
本当のラグジュアリーな食事とは何だろう。
四季折々に旬の食材がとれる日本において、その時に一番美味しいものを食す。それを、自分の手で料理して、大切な人に食べてもらう。食材にこだわり、道具にこだわり、みんなを楽しい気持ちにさせる飯。毎日じゃなく週末だからできる、ちょっとわがままかもしれない“ラグメシ”。
Vol.11のメインは、イタリアでポピュラーな揚げもの“フリット”。自宅でもサクッ&ふわっと揚げられるコツが満載です。もう一品は、フリットと相性の良いシンプルな野菜スープ。応用のきくふたつのレシピを、旬の春野菜を使ってお届けします。また、こだわりのTOOL情報や、タロアウトによるDL可能なレシピPDFもあります。
1.ふんわりサクサク衣のフリット
2.野菜のうまみたっぷり豆のスープ
絶対に失敗しない揚げもののコツ、教えます!

TAROUT(以下T)「一気に暖かくなって、春野菜の美味しい季節がやってきましたね」
YOSHIKI(以下Y)「はい。だから今回は“イタリア版天ぷら”ことフリットとスープで、春野菜を満喫しましょう!」

T「揚げもの……」
Y「最近、個人的に揚げものの美味しさを再認識しまして。もしかして、苦手ですか?」
T「食べるのは大好きですよ。ただ、自分で美味しく揚げられる気がしないです。油の温度とか、衣とか、難しそうで」
Y「確かにそういう人は多いと思います。でも、目からウロコのコツをつかんだんですよ! 油の温度の見極め方から、油切りまで、失敗しないためのテクニックをしっかり伝授するので安心してください」
T「そこまでおっしゃるのなら……頑張ります!」
Y「フリットはイタリアの揚げもの。ふっくらとした衣が特徴で、衣さえちゃんと作ってしまえば天ぷらよりも揚げるのは簡単です」
T「同じ揚げものなのに?」
Y「はい。衣作りの一番のポイントとなるのは、卵白を泡立てたメレンゲと炭酸水。これらを加えることで、ふんわりサクサクの衣になります」

T「天ぷらと違ってしっかり生地を混ぜるんですね。食材に衣をたっぷりつけるのも新鮮です」
Y「だから天ぷらみたいに揚げた時に衣がはがれてしまうこともありません。そしてもうひとつ大事なのが、鍋のサイズと油の量。油を控えようとして、小さな鍋を選んでいませんか?」
T 「なぜか油をたくさん使うことに罪悪感をおぼえるんです。それでつい小さな鍋を選んでしまって」
Y 「僕が使うのは、直径25cm前後のフライパン。大きい鍋のほうがいっぺんに揚げられて、合理的です。そして油はたっぷり、潔く。結果的にそのほうが失敗しません」
T「油のおすすめはありますか?」
Y「家にあるものでいいですが、こだわるなら個人的には『竹本油脂』の太白胡麻油が好きです。クセがないのに、絶妙なコクが出て。また、エキストラバージンオリーブオイルを使うと、こんがりとした色に仕上がりますよ」

T「一番不安なのが、食材を入れるタイミング。180度と言われても、見当がつきません」
Y「温度計を使うのもいいですが、音で判断するのが一番。衣を垂らしてみて、170度が“ジュワジュワ~”、180度は“ジャッ”、190度は“シャッ”って感じです。聴き比べてみてください。菜の花は“ジャッ”、海老は“シャッ”(笑)」

T「わかるようなわからないような」
Y「最初は温度計があると便利ですね。でも高温でサッと揚げる天ぷらと違って、4分ぐらいじっくり揚げるので、そんなに厳密じゃなくていいんですよ。温度が上がりすぎている気がしたら、火を止めてもいいし」
T「なんだか、揚げもののハードルがぐんと下がりました」
Y「でしょう。そして大切なのが油切り。ちょっとしたコツで全然違うので、【POINT3】をチェックしてみてください」
T「揚げてから時間が経っても衣がベタつかず、まさに目からウロコです」
Y「ですよね。この方法にしてから、揚げものを食べすぎたあとも、胃もたれ知らずです」
T「さっぱりとしたスープと、フリットの組み合わせもばっちりですね。交互に食べると、ますます食が進みます」
Y 「ポイントは、野菜のみでとっただし。うまみを出すタマネギ、甘みの多いニンジン、香りの強いセロリをみじん切りにし、4:2:1の割合で調理することで絶妙な野菜だしが完成します。イタリアではこの3種の野菜をみじん切りにしてたっぷりのオリーブオイルで揚げるように炒めたものを“ソフリット”と呼び、さまざまな料理の隠し味として使われているんですよ」

T「野菜だけでこんなに深い味わいになるとは、感動です! それにしても、揚げものの手軽さには本当に驚かされました。近々、みんなで集まれることを願いつつ、練習しておこうかな。男性がさっとフリットを作れると、かなりポイント高いですよね」
Y「お、いいですね! カセットコンロがあれば、みんなで揚げものパーティをするのもアリです」
T「楽しそう! 春の到来が一層、楽しみになってきました」
1. ふんわりサクサク衣のフリット

