厚生年金,国民年金
(画像=pomupomu/stock.adobe.com)

会社を辞めて起業しようとするとき、または、家庭の主婦の方が再就職するときなど、社会における“ステータス”が変わることで、年金など各社会保険における適用も異なってきます。この記事では主に厚生年金と国民年金の違いから、年金の切り替えの手続きや注意点まで解説したいと思います。

目次

  1. 社会における“ステータス”が変わると年金制度も変わる
    1. ステータスごとで変わる年金制度
  2. 年金制度の比較と、切り替え時の注意点
    1. (1)年金の切り替え手続きについて
    2. (2)年金制度を切り替えると年金額も変わる? 一気に下がる可能性も…
  3. 年金額の差をカバーするためには?
  4. 老後を見据え、上乗せ年金の検討を

社会における“ステータス”が変わると年金制度も変わる

ここでいう“ステータス”とは社会における働き方と理解してください。社会における働き方には、会社員、公務員、自営業、また学生や家庭の主婦なども広い意味では社会における働き方に含まれると考えてもよいと思います。

ここでお話ししたいのは、社会における働き方によって、受ける年金制度が異なってくるということです。学生・自営業者等は第1号被保険者、会社員・公務員等は第2号被保険者、第2号被保険者に扶養されている配偶者を第3号被保険者といいます。

では、それぞれの被保険者について、年金制度上の位置づけをみていきましょう。

ステータスごとで変わる年金制度

図表1を参照ください。被保険者としての種別によって加入が義務付けられている年金制度が異なります。

▽図表1.被保険者の種別ごとに違う年金制度

種別第1号被保険者第2号被保険者第3号被保険者
加入する制度国民年金国民年金と厚生年金保険国民年金
対象者学生 ・自営業者など会社員 ・公務員など国内に居住し、第2号被保険者に扶養 されている配偶者
加入の届出方法住居のある市区 役所または町村役場へ届出勤務先の事業主が届出第2号被保険者の 勤務先経由で届出
保険料の納付方法各自が納付勤務先を通じて納付(給料から天引き)自己負担なし (第2号被保険者の 加入制度が負担)

※日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」をもとに筆者作成

第1号被保険者が加入する制度は国民年金です。住居のある市区町村に自分で届け出を行う必要があり、保険料も各自が自ら納付する必要があります。

第2号被保険者は国民年金と厚生年金に加入します。加入方法は勤務先が届け出を行い、保険料は勤務先が納付するので、本人の給与から天引きとなります。

第3号被保険者は会社員・公務員などの第2号被保険者に扶養されている配偶者です。加入の届け出は、第2号被保険者とともに勤務先から行います。特筆すべきは保険料で、第2号被保険者の支払う保険料から当人の保険料を負担するので、第3号被保険者自身が支払う必要がないという点です。

各年金制度の相違点としては、「加入の届出方法」「保険料の納付方法」に着目するとよいでしょう。第2号被保険者と第3号被保険者については勤務先である会社が代行してくれるのに対して、第1号被保険者の場合は、どちらも自分でやらなければいけません。

年金制度の比較と、切り替え時の注意点

働き方を変えると被保険者としての種別が変わり、年金を切り替える必要があります。本項では切り替えが必要になる代表的なケースと、その切り替え時の注意点を解説していきます。

(1)年金の切り替え手続きについて

具体的にどのようなときに年金制度の適用が変わるのでしょうか。考えられるのは次のような場合です。

▽国民年金から厚生年金へ切り替える場合
・学生が就職をして会社員・公務員になる
・子育てが終了した専業主婦が再就職する
・自営業者が会社員・公務員になる
・パートタイム主婦の収入が130万円未満から130万円以上に増える(従業員数が501人以上の会社に勤めている場合は、130万円でなく106万円が境界線になる可能性があります)

前項で説明したように、厚生年金は加入の届出や保険料の支払いは会社が代行してくれます。国民年金だった人が厚生年金へ加入する場合、就職先の会社の指示に従って必要書類を提出すれば、会社が切り替え手続きをしてくれるので問題はありません。通常は、マイナンバーや年金手帳(基礎年金番号)の提出などが求められます。

▽厚生年金から国民年金へ切り替える場合
・会社員・公務員が起業するため、退職して、自営業者になる
・会社員・公務員が転職をする際、再就職まで1ヵ月以上の期間が空いた
・会社員・公務員が何らかの事由で退職して無職になった
・上記の会社員・公務員の被扶養配偶者である場合(第3号被保険者から第1号被保険者になります)。
・パートタイム主婦の収入が130万円以上から130万円未満に減った場合(従業員数が501人以上の会社に勤めている場合は130万円でなく106万円が境界線になる可能性があります)

