The Maker


マンハッタンから北へ。車で2時間半、電車では3時間ほどの場所にあるハドソン。川沿いを北上するにつれ、車窓の景色はみるみるうちに季節の自然豊かな光景に変わり、都会の喧噪や日常から離れていく。ニューヨーカーたちにとっては週末をリフレッシュする小旅行には手軽なデスティネーションだが、長引くコロナ禍により、今、再注目されている。中でも、昨夏オープンしたデザインホテル〈The Maker(ザ・メイカー)〉は、宿泊施設としてのみならず、客室やレストランなどで使われているプロダクトがホテルのオンラインショップで販売されており、ホテル自体がeコマースのショールームとしても機能する、ユニークなビジネス形態が話題だ。

〈The Maker〉は3棟の18〜19世紀の歴史的建造物を繋げ、リノベーションした11室のみのスモールホテルだ。客室のドアにはそれぞれThe Artist(アーティスト)、The Gardner (庭師)、The Writer(作家)、 The Architect(建築家)といった何かを創る人=“メイカー”たちのプレートが「部屋主」として掲げられており、部屋ごとに全て異なるコンセプトのインテリアになっている。このホテルのコンセプターでありオーナーはレヴ・グラツマン&アリーナ・ロイトバーグ夫妻で、彼らはビューティブランド〈Fresh(フレッシュ)〉の創設者としてもよく知られている。

ベッドルーム
© Francine Zaslow
The Artist ルーム。オーナーのレヴ・グラツマンがフランス国王ルイ15世のベッドからインスパイアされてデザインした「The Maker Louise Bed」をはじめ、ベッドリネン類、クッションなどはホテルのオンラインショップで購入可能。〈The Maker〉 Louise Bed $12,300 〈The Maker x Downtown Company〉 Cloud Bed Sheets Set $260 (King size) 〈The Maker x Downtown Company〉 Cloud Goose Down Comforter $1,400 (King size)


ビューティビジネスの成功を経てホテル業界へ

1991年ふたりが住まうボストンの自宅で作った石鹸から発祥した〈Fresh〉は今やLVMHとも提携してグローバルなビジネスを展開している。しかしながらビューティ業界とホテルでは全く毛色が違うのではないか? ビューティとホテルビジネスには何か共通点があるのだろうか? 

グラツマン氏によれば「Freshのプロジェクトで常に世界中を飛び回り、さまざまなホテルに泊まってきました。素晴らしいコンセプトやデザインのホテルも既にたくさんあるのですが、それぞれに『もっとこうだったらいいのにな』というブランクのような部分を少しずつ感じて。それで自分たちでホテルをやってみたい、と思い始めたんです」