川口達也
東京の真ん中、瀟洒なマンションに住む川口達也さん。自宅の部屋には、自らが設置した大小さまざまなアート作品が並ぶ。


男性専門という新しい視点で、東京と名古屋、大阪でヘアサロン「MEN’SHAIR PERCUT(メンズヘア パーカット)」を経営する川口さんは、生粋のアートコレクター。「Kawaguchi Collection」と称して、自身の現代アートのコレクションをホームページで展開、誰もが気軽に閲覧できるように紹介している。投資目的として蒐集するコレクターも多いが、川口さんはお気に入りのアート作品を“自宅に飾る”ことを純粋に楽しんでいる。

テクノロジー好きゆえに衝撃を受けた、名和晃平の作品

リビングノート
リビングルームの壁に飾られたキャンバスは、アート蒐集のきっかけともなった名和晃平さんのペインティング(右)。“Direction#230”/KOHEI NAWA


アカハシリュウキュウガモ
名和さんの作品の中で一番欲しかったという“PixCell”シリーズ。無数のビーズで覆われたアカハシリュウキュウガモの剥製は、画素数が低い画像のように輪郭や詳細がぼやける。“PixCell-Duck (Black-bellied Whistling Duck)” 2018/KOHEI NAWA


「アートを買い始めたのは、3年ぐらい前から。仕事に夢中だとどうしても生産性を追い求めてしまって。アートは生産性と真逆なのもいい」
原宿にあるヘアサロンのトップスタイリストを経て、8年前に独立。ほとんどのヘアサロンは女性客が中心で気が引けるし、かといっておしゃれなバーバーは敷居が高い。そんな身だしなみを整えたい一般的な男性の要望を読み取り、男性専用のヘアサロンをオープン、現在も続々と店舗を増やし続ける。自社でアプリ開発も手がけるほど、科学技術に興味があったという川口さん。
「ロボットのペッパー君に飛びついたぐらい、テクノロジーが大好きで。その流れで自然と名和晃平さんの作品に辿り着いたんです」
名和さんとの出会いは、パブリックアートで見た、代表的な「PixCell」(ピクセル)シリーズ。「何だこれ? とびっくりしたと同時に『欲しい!』と思いました。ただ、調べたらそう簡単には手に入らないと気づいて……」。そこからはリサーチに次ぐリサーチで、大阪のギャラリーGallery Nomart(ギャラリー ノマル)で初のアート購入を果たす。もちろん、名和晃平さんの作品だ。そこから、名和さんが所属するギャラリー、SCAI THE BATHHOUSE(スカイザバスハウス)へとご縁が広がり、今ではたくさんの作家やギャラリストと親交を結ぶようになった。

オブジェ
名和さんの作品集『METAMORPHOSIS』の刊行記念で作られたオブジェ。右は雷神を象ったもの。真ん中は作家と親交のある韓国の人気アーティストグループBIGBANGのメンバー、T.O.Pを3Dスキャンして作られた。発売された銀座蔦屋書店に並んで購入。


有名無名、国内外問わず、“自分ごと”として楽しみたい

一度アートに魅せられると、あとは数珠つなぎで次から次へとお気に入りの作家が見つかるようになっていく。
「山口歴さんがまさにそうかもしれません。3年前、アートフェア東京で展示を見た後すぐに、銀座で開かれていた個展に行ったんです。そこで作品の持つパワーに魅了され、所属されているNYのギャラリーに連絡をしたら、ご本人から直接お返事が来て、1年経たずに作品が買えたんです。今では非常に人気の高い作家さんと早い段階で出会えたことは幸運でした。そこから、山口さんと仲良しのKYNE(キネ)さんのペインティングを買うようになったり、山口さんの一番弟子を応援したりと、彼らの人間関係を辿っていくうちに、どんどんネットワークが広がって行きました。若手の作家が有名になっていく様を見るのも、自分のことのように感じられて楽しいです」

現代アート
ベッドルームに飾られた迫力満点な作品は、山口歴さんらしいブラッシュストロークのアイコニックピース。NYのギャラリーとメールでやりとりしていたため、インチとセンチを間違えるという珍事件も。“Shadow Piece No.5” 2019/Meguru Yamaguchi


KYNEのペインティング
国内外で高い人気を博すKYNEさんのペインティング。「2、3年前からずっと欲しかったのですが、ギャラリーの方のご協力もあり、昨年渋谷のMiyashita Parkがオープンした際に購入できました」。“Untitled”2020/KYNE


現在は50〜60点ほどの作品をコレクションしているが、基本は部屋に飾りたいのだと言う。
「アート初心者だった3年前は、自分の好きなテクノロジー絡みの作品を購入しがちでしたが、いろいろ見ていくうちに自分の視野も広がってきました。同年代の作家さんとの繋がりも増えましたし、作者の顔が見えることで制作時の気持ちを想像したり、まるで自分のことのように身近に感じられます。だから日常の中に飾りたい。朝起きて、お気に入りの作品に囲まれているのは幸せです。将来的にはヘアサロンや大きなスペースに展示できるようにしたいですね」

オブジェ
日本でも人気のKAWS(カウズ)のオブジェは友人からの贈り物(左)。ダニエル・アーシャムと空山基のコラボレーション展で販売された限定のBE@BRICK(ベアブリック)“BE@BRICK SORAYAMA×Daniel Arsham 100% & 400%”


ジュリアン・オビー展のグッズ
ジュリアン・オピー展で購入したオフィシャルグッズ。作品には手が出なくても、作風を凝縮したグッズなら、気軽にアートを取り入れられる。“Headphones”/Julian Opie


川口 達也
Tatsuya Kawaguchi
(プロフィール)
原宿のヘアサロンを経て、男性専用美容室「MEN’SHAIR PERCUT」をオープン。現在は、下北沢、渋谷、中目黒、栄、堀江など、東名阪のサロン激戦地に8店舗を展開(https://percut-hair.com/
今回ご紹介した作品以外のエピソードや込められた思いが記されたKAWAGUCHI COLLECTIONも必見。(https://kawaguchi-collection.com/

撮影/押尾健太郎 構成・文/小柳美佳

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