築に刺激を受けながら、アアルト夫妻はデザインを深化させていきます。

見たことある!身近にあるアルヴァ・アアルトのプロダクトデザイン

アルヴァ・アアルトが考案したデザインは、私たちの生活にもプロダクトとして溶け込んでいます。特に代表的なものが以下に挙げた2つです。

スタッキングできるチェア「スツール 60」

スツール60
アルヴァ・アアルト、スツール60、1933年デザイン Alvar Aalto Foundation


スツール 60は、アルヴァが1933年にデザインしたチェアです。アアルトデザインの原点である「L-レッグ」という無垢材を直角に曲げる特許技術を用いた最初の作品でもあります。シンプルで普遍的なデザインが人気であり、スツール(背もたれがないイス)としてはもちろん、サイドテーブルやディスプレイ台など、あらゆる用途に使用できます。

また、スタッキング(積み重ね)による収納も可能で、スタッキングするとスツールの脚が螺旋状のフォルムを描きます。まさに機能美に優れた名品といえるでしょう。

イッタラの波打つような形状の花瓶「アルヴァ・アアルト コレクション ベース」

アルヴァ・アアルト コレクション ベースは、アルヴァが1936年に発表した花瓶のデザイン。フィンランドデザインの象徴ともいわれます。最大の特徴は、波打つようなフォルムです。世界で最も有名なガラス作品といわれる同作品群は、今でもイッタラの工房において手吹きで制作されています。

アアルト夫妻の共同の物作り。完成に導いた作品たち

アアルト夫妻といえば、プロダクトデザインだけでなく数々のモダニズム建築の名作を設計してきたことでも知られています。続いては、代表的な建築作品を紹介しましょう。

パイミオのサナトリウム(フィンランド)

アアルト夫妻の手がけた建築の中でも、最高傑作といわれているのがフィンランド南西部パイミオの森に建てられたサナトリウム(結核患者の療養所)です。主にアルヴァが建築設計を担当し、アイノが内装を担当しました。カラフルな床や窓が大きく開放感の高い食堂など、患者の精神的な安らぎを追求したデザインが特徴です。

パイミオのサナトリウムが一線を画しているのは、医者目線で設計された療養所ではなく、患者の視点に立って建物から家具までオリジナルで設計された療養所だという点。こうして生まれた家具の1つが、結核患者にとって呼吸が最も楽になる角度を考慮した椅子「41アームチェア パイミオ」です。現在も生産が続く名作家具となりました。

ヴィボルグの図書館(ロシア)

ヴィープリの図書館
ヴィープリの図書館 講堂 Alvar Aalto Foundation


ロシアのヴィボルグ(ヴィープリ)という街に、アアルト夫妻が建築設計を手掛けた図書館があります。話し声が後方の席まで届くように設計された波打つ天井が特徴の講堂や、読書に十分な明かりを提供するスカイライトが天井に設置された図書室など、デザイン性と実用性を兼ね備えた建築物となっています。

前述した、スツール60がはじめて設置された場所としても有名です。現在の図書館の児童書コーナーには、スツール60のキッズサイズが設置されています。

マイレア邸(フィンランド)

マイレア邸
マイレア邸 リビングルーム Alvar Aalto Foundation


マイレア邸
マイレア邸外観 Alvar Aalto Foundation


1935年、アアルト夫妻らはモダニズム文化の啓蒙を目的に「アルテック」という会社を設立しています。マイレア邸は、このアルテックの出資者、マイレア・グリクセン夫妻のために設計された邸宅です。

素材として木を中心に用いる点や、曲線が美しいテラスやプールなど、アアルト夫妻のデザイン性が最大限に発揮されている建築となっています。特に日本の竹林を思わせる丸柱やそれぞれの部屋に合わせてデザインした家具などが配置された内装は、あらゆる建築物の中でも特に美しいと評価されています。

また、このマイレア邸には、彫刻家のアレクサンダー・カルダーをはじめ、グリクセン夫妻の友人が訪れていました。彼らが滞在中にこの家に設置された家具を体験することが、「アルテック」を世に広める役割を果たしたのです。この家のためにアルヴァとアイノがデザインした家具も数多くあり、現在でもアルテックで販売されているものもあります。

展覧会ではアアルト夫妻の物作りや軌跡を知ることができる

アアルト夫妻は、「一点ものの作品ではなく、量産品の普及により人々の暮らしをより良くしたい」という理想を追求してきました。その想いは今日のアルテックでも貫かれており、デザイン性と実用性を両立した家具の大量生産に成功。いまや世界的な家具ブランドとなっています。

そんなアルヴァとアイノの歩みを辿ることができる今回の展覧会。豊富な資料を通じて機能美を追求した秀逸なデザインを味わえば、モノづくりの本質的な価値を考えずにはいられないのではないでしょうか。

【アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド―建築・デザインの神話】

<東京>
会場:世田谷美術館 1階展示室
会期:2021年3月20日(土・祝)~2021年6月20日(日)
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:毎週月曜日(祝・休日の場合は開館、翌平日休館)
 ※5月3日(月)は開館、5月6日(木)は休館
観覧料:一般1,200円/65歳以上1,000円/大高生800円/中小生500円
※チケット販売の詳細については世田谷美術館 公式ホームページをご確認ください。

2021年7月3日〜、兵庫県立美術館に巡回予定