決算発表,株価
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保有している銘柄の株価が決算発表後に急騰、急落した経験がありませんか? 決算は株価を大きく動かすトリガーになりうるとても重要なイベントです。株価は長期では業績に連動するといわれます。決算には、企業の現在や将来の業績をチェックできる情報が満載されているからです。今回は、株式投資に必ず役立つ、決算前にチェックしておきたい決算のポイント3点を紹介します。

目次

  1. 決算発表の分析は、ファンダメンタルズの基本の“キ”
    1. なぜ決算発表は株価を左右するのか?
  2. 決算短信と決算説明資料は情報の宝庫
    1. 決算発表日:四半期ごとに決算短信の開示を行う日
    2. 決算短信:指定フォーマットに則った業績サマリー
    3. 決算説明資料:企業が自主的に作成する補足資料
    4. 決算説明会
  3. 決算発表・分析のポイント1:決算で重要なのはモメンタム
  4. 決算発表・分析のポイント2:決算で重要なのは進捗率
  5. 決算発表・分析のポイント3:決算で重要なのはコンセンサス対比
  6. 決算分析のスキルは一生の財産になる

決算発表の分析は、ファンダメンタルズの基本の“キ”

決算発表は、投資を判断する上で最も重要な会社情報のひとつであり、株価を左右する最も重要なイベントといってもいいでしょう。決算発表後にストップ高になることもあれば、ストップ安になることもあるように、決算は株価を大きく動かす材料となり、株価のトレンドを変えるきっかけともなるのです。

なぜ決算発表は株価を左右するのか?

株価は、長期では企業業績に連動するといわれます。企業業績を主に分析して投資することを「ファンダメンタルズ分析」「ファンダメンタルズ投資」といいます。ファンダメンタルズ分析は、現在の経営状態などを分析し、将来の企業価値を予想するものです。

一方、株価を値動きなど過去のデータで分析し、将来の値動きを予想するのを「テクニカル分析」といいます。どちらも株式投資では主要な投資方法ではあるのですが、新製品またはサービスの投入や、新しい事業開発により、会社が今までと違った成長ステージに入る場合などの場合は、ファンダメンタルズ分析でなければ、その変化を読み取れない場合があります。

だからこそ、長期投資ではファンダメンタルズが“王道”ともいわれています。そして企業業績の分析材料として一番大事なのが、決算発表なのです。

決算短信と決算説明資料は情報の宝庫

決算は、決算発表日、決算短信、決算説明資料、決算説明会といった、いくつかの要素に分解することができます。まずは、それぞれが果たす役割を押さえましょう。

決算発表日:四半期ごとに決算短信の開示を行う日

上場企業は、決算期を4期に分けて3ヵ月毎の決算を開示する義務があります。3月期末決算企業なら、4月~6月末までの第1四半期決算、4~9月末までの第2四半期決算、4~12月末までの第3四半期決算、4月~3月末までの通期決算と、都合4回の決算を発表するのです。

それぞれ期末から45日以内、できれば30日以内に「決算短信」を適時開示システムのTDnetで開示することになっています。決算短信を開示する日が「決算発表日」です。決算発表日はあらかじめ企業が東証に連絡をしているので、ほとんどは予定された日時に発表されます。毎年4月末あたりに通期の決算発表が集中するのは、日本では3月決算の企業が多いためです。

決算短信:指定フォーマットに則った業績サマリー

「決算短信」とは、決算の速報版で、東京証券取引所(東証)が決めたフォーマットに則って作成されます。基本は連結ベースです。冒頭には、当期の売上、利益などの経営成績、財政状況、配当の状況、さらに会社の業績予想などの業績サマリーが表記してあります。

サマリー以降は、経営成績に関する分析、財政状態に関する分析などのコメント、損益計算書、貸借対照表などの企業分析に必須の財務諸表のほかに、セグメント別の売上、利益なども開示されています。

受注産業では、売上に先行する受注の状況などもあるはずです。ここは非常に重要で、以下のような企業の現状を示すデータが満載なのです。

・企業のどのセグメントの利益率が高く、どのセグメントが伸びているのか?
・先行指標である受注は増えているのか?
・受注残のレベルは? など

最初は決算短信を眺めることに、なかなか慣れないかもしれません。ただ、決算短信のフォーマットは基本的には同じなので、次第にどこにどのような情報があるかがわかってくるでしょう。

決算説明資料:企業が自主的に作成する補足資料

多くの企業は決算短信と同時に事業の概況、主要KPI(重要業績評価指標)などをまとめた「決算説明資料」を開示します。決算短信はあくまで決められたフォームでの速報ですが、決算説明資料はその会社の当期の状況を、よりわかりやすいデータで投資家に理解してもらうために補足する資料です。

決算説明資料の開示は義務ではなく、フォーマットも決まっていません。決算の注目点、問題点、セグメント毎の状況、新規分野など企業がアピールしたいポイントや投資家が知りたい項目などがデータと図などを使ってわかりやすく解説されています。

決算短信や決算説明資料は、株式投資情報のサイトでも簡単にチェックできますし、それぞれの企業のホームページのIRページで開示後すぐにアップされることが多いのでチェックしてみてください。過去の短信や説明資料もダウンロードできることが多いので、その企業の長期のトレンドなどをつかむこともできます。ここまで分析できれば、あなたも立派なアナリストです。

決算説明会

決算短信と決算説明資料資料をベースに、機関投資家や個人投資家向けに決算説明会を行う会社も多くなりました。決算発表日の後日に開催する企業も多いのですが、ソフトバンクグループやトヨタなど決算発表後に決算説明会をオンラインでライブ配信する企業もでてきています。

