NISA,ロールオーバー
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

節税効果が高いなどの理由から、NISAが注目されています。NISAでは、購入してからの5年間は運用益が非課税となります。またロールオーバーをすれば、さらに最大5年間、非課税期間を延長することができます。ただし、ロールオーバーするには手続きが必要で、当初の5年が終了する年の末までに行わなければなりません。

新たな年を迎え、ロールオーバーの手続きをし忘れていたことに気づく人もいるかもしれません。しかし実は、ロールオーバーをしない方が良いケースもあるのです。ロールオーバーしない方が良いケースとはどういう場合なのでしょうか。解説していきます。

目次

  1. そもそもNISAのロールオーバーとは?
  2. ロールオーバーしない方がよいケースもある
    1. ロールオーバーしない方がよいケース1:投資対象の運用成果が今後も期待できないとき
    2. ロールオーバーしない方がよいケース2:他により有望な投資先がある場合
    3. ロールオーバーしない方がよいケース3:つみたてNISAに切り替えたい場合
  3. そもそもロールオーバーできない場合とは…
  4. 新NISA制度へのロールオーバーにも要注意
    1. 制度変更の概要:より投資初心者を意識した“2階建て”構造の制度に
    2. 制度変更にともなうロールオーバーの注意点
  5. ロールオーバーの仕組みを理解して計画的な運用を

そもそもNISAのロールオーバーとは?

NISA(小額投資非課税制度)とは、株や投信などでの運用から得られる利益が、一定期間非課税となる制度です。非課税期間は、「一般NISA」の場合は最長5年、また「つみたてNISA」の場合は最長20年となっています。ただし、一般NISAの場合、「ロールオーバー」と呼ばれる制度があり、それを利用すると非課税期間をさらに最長5年延長することができます。

NISA,ロールオーバー
【出典】国税庁「NISAの概要」

一般NISAでは、年間に投資できる金額は120万円までと定められています。NISA口座で購入した商品が5年目を迎えると、その年の末までに所定の手続きを行うことにより、保有している商品を翌年のNISA枠に移し替えることができます。

これにより、また新たに最長5年間の非課税期間を得ることができるのです。つまり、一般NISAでは最長10年間非課税で運用することができることになります。5年後に保有する商品が値上がりしていて、時価が120万円を超えていたとしても、ロールオーバーにおいてはすべて新たな非課税枠に移し替えが可能です。投資対象の運用成績が良好なものほど、非常に有用な制度となります。

ただし、ロールオーバーの手続きをしないでいると、保有する商品は課税口座(特定口座、または一般口座)へと自動的に移管されることとなります。ちなみに、非課税期間が最長20年と長いつみたてNISAには、ロールオーバーの制度はありません。

ロールオーバーしない方がよいケースもある

しかし、どんな場合でもロールオーバーしたほうが良いというわけではありません。ロールオーバーをしない方がよいケースもあるのです。例えば、大きく以下の3つのケースが考えられます。

ロールオーバーしない方がよいケース1:投資対象の運用成果が今後も期待できないとき

NISAの利点は、非課税であるということです。これは利益が出ていれば大きなメリットですが、逆に損失が発生するときには何の意味もありません。また、NISA口座で発生した損失は、課税口座での利益と損益通算をすることができません。保有を継続しても利益が出ることが見込めないなら、ロールオーバーをせずに損切りするという選択も間違いではありません。

ロールオーバーしない方がよいケース2:他により有望な投資先がある場合

先に書いた通り、一般NISAには年間の投資枠が決まっており、ロールオーバーした分もその投資枠を使います。つまり、120万円以上のものをロールオーバーすると、その年はもう新たな投資を行うことができません。ロールオーバーする商品の価格は、非課税期間の最終日の時価で計算されます。もし保有していた商品が悪くないものであったとしても、より有望な投資商品が他にあるなら、そちらを優先して新たなNISA枠を使うことも検討に値すると考えます。

ロールオーバーしない方がよいケース3:つみたてNISAに切り替えたい場合

NISAの制度では、一般NISAとつみたてNISAを同時に利用することができません。1年ごとに切り替えは可能ですが、ロールオーバーを行うとその年は一般NISAを選択したことになり、つみたてNISAへは翌年まで切り替えられません。もし、つみたてNISAへの切り替えを考えているなら、ロールオーバーせずに売却するか、課税口座への移管をする必要があります。

