ジビエ,フレンチ


近年、地球温暖化をはじめ、人と自然との関係性のバランスが崩れた影響から野生鳥獣が増え、主に猪や熊、鹿が農作物を食べ荒らしてしまうなど、自然環境にとって大きな問題が発生している。その問題に真剣に向き合い、ジビエをメインに創造性溢れるフランス料理を提供しているのが、表参道にあるレストラン「LATURE(ラチュレ)」である。オーナーシェフの室田拓人さんは「人と自然の関係」を見つめ直し、食の未来を考えるひとつの「文化」としてジビエ料理を提案。室田シェフの独自の哲学が感じられる新たなモダンフレンチをお届けします。

ジビエは正しい処理の仕方で調理をすると格段に美味しくなる

室田シェフは10年以上前に狩猟免許と銃の所持許可を取得。自らハンターとしても活動するのは、料理人としての「責任と使命」を強く感じているからだと語る。

「若い頃にフランス料理をたしなむようになり、次第にジビエ料理のおいしさに魅了されるようになりました。ジビエを知るうちに野生鳥獣が増えすぎてしまっている深刻な環境問題も知ることに。しかもその背景には、人間の営利目的のための自然破壊、山村の過疎化、高齢化に伴う森林の放置、狩猟者の減少など、人間が原因になっている問題があるということ。また、捕獲された動物はそのほとんどが殺傷処分されてしまっていることもわかり、無駄にせず料理として提供したいという気持ちが生まれたのです」

ジビエ料理に興味を持つようになった後、あるレストランで食したジビエの肉の臭いが気になったことがあったそう。

「肉の臭みが出るのは、処理の仕方に問題があります。猟師の方は、一般的には野生鳥獣を仕留めた後の状態や食すことまで気を使わないから仕方ないんですよね。それなら自分で獲って処理したほうが、より良質な肉を提供できると考えるようになりました。自分の店をスタートするにあたっては、レストラン専用の食肉処理施設も設けることに」

室田シェフはジビエの肉はさることながら、血液に至るまで余すことなく料理に使い、動物の尊い生命をいただくことへの感謝も忘れない。コース料理の一品目して供されるシグネチャーディッシュは、「鹿のブラッドマカロン」だ。

マカロン
マカロンの生地には卵白の代わりに鹿の血を使用。中にはさんであるのは、鹿の血を使って作った、ほどよい塩味がクセになるブーダンノワール。「卵白と鹿の血には同じ成分が含まれているので、代用が可能。通常は捨ててしまう鹿の血までも料理に活用し、自然の恵みを享受することをポリシーにしています」と室田シェフ。


厨房
室田シェフを筆頭に厨房でチーム一丸となり、俊敏な動きで料理を仕込む。


自然の恵みを余すことなくいただくサステナブルな取り組み

ジビエのほかにも「持続的な食材の調達」を念頭に置き、自宅からほど近い千葉県流山市に自社菜園も設けた。
「環境に配慮して野菜を栽培し、見た目や形が不出来なものも活用することを徹底しています。僕が作るフランス料理はうまみが強く、濃い味わいが特徴です。自分たちで野菜を作ることで、料理に合った濃い味の野菜が作れるのも強みですね」

ジビエの調理や自社菜園など、環境に配慮した活動が評価され「ミシュラン東京2021」では、サステナブルな取り組みをするレストランとして新たに設けられた「グリーンスター」を受賞した。

「遺伝子組み換えで農作物を作ることは人間のエゴによるもので、生態系を崩しているのです。食事をすることは命をいただくこと。だから人間は、地球上のすべての生き物に対して責任を持ち、敬意を払わないといけない。食事を提供する料理人は、さらに強い使命感をもってそのことを伝えていかなくてはならないと思っています」

熱を込めてこれからの食の未来について語る室田シェフ。ジビエ以外の魚や肉などは、直接生産者と会話をして仕入れることも大切にしている。

黒鮑のショーソン
島根県産の鮑を丸ごと1個使った「黒鮑のショーソン」。殻を開けずに調理することで鮑が持っている水分を生かし、3時間半ほど低温でじっくりと火入れ。口に溶けるほどのやわらかさと素材そのものの味の濃さが際立った鮑と帆立貝のムースをパイで包んだ。焦がしバターソースには、鮑の肝を発酵させて作った肝醤油を足し、うまみとコクを豊かに引き出している。


エゾシカのロースト
「北海道産 エゾシカのロースト」。ナイフがすっと入るほどやわらかく、きめ細やかでしっとりとした肉質のうまみが際立ったエゾシカ。赤ワイン、ポルト酒で煮詰めたソースに赤すぐりと黒胡椒を添え、付け合わせにはホワイトアスパラガスとジロール茸のソテーを。


素材のうまみを引き出した贅沢なコース料理を締めくくるデザートは、「パール柑と山椒のヴァシュラン」

パール柑
メレンゲのカップの中に、熊本県天草地方を主産地とする柑橘「パール柑」の皮を煮出して作ったプリンのようなものを入れ、その上にパール柑の実、フロマージュ・ブラン、アイスクリームを盛り付け、仕上げに山椒の粉を。山椒の香りが柑橘に近いことに気づいた室田シェフは、その取り合わせの楽しさや芳醇な香りをデザートで提案。


お客さまが喜ぶ顔を思い浮かべながら、日々、素材の取り合わせを研究し、新しい料理に挑む室田シェフ。今後の目標のひとつは「日本独自のジビエ料理」を確立することだという。

「ヨーロッパのジビエと日本のジビエとでは、味がまったく違うので、日本独自の組み合わせを考えたいのです。日本で根づいている調理法といえば、鍋なので(笑)、例えばジビエに魚や貝を合わせてみるなど、新しい可能性を模索していけたらいいなと思います」

素材が持つ本来の味を尊重し、フランス料理のクラシックな技法と食材の新しい取り合わせによるうまみを掛け算した、重層的で食べ応えのあるコース料理。「自然の恵み」という贈りものに改めて感謝し、「命をいただく」意味を噛みしめながら贅沢なひとときを楽しんでほしい。



【ショップインフォメーション】
「LATURE」
東京都渋谷区渋谷2-2-2 青山ルカビルB1
☏ 03-6450-5297
営業時間
Lunch : 11:30〜15:30
Dinner : 17:30∼22:00
Lunch
Menu LATURE 4,800円
Menu LATURE Plus  6,800円
Dinner
Menu Terroir「大地」のコース 10,000円
Menu Special スペシャルコース 14,000円

※消費税・サービス料別

休 日曜日(月に1度、日曜営業)
https://www.lature.jp/
撮影/吉次史成 構成・文/矢島聖佳 企画編集/横山直美(cat)

※新型コロナウイルス感染症対策として店内やスタッフの除菌、 営業中のマスク着用を徹底。

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