城,買う方法
(画像=健太 上田/stock.adobe.com)

たとえ歴史ファンでなくても、ひとたび城を訪れると、時代を感じる重厚な雰囲気に飲み込まれそうになるのが不思議です。また、近年は大河ドラマのヒットの影響もあり、城郭ファンは年々増えている印象があります。このように、歴史のロマンを感じる堂々とした建物は老若男女問わず人を引きつけてやみません。もしも、そんなお城に住むことができたら、どうでしょう。果たして日本の城は買えるのでしょうか?

今回は、かつて個人所有だった「国宝犬山城」についての情報と、海外で売り出し中の古城について解説します。

日本のお城は買えるの?

日本ではかつて個人所有だったお城があります。それは愛知県犬山市にある国宝、犬山城です。

愛知県から成瀬家へ譲与された「犬山城」

1537年(天文6年)に織田信長の叔父、織田信康によって築かれたといわれています。中山道と木曽街道に通じる犬山城は、木曽川を使った交易、経済の要衝として重要な拠点としての役割も持っていました。

江戸時代に入ると、1617年(元和3年)に尾張徳川家の重臣・成瀬正成(なるせまさなり)が犬山城を拝領します。現在私たちが目にしている犬山城は、このときに改良が加えられた姿です。

以降、江戸時代9代にわたって成瀬家が犬山城主をつとめてきましたが、9代・成瀬正肥のときに明治維新で廃藩置県となり、1871年(明治4年)に犬山城は愛知県の所有となりました。

ところが、1891年(明治24年)「濃尾大地震」が発生。そのマグニチュードは8.4だったとされていますが、これによって天守が半壊してしまう事態になります。

愛知県としては、県全体の復興もしなければならなかったため、犬山城の修繕まで行えず、地震発生から4年が経過した1895年(明治28年)、旧藩主の成瀬家に修理を条件として譲与されました。

その後、成瀬家と犬山町民が義援金を募った結果、みごとに修復は完了。これ以降、犬山城は2004年(平成16年)に公益財団法人犬山城白帝文庫の所有に移るまで、成瀬家の個人所有として運営されてきたのです。国宝の城で個人所有だったのは日本で唯一、この犬山城だけです。

ただ、個人の所有だからと言ってお城で殿様のような暮らしをしていたわけではありません。観光資源として運用しながら、成瀬家は大切な歴史資産を守ってきたのです。

個人所有から財団法人の所有へ

濃尾大地震の修繕が終わってからも、幾度となく犬山城に危機は訪れました。1959年(昭和34年)の伊勢湾台風や1961年~65年(昭和36年~40年)の昭和の大修理。国宝の維持にはとにかく多額のお金がかかります。個人の所有となっている限り、国宝だからといって国から全額の修繕費が出るわけではないのです。

個人所有の間、成瀬家の当主は台風や地震など何かあるたびに、家が傾きかねない大変な出費をせねばならなかったといい、その苦労は想像を絶するものがあります。そんななか今後も犬山城を守り続けていくために、2004年(平成16年)に成瀬淳子氏が理事長となって公益財団法人犬山城白帝文庫が設立され、犬山城は財団法人の所有となりました。

税制上のさまざまな優遇措置が受けられる公益財団法人で、犬山城を後世に守り伝えていくために維持管理に努めていかれることと思います。

日本が無理なら外国の城は?

城を個人で所有することは不可能ではありません。しかし、日本で城を所有することは現実的には厳しく、その修繕費や維持費を賄うのがとても大変だということがわかりました。

では、海外ではどうでしょうか。実はヨーロッパでは不動産物件として、城が売買されることは普通に行われているのです。

買うことのできる外国の城を探す方法

フランスやイタリアなど古い城が数多くある土地柄の国では、城は不動産物件として売買されていることが決して珍しくありません。マンションやアパート、貸家、貸店舗などと同様、「古城」という分野があるイメージです。歴史的建造物の売買を専門にあつかう業者も存在します。

インターネットでどのような古城がいくらで売りに出されているか検索することもできます。高額ではありますが、おとぎ話に出てくるような素敵なヨーロッパの古いお城が買えるのは魅力的といえるかもしれません。

なぜ城が売りに出されているのか?

元来、お城の持ち主は貴族や領主などでした。代々持ち主が相続され数百年続いたものの、現代に入ると経済的事情であったり、もしくは便利な場所へ引っ越したい、あるいは相続する人がいないなどの理由で売りに出す城主はたくさんいるのだそうです。

多くは石で堅牢に建築されており、めったなことでは壊れません。逆にその堅牢さ、文化財的価値が改築やリノベーションの障害になっていたりするようですが、それでも需要はあるようです。

数億円の予算があれば買える可能性は十分にある

こうしたヨーロッパの古城の値段はピンからキリまでさまざまですが、だいたい数億円から数十億円はかかるようです。数千万円程度のものでもそれなりのものもありますが、おとぎ話のような雰囲気を持った城となるとやはり数億円はするようです。

パリにある日系不動産会社でも多くの古城物件を取り扱っています。2020年12月執筆時点では、ロワール川とコソン川のほとりに位置する「ヴィルルーエ城」という、素晴らしいたたずまいの15世紀に起源をもつお城が売りに出されており、その価格は297万ユーロ(約3億7,500万円)でした。

子どものころにあこがれた王子様とお姫様の暮らしを実現するような素晴らしいたたずまいのお城の物件。資金があれば手に入れたいと思うかも知れませんが、心配なのは維持費です。城を所有してからかかる費用はいったいいくらなのでしょうか。

お城は所有後にも多額の資金が必要になる

古城売買の専門家によると、自分で城を所有したとしたら、その維持費は年間13万1,000ドル(約1,300万円)前後かかるということです。

莫大な費用の中身は、暖房費が大きな部分を占めます。例えば、12世紀ごろに建築された9,500平方フィート(882.5㎡)の城の場合、セントラルヒーティングにした場合で年間約8,000ガロン(3万240リットル)もの燃料が必要になるそうです。

また、清掃や庭木の手入れなどの管理を行う人が必要になってきたりで、住み込みが必要になったりするため、人件費もかかってきます。

莫大な資金がかかっても、お城暮らしは多くの人の夢

お城に住むことは決して不可能ではありません。ただし、購入価格・維持費は普通の邸宅や、並みの豪邸をはるかに凌ぎます。お城で優雅な生活を送れるかどうかは、結局はその人の資金次第だといえそうです。

一方で、犬山城のようにお城を個人所有しながら、観光資源として集客装置にすることはできるかもしれません。入場料や宿泊料収入、飲食物収入、お土産の販売収入など観光事業として活用し、その収益を維持費に充てることができれば、職住が一体となった持続可能なお城暮らしを送れる可能性が広がります。

いずれにせよ、夢が広がるお城の購入。あなたも検討されてみてはいかがでしょうか。

文・J PRIME編集部

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