現代美術,VOCA展
(画像=irairopa/stock.adobe.com)

東京の上野の森美術館では、1994年から毎年「VOCA展」を開催してきました。2020年も開催されたものの、コロナ禍で途中閉幕してしまいました。コロナ禍の動向により変更の可能性はありますが、2021年3月にも「VOCA展2021」の開催が予定されています。

若き新鋭のアート作家たちの平面作品を展示するこの展覧会は、新人作家の登竜門としての役割を果たしてきました。今回はそんなVOCA展の見どころを紹介します。

現代美術の展望を示す「VOCA展」

毎年春に開催しているVOCA展(ヴォーカ展)。正式名称は、「VOCA展 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─」です。“VOCA”とはVision Of Cotemporary Art、つまり「現代美術の展望」のイニシャルをとったものです。

この展覧会へ出品できる作家は、40歳以下の若手作家で、選任された全国の美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者などによって推薦された人となっています。2021年に予定されているVOCA展では31名の推薦者が、31の作家を推薦しました。

推薦された作家が出品した作品のなかから、5人のプロフェッショナルによる選考委員が下記の賞を選出します。

・VOCA賞
・VOCA奨励賞
・佳作賞
・大原美術館賞

VOCA賞とVOCA奨励賞の作品は第一生命保険によって買い上げられ、同社の本社1階のロビーで展示・公開されることになっています。また、入賞者には「第一生命ギャラリー」での個展を開催する機会が与えられます。VOCA展に深く関わっている第一生命保険ですが、同社は展示会の1994年創設時からスポンサーとして支援してきた経緯があります。

もともと、この展覧会は平面美術における国際的にも通用しうる将来性を持った作家の支援を目的としており、過去の出展者には奈良美智、村上隆、蜷川実花、福田美蘭や小林正人など、壮々たるアーティストたちが名をつらねています。無名の地方作家が若く有望なアーティストとして華やかな舞台に立てるかもしれない、またとないチャンスであり、現代美術界の注目が集まる登竜門だといえるでしょう。

作家や学芸員のトークを聞き、より深く作品を味わえる

例年VOCA展の開催にともない、アーティストトークや、ギャラリートークといった特別イベントが催されています。

・作家による“アーティストトーク”
平面美術に主眼を置いているVOCA展では、作品の厚さが“20センチ以内”という制限があります。この規定の中で繰り広げられる多様な表現の中で作家が伝え、発信したかったものとは何か、そこから何を発見できるのか。

アーティストトークは自分が持った感想や印象と、作家の生の声を聴いてマッチングできるまたとないチャンスで、VOCA展ならではのイベントといえるでしょう。

・学芸員による“ギャラリートーク”
学芸員たちの“ギャラリートーク”も聞き逃せません。豊富な知識を有する学芸員の視点を知ることで、より深く作品世界を味わえるようになるはずです。入場券だけで参加できますのでぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

こうしたイベントも楽しみながら、それぞれの作家の作品世界を理解・体感できたなら、おのずとお気に入りのアーティストが見つかるでしょう。

また、ひとたびお気に入りになれば、きっと、その作家の他の作品も鑑賞したくなる……。それがアートの世界です。現代はSNSがありますから、Facebookなどを通じて新作や個展などの最新情報をウォッチすることができます。

こうして新進気鋭の若手作家の“ファン”となって活動を支援することは、作家にとって、より素晴らしい作品を生み出す原動力になります。美術館で鑑賞するだけではない、新しいアートの楽しみ方に触れることができるでしょう。

「VOCA展2021」の公開中の情報をチェック

12月現在、日本美術協会・上野の森美術館および「VOCA展」実行委員会から発表されている「VOCA展2021」の開催概要は以下のとおりです。

▽開催概要
・名称:VOCA展2021 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─
・会場:上野の森美術館
・会期:2021年3月12日(金) 〜 30日(火) 19日間(予定)
・休館:会期中無休
・開館時間:10:00 〜 18:00(最終入場閉館30分前まで)
・主催:「VOCA展」実行委員会/公益財団法人日本美術協会・上野の森美術館
・入場料:一般600円、大学生500円、 高校生以下無料

▽選考委員
・小勝 禮子(選考委員長/美術史・美術批評)
・水沢 勉 (神奈川県立近代美術館館長)
・家村 珠代(多摩美術大学教授)
・荒木 夏実(東京藝術大学准教授)
・前山 裕司(新潟市美術館館長)

上記の選考委員は数年単位で入れ替わりながら務められています。今回、2020年から入れ替わって加わったのが荒木夏実氏と前山裕司氏です。

2010年以来の選考委員となる荒木氏は、以前に森美術館キュレーターを務めた美術評論家でもあり、現代美術と社会との関係性に注目し、アートをわかりやすく紹介する活動をしています。また、前山裕司氏は新潟市美術館の館長を務めています。美術館サイト内の館長ノートというページでは、開催中の展覧会から派生する事柄をトピックスに館長目線で発信しています。

VOCA展のホームページや毎年発行される図録には、選考委員の所感が発表されています。そこには、出品作品への講評はもちろんのこと、審査員の芸術への信念まで現れています。さまざまな美術に触れてきた選考委員の所感にもぜひ注目してください。

若手作家の熱量ある作品を直に感じよう

28回目の開催が目前のVOCA展について紹介しました。出展作家は、平面という規定の中、さまざまな素材と技法を用いた表現で挑みます。以前は絵画が中心でしたが、最近は、映像作品や規定範囲に納まった立体的な作品も出品されているように、表現方法も時代とともに変化しています。

このVOCA展をはじめとした現代アートの登竜門とされる展覧会では、エネルギーあふれる若い才能に出会える絶好の機会です。現代アートの中には一見わかりにくい作品もありますが、作品への理解や感じ方に正解はありません。距離や角度によって違った表情をみせる作品もあります。近づいたり離れたりしての鑑賞は実物を前にした時にしかできないことです。ぜひ本物を前に作家の息づかいを肌で感じてみてください。

文・J PRIME編集部

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