そもそもロールオーバーできない場合とは…

さらに、ロールオーバーしたくても、そもそもできないケースもあります。

まず、NISA口座で購入した商品を保有している金融機関と、ロールオーバーしたい先の金融機関が異なる場合です。

NISA口座は1人につき1つの金融機関でしか開設することができません。ただし、金融機関は1年ごとに変更することが可能となっています。実際、金融機関によって扱う商品の幅は異なり、手数料も同一ではないため、運用途中で金融機関を変えたいと考える人も少なくないと思います。しかし、NISA口座で購入した商品は、別の金融機関のNISA口座に移管することができない仕組みとなっています。このため、異なる金融機関の間でのロールオーバーもできないのです。

もし金融機関を変更した後にロールオーバーをするなら、当初に商品を購入したNISA口座がある金融機関に、再度NISA口座を変更しなおす必要があります(非課税期間終了の年のいつまでに行う必要があるかは、金融機関によって異なります)。

また、NISA制度は2024年に刷新され、新NISA制度が始まることが決定されていますが、これによってもロールオーバーが一部制限されることが見込まれています。

新NISA制度へのロールオーバーにも要注意

NISA制度は2020年度の税制改正大綱を受け、刷新されることが決定しています。制度変更にともない、一般NISA・つみたてNISAともに影響を受け、また新たなロールオーバーの注意点も出てきました。

制度変更の概要:より投資初心者を意識した“2階建て”構造の制度に

新たなNISA制度では、つみたてNISAにおいても一般NISAにおいても、新規に投資ができる期間(口座開設可能期間)が5年延長されることとなりました。これにより一般NISAは2028年まで、つみたてNISAは2042年までとなります。

それに加え、一般NISAはいわゆる“2階建て”の制度へと生まれ変わります。1階部分の投資枠は年間20万円、2階部分の投資枠は年間102万円であり、原則として、まず1階部分の枠から利用することが求められます。

NISA,ロールオーバー
※新NISAの510万、100万円は非課税期間5年間の上限額を表しており、年間上限は2階が102万円、1階が20万円
【出典】金融庁「令和2年度税制改正について」2019年12月

1階部分の投資対象はつみたてNISAと同様のものとなり、長期分散投資に適していると金融庁が判断した投資信託となります。買い方は積み立てのみです。一方、2階部分では上場株式やETF(上場投資信託)、REIT(上場不動産投資信託)など、幅広い商品が投資対象となります。まずは、1階部分で投資経験を積み、余裕ができてくれば2階部分でより積極的な運用を可能とする、という制度設計と見られます。

この趣旨から、すでにNISA口座を開設していた人や、株式などの投資経験があるという人については、申請により2階部分だけを利用することも可能です。ただし、2階部分でも長期の資産形成に向かないとされるレバレッジの効いた投資信託や、上場株式でも整理/管理銘柄などは購入することができません。

制度変更にともなうロールオーバーの注意点

2019年以降に一般NISA口座で購入した商品は、2024年から順次ロールオーバーの時期を迎えます。現在のNISA口座で保有する金融商品は、新NISA口座へのロールオーバーが可能となっています。そしてこれまでどおり、購入時から値上がりして新NISA制度の年間枠である122万円を超えている場合でも、全額ロールオーバーできます。一方、逆に122万未満の金額であった場合は、まず新NISAの2階部分の枠から順次使うことになります(新NISA口座においても、その年の非課税枠はロールオーバー後に残った分までとなります)。

注意点としては、先にも書いたとおり新NISAではレバレッジ投資信託や整理または管理銘柄は受け入れられないということです。このため、現在のNISA口座でこうした銘柄を保有している場合には、非課税期間の終了前に売却するか、課税口座への移管が必要となることには注意が必要です。

ロールオーバーの仕組みを理解して計画的な運用を

NISAは、税制面でのメリットが大きく、運用を考えているならぜひ利用したい制度です。ただし、ロールオーバーをするかどうかについては、戦略的に考える必要があります。「長期運用」は運用成果に有利に働くことが多いものですが、NISAにおいては利用枠という制限があります。このため、あえてロールオーバーせず、より有望なものに枠を譲ることも選択肢となりえます。

また、つみたてNISAへの切り替えや金融機関の変更を考える際には、ロールオーバーに制限がかかる点にも留意する必要があります。こうした制度の内容を理解し、またロールオーバーの手続きを忘れないように計画的な見直しを行うことが、NISAの制度を上手く使いこなすコツとなります。

執筆:北垣 愛
国内外の金融機関で、金融マーケットに直接携わる仕事を長く経験。現在は資産運用のコンサルタントを行いながら、主に金融に関する情報発信も行っている。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、FP一級技能士、宅地建物取引士資格試験合格、食生活アドバイザー2級

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