水素,ビジネス
(画像=vchalup/stock.adobe.com)

第46代アメリカ大統領として、ジョー・バイデン氏が1月20日に就任。その日のうちに地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」への復帰を果たしました。これは温暖化抑止に向けた意義ある一歩と言えるでしょう。

その温暖化対策の具体的な取り組みとして、いま水素エネルギーの本格的な普及が期待されています。水素は「燃焼しても排出されるのは水だけ」という点で、究極のクリーンエネルギーとして知られています。最近でも、トヨタ自動車がFCV(燃料電池自動車)の新型車「MIRAI」を2020年12月に発表、発売するなど、水素に関する記事が目立つようになってきました。

この記事では水素社会に向けた現在地を解説するとともに、日本国内で進んでいる水素ビジネスを紹介します。

水素エネルギーの開発競争が加速

Japan Timesは2020年11月1日付の記事では、見出しに「Hydrogen wars(水素戦争)」という文字が踊りました。水素経済をめぐり、ヨーロッパと中国の競争が激化するなど、期待の裏返しとも言える動きが目立ってきているからです。世界中の国々が、再生可能エネルギーの普及とそれがもたらす新たな産業の創出を促すため、水素の活用を模索しはじめています。

日本に目を向けると、2017年に「水素基本戦略」を世界の各国に先駆けて策定しています。2030年までの普及に向けて、行動計画、数値目標などを盛り込んでいます。現在は2050年の温暖化ガス排出量の「実質ゼロ」に向けて、内容を見直している状況です。

水素社会の実現には、さまざまな課題がある

水素は膨大に存在し、また多様な用途に利用できる点が大きなメリットです。たとえば、ニッケル水素電池という充電池にも使われているほか、意外なところでは液化水素という形でロケット燃料に利用されています。

さまざまな原料から製造でき、天然ガス、LPG、ナフサ、石油残渣などの炭化水素からの製造が実用化されています。また、バイオマスからも製造可能であり、将来に向けて光触媒による水素製造の実用化も進められています。

一方で、燃焼しても水しか排出しないというイメージから連想するほど、利用は簡単ではありません。気体である水素を、体積を小さくするために液体とする場合、マイナス253℃の超低温に保つ必要があります。特に貯蔵と輸送のためのインフラ整備、それを賄うためのコスト面、加えて制度面や技術面でも課題が山積しています。

また、水素は天然ガス、石油といった化石燃料を改質して製造するため、化石燃料を採掘する時、また水素を製造する時にも二酸化炭素(CO2)を排出するという厳しい現実も存在しています。

そのため、今後は産学官が役割分担を明確にし、国家プロジェクトとして水素に関する技術の進展や導入、普及施策を進める必要があります。実際に、2020年9月には国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、2024年までの燃料電池の利用を飛躍的に拡大させるための産学官が連携した研究開発事業の実施を発表しています。

水素は、環境問題の解決や日本の産業競争力を高めるための切り札として期待されています。将来は、水素発電などの新用途の開拓と同時に、トータルの視点で二酸化炭素の排出量を抑えられる水素利用のサプライチェーンを構築し、主要エネルギーへと転換していきたいところです。

民間にも広がりつつある水素ビジネスの現状

民間企業においては水素ビジネスには、どのようなプレイヤーがいるのでしょうか。

・川崎重工業
岩谷産業やオーストラリアのFortescue Metals Groupと協力して、豊富な褐炭からの水素製造、インフラ整備による製造と運搬、サプライチェーンの構築といった構想を立てています。

また川崎重工業は、2030年までに16万立方メートルの水素を運べる大型船を開発する構想を持っています。今日の液化天然ガス(LNG)の普及は運搬船によるところが大きく、水素でも同様に船での輸送を普及へのテコにしたい考えです。

・パナソニック
パナソニックは2019年11月に、家電製品を生産する草津工場に水素ステーションを開設。数年後の発売を目指す小型水素製造装置の実証機から、燃料電池で動くフォークリフトに水素を供給しています。この実証機には、同社が家庭用燃料電池エネファームで培ってきた技術を応用しています。

エネファームと並行してパナソニックは純水素燃料電池の開発も進めており、2021年10月には大型施設向けに販売開始する予定との報道もあります。

水しか排出しない究極のエネルギーと呼ばれる水素。さまざまなハードルがある中で、人類はついにそれを自由に利用する領域へと足を踏み入れかけています。それをリードするといわれている日本の技術に、世界中から期待が寄せられているのです。

文・J PRIME編集部

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