厚生年金の場合は会社がさまざまな手続きを行なってくれますが、国民年金の場合は被保険者と国の契約になるので、注意が必要です。厚生年金からの脱退手続きは元の会社がやってくれますが、国民年金の加入手続きは自分でやる必要があります。原則、退職後14日以内に年金手帳または基礎年金番号通知書、および、離職票等の退職日がわかる証明書と本人確認書類を持って居住地の市区役所か町村役場での手続きをすることになります。

注意しなければいけないのは、会社員・公務員から自営業になった人の被扶養配偶者(第3号被保険者)です。第3号被保険者は世帯主の国民年金への加入と同時に、自分自身も国民年金に加入する必要があります。

国民年金への加入を忘れた場合、納付期限から2年以内であれば、居住地の市区町村や町村役場で追納手続きを行うことができます。この場合、未納期間の分は一括納付をする必要があります。

未納のまま放置しておくと、将来の老齢年金額が減ってしまうだけでなく、万が一のことが起きたときに障害年金や遺族年金を受給できないことになるので、保険料の納付期限については十分注意をする必要があります。

(2)年金制度を切り替えると年金額も変わる? 一気に下がる可能性も…

ここまでに説明したように、第2号被保険者の年金は国民年金と厚生年金の2階建て構造になっているのに対し、第1号被保険者は国民年金だけの1階建て構造です。図表2はその構造を図示したものです。
公的年金は第2号被保険者に手厚く、第1号被保険者に薄く払われる構造になっています(第3号被保険者は第2号被保険者の被扶養配偶者ですが1階建て構造となっています)。

▽図表2.国民年金と厚生年金(公的年金の構造)

厚生年金,国民年金
※筆者作成

図表3は具体的な夫婦の例を想定した年金額の試算です。40年加入の満額ベースの標準的な例で比較すると夫婦の年金合計額は、第1号被保険者は年あたり約156万円、第2号被保険者では年あたり約265万円となっています。転職を考えるときは、こうした年金額の違いも理解しておきましょう。

▽図表3 第1号被保険者と第2号被保険者 年金受取額比較

厚生年金,国民年金
※40年加入の満額ベースを標準例で比較
※日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」をもとに筆者作成

年金額の差をカバーするためには?

前項では、会社員・公務員など第2号被保険者と自営業者など第1号被保険者の間で年金額の差が著しいことを示しました。しかし、この年金額の差は必ずしも覆せないものではありません。対策方法を紹介します。

・年金額の差をカバーするための2つの対策
第1号被保険者の公的年金を補填する目的で国がつくった制度として、2つ紹介します。それは、「国民年金基金」と「個人型確定拠出年金(iDeCo)」です。これらは強制加入ではなく任意加入の制度ですが、加入することにより、第1号被保険者は第2号被保険者との公的年金の差を大きく埋めることができます。

以下の図表4・5をご覧ください。国民年金基金とiDeCoは、ともに国民年金に対する上乗せ年金ですが、その違いは、国民年金基金が「契約者が運用のリスクを負わず、加入時に年金額が確定する制度」であるのに対し、iDeCoは「自らのリスクで運用する制度」である点にあります。掛金が全額所得控除の対象になるなどの節税効果は両者ともあります。年額81.6万円の掛金限度額内で両者を組み合わせて加入することも可能です。

会社員をやめて起業しようというときには、将来への保障としてどちらかの年金に加入することを検討するとよいでしょう。

▽図表4.国民年金基金と個人型確定拠出年金(iDeCo)の比較

種類掛金限度額年金支払期間節税効果
国民年金基金確定給付年金
・掛金運用のリスクなし
・加入とともに年金額が確定する
・予定利率1.5%
両者合わせて、年額81.6万円
(限度額内で両者を自由に組み合わせることが可能)
終身年金、または、保証期間付き終身年金掛金は全額所得控除の対象
個人型確定拠出年金(iDeCo)確定拠出年金
・掛金運用は自分自身のリスクで行う
・年金額が確定しない
確定年金
(5/10/15/20年から選択可能)
掛金は全額所得控除の対象
運用益も非課税

※筆者作成

老後を見据え、上乗せ年金の検討を

国民年金と厚生年金で受けられる年金額に差があること、国民年金の場合は諸手続きもすべて自分で行わなければいけないといった注意点を解説してきました。

会社員をやめて起業するなど、社会における“ステータス”を変えようとするときは老後のセーフティネットとなる年金がどう変わるかを確認し、国民年金基金やiDeCoなどの上乗せ年金の加入を検討することをおすすめします。

執筆:浦上 登
東京築地生まれ。大手重工業メーカーで海外営業を担当後、保険部門に勤務。現在、サマーアロー・コンサルティング代表。ファイナンシャル・プランナー、証券外務員第一種。ライフプラン等の個人相談および講演・記事執筆を行う。

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