【材料/2名分】
海老 4尾
菜の花 4本
レンコン 小1節
ズッキーニ 1/2
好みの揚げ油 約1ℓ
薄力粉 約30g(大さじ4)
塩 1つまみ
衣
薄力粉 60g
片栗粉 30g
炭酸水 100g
卵白 卵1個分
【作り方】
1 食材の下準備を行う。海老は殻をむいて背ワタを取り除き、キッチンペーパーで水気を切る。菜の花は茎と葉に切り分ける。レンコンは厚さ1㎝程度の棒状に(POINT1)、ズッキーニは長さ5cm×厚さ2cm程度に切る。
2 ボウルに卵白を入れ、ピンと角が立つまで泡立てる。
3 別のボウルに薄力粉と片栗粉を合わせてザルでふるう。炭酸水を加えて、泡立て器で8の字を描くよう混ぜ合わせる。生地を持ち上げた時に粉っぽさがなくなってきたら、2の卵白を3回に分けて加え、その都度、ヘラで切るようにふんわりと混ぜ合わせる。
4 直径約25cmのフライパンに油を入れ、170度に加熱する。※温度は、衣の生地を入れた際の音を参考に。170度:“ジュウ〜”、180度:“ジャッ”、190度:“シャッ”。火の通りにくい根菜は170度、ズッキーニや菜の花などは180度、新鮮な魚介は190度を目安に、低い温度から揚げていく。
5 食材は適応する油の揚げ温度に合わせて一種類ずつ揚げていく。バットなどに入れた薄力粉に食材をまぶし、はたいて余分な粉を落としたらすぐに3の衣をつけ、油の中に入れる。1〜2分経ち、衣がある程度固まったら裏返し、同様に1〜2分揚げる。衣から出る泡の量が減り、箸で軽く叩いてコンコンとした感触になったら、油から取り出して網を敷いたバットに移す。
6 すべての食材を揚げ終わったら、皿に盛り、塩を添えて完成。
【POINT 1:火の通り方が異なる食材によって切り方を変える】



【POINT2:衣の決め手は、炭酸水、泡だて器、メレンゲ】



【POINT3:食材は垂直に立てて油切り】


2. 野菜のうまみたっぷり豆のスープ

【材料/スープカップ4杯分(作りやすい分量)】※全体の重さ約1200g
生の豆類(今回はスナップエンドウとインゲンマメを使用) 200g
水 50g
オリーブオイル 60g(全体の重さの約5%)
A
タマネギ 100g
ニンジン 50g
セロリ 25g
水 800g
ニンニク 1片
塩 6g(全体の重さの約0.5%)
【作り方】
1 タマネギ、ニンジン、セロリ、ニンニクはみじん切りにする。豆類はヘタや筋を取り除き、好みの大きさに切る。
2 鍋に1とAの水と塩を入れ、強火で加熱する。沸騰したら弱火にし、野菜がやわらかくなるまで加熱する。
3 豆類と50gの水をフライパンに入れふたをして、好みの硬さになるまで中火で蒸し煮する。※豆の色がくすむのが気にならない場合は、2に豆類を生のまま入れ、スープの中で茹でても良い。
4 2の鍋に3の豆類を入れ、混ぜ合わせる。
5 仕上げにオリーブオイルを入れる。
【POINT1:豆はフライパンで別に炒めて彩り&食感UP!】

【POINT2:オリーブオイルは最後に加えると香りが引き立つ】

【今月のこだわりTOOL:味わうオリーブオイル】

<<タロアウト作成「ラグメシ・レシピ」ダウンロードはこちらから>>

福祉レストラン「らんどね空と海」シェフ。イタリア・トスカーナ地方のレストラン「IL PELLICANO」や、ローマの老舗「AL CEPPO」にて修行。帰国後は「食卓に笑顔を」をモットーに、自然農法、有機農法による野菜作りをしながら活動を開始。野菜料理を得意とし、ビーガンや各種アレルギーに対応した料理教室、ケータリング、レシピ開発も行う。 著書に『野菜のスープ』(主婦と生活社)、『揚げる焼く 野菜のチップス 果実のチップス』(文化出版局)がある。

キャラクターアーティスト。ひとつひとつに愛情あふれるストーリーを設定して誕生させる作品が、国内外から絶大な支持を集める。これまでディオールやフェンディ、ポール・スミス、ナイキなど、名だたるブランドとコラボレート。また、現在『VOGUE GIRL』で大人気連載中の「しいたけ占い」のキャラクターデザインを担当。運動を始めてから健康を意識する中で料理に目覚め、藤田氏とフード&デザインユニット「LUNNY’S VEGGIE」を結成。2017年、「未来の笑顔をシェアする」とコンセプトに活動をスタート。
題字デザイン/タロアウト 撮影/野頭尚子 文/中西彩乃 企画編集/横山直美(cat)