決算説明会は、一般的には機関投資家やアナリスト向けに開催されますが、個人向けに開催する会社も増えつつあります。決算発表会や質疑応答の動画をアーカイブで公開する企業も多くなってきています。企業業績を左右する、経営陣の話を直接聞けるよいチャンスでしょう。

ただし、これらの決算発表は、分析をすることではじめて投資判断に役立てることができるものです。続いては、適切な分析するために、決算発表前にチェックしておきたい3つのポイントを解説します。

決算発表・分析のポイント1:決算で重要なのはモメンタム

決算の株価へのインパクトを考える時に重要なのは、決算水準そのものよりも「モメンタム」です。あえて日本語に訳すなら「勢い」といった意味合いで、業績が拡大しているのか、縮小しているのかという方向性のことをいいます。

たとえば、決算が増収増益でも株が売られることがあります。これは、前期が売上2割増収・利益2割増益だったものが、今期は売上1割増収・利益1割増益になったとすると、たとえ過去最高益を更新したとしても速度は落ちています。これがモメンタムです。株式市場はモメンタムの低下を嫌います。株価は業績に先行する事が多いからです。つまり、業績のモメンタムが低下するならば、足元の好業績はすでに株価に織り込まれたと投資家は考えるわけです。

反対に、赤字決算でも株が買われることがあります。たとえば、その企業が前期よりも赤字が縮小していればモメンタムが改善しているからです。

モメンタムの見方は四半期ごとの決算の推移をみることです。自分で四半期決算を短信から拾ってもいいのですが、最近の株式情報のサイトでは個別銘柄の四半期ベースの決算が簡単にみられます。決算前に、決算をチェックしたい銘柄の過去数四半期の売上や営業利益のモメンタムがどうなっているかをチェックすることが、決算前のひとつ目のチェックポイントです。

なお、企業の利益には「営業利益」「経常利益」「純利益」がありますが、決算をみるときには基本的に「営業利益」をみるようにするとよいでしょう。なぜなら、その企業が本業で稼いだ利益が営業利益だからです。

また、季節による変動性がない企業では前四半期比で比較してもよいですが、たとえば夏季に売上が増加するビール業界のように四半期ごとに売上増減の季節性がある企業は、前期比だけでなく前年同期比と両方を比較しましょう。

決算発表・分析のポイント2:決算で重要なのは進捗率

決算短信では、「進捗率」も重要です。会社が期中に通期予想を上方修正した場合は素直に株価が反応することが多いのですが、会社の予想を据え置いた場合でも株価が反応することがあります。これは投資家が、業績の進捗率を見ているからです。

進捗率とは、企業の決算を四半期ごとの時間経過と業績の進捗状況を比較したものです。四半期を百分率の時間経過でいえば第1四半期は25%、第2四半期は50%、第3四半期は75%。それに対して売上や利益が業績予想に向けてどれくらい進捗しているかをみることで、売上や利益が上振れ・下振れしそうかどうかをある程度読むことができます。

たとえば、上期(第2四半期まで)の実績の利益がすでに通期予想の利益水準を上回っていれば、時間経過50%に対し利益の進捗率は100%です。この場合、下期に利益がでないといった特別な事情がない限り、通期では利益が上乗せされる可能性が高いことになります。

その性質上、進捗率は第2四半期と第3四半期決算の分析に限定されますが、決算発表前に企業の利益進捗率から業績修正があるかどうかをみておくこと。これが決算前の2つめのチェックポイントです。

モメンタム分析と同じように進捗率分析も、四半期ごとに季節性のある企業においては通用しないこともありますのでご注意ください。

決算発表・分析のポイント3:決算で重要なのはコンセンサス対比

株価のインパクトを考える時に、市場の「コンセンサス」と比較することも大事です。

たとえば好業績で、好モメンタムで、進捗率から上方修正が予想できる場合であっても株が売られるケースがあります。それは、企業の業績が市場のコンセンサスを下回った場合などに実際にありえます。市場のコンセンサス予想というのは、その銘柄をカバーしているアナリストによる業績予想の平均です。

具体的なケースで説明しましょう。

企業Aは好業績で、すでに多くのアナリストも企業Aの好調を伝えています。そんななか、企業Aが100億円の利益予想をしていたところを、中間期に120億円に上方修正したとします。このとき市場のコンセンサス、つまりアナリストの業績予想の平均が150億円だったとしたら、120億円はガッカリです。120億円は織り込み済みで株価が下落することもありえる、と投資家は判断するのです。

コンセンサス予想は、投資情報のサイトや証券会社の情報サイトでみることも可能です。特にアナリストカバーの多い大企業の場合、会社の業績予想とコンセンサスがかい離していることもあるため、決算前には市場のコンセンサスを確認しておくことが重要です。これが決算前の3つ目のチェックポイントです。

決算分析のスキルは一生の財産になる

決算は株式投資において、最も大事な情報のひとつです。決算で株価が動くことは多いからです。決算前、決算後に慌てないために、今回お伝えした3つのポイントをきちんと事前にチェックしておくとよいでしょう。

最初は難しくて手間もかかるかもしれませんが、ファンドマネージャーやアナリストなど投資のプロはこうした行程で分析をしています。アナリストと同じように決算分析ができることは、投資の世界で一生の財産になるはずです。

まずは、自分の保有銘柄だけでも、決算のチェックするようにしてはいかがでしょうか。

執筆:平田和生
証券外務員、内部管理責任者、米国証券外務員資格(シリーズ7)保有。慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。日本株トップセールストレーダーとして、鋭い市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスで国内外機関投資家、ヘッジファンドから高評価を得る。これまで外資系の投資顧問会社の日本支社の代表、日本投資顧問業協会の部会長、外資系コンシェルジュ会社のスタートアップ社長を努め、現在は主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

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