レジなし,店舗
(画像=chachamal/stock.adobe.com)

2020年は、日本国内でも「レジなし店舗」を目指す取り組みが活発化した年でした。2月にはローソンが同年5月までの実証実験を開始。11月にはファミリーマートが無人決済店舗の開発を行うTOUCH TO GOとの業務提携、2021年春ごろに提携1号店を開店すると発表しました。また同月に西友の株式の85%を取得した楽天・KKRの狙いのひとつにも、こうしたデジタル技術を応用した新しい小売り業態の実現があるといいます。

いよいよ動き始めた「レジなし店舗」。はたして、急速に普及していくことができるのでしょうか。今回は、各社が思い描く新しい小売りの形と、目の前にある課題を整理してみたいと思います。

目次

  1. 世界的なレジなし店舗のトレンド
  2. 国内小売りにおけるレジなし店舗の取り組み
    1. Zippin×ローソン
    2. ファミリーマート×TOUCH TO GO
    3. 西友×KKR×楽天
  3. レジなし店舗に各社が期待する理由
  4. レジなし店舗の本格普及には課題も多い
    1. “ホットスナック”の提供が難しい
    2. お酒やたばこの販売が難しい
    3. 個人情報漏洩の危険性
  5. 変革期に小売り業界はどう対応していくか?

世界的なレジなし店舗のトレンド

レジなし店舗に近い店舗形態として、“無人店舗”があります。

無人店舗は、中国の中山市賓哥網絡科技が世界に先駆けて実用化。2016年8月、4.5坪の無人店舗「Bingo Box」を開業させ、世界を驚かせたのです。一方のアマゾンも猛追を見せ、同年12月には本社内に「Amazon Go」をオープンさせています。

先行の「Bingo Box」と「Amazon Go」は無人店舗という点では共通していますが、大きな違いがあります。「Bingo Box」は常に玄関が施錠されており、開錠にスマホを使用することと、RFIDタグによる会計ができるとはいえ、購入する品物は購入者自らレジに通さなくてはならなかったのです。対する「Amazon Go」は、カメラとAIを使う“Just walk out”と呼ぶテクノロジーによって、ただ商品を持って歩き去るだけで決済が完了します。店舗の入り口に鍵もかかっていません。

すなわち、「Amazon Go」は“レジなし店舗”であるだけでなく、入退店時にストレスフリーなのです。世界ではアマゾンがこの分野で先行しており、2020年3月には、このレジなし店舗システムの販売を開始しています。

無人店舗「Bingo Box」とレジなし店舗「Amazon Go」の比較に戻ると、悪天候や手荷物が多いなどさまざまな事情がある買い物客にとって、利用しやすいのはどちらかというと答えは明白でした。中国では、「Bingo Box」は店舗数が減少しており、現在「Amazon Go」と同様のレジなし型店舗を展開するJian24や猩便利(Xingbianli)などのプレイヤーが上海など大都市を中心に台頭しつつあるところです。

国内小売りにおけるレジなし店舗の取り組み

国内で進んでいる、レジなし店舗にかかわる動きは主に次のとおりです。すでに高輪ゲートウェイ駅や、目白駅でレジなし店舗を営業しているプレイヤーも存在しています。

Zippin×ローソン

Zippinは米VCOGNITION TECHNOLOGIESが開発した、レジなし店舗システムです。ローソンは2月にこのシステムを使った「ローソン富士通新川崎TSレジレス店」をオープンし、3ヵ月間の実証実験を行いました。専用アプリ「Lawson Go」にクレジットカードを登録、アプリに表示されたQRコードをかざして入店、あとは商品をピックアップして店を出るだけで自動的に会計されるという仕組みです。

なお、VCOGNITION TECHNOLOGIESは2019年12月、NTTドコモ・ベンチャーズから出資を受けています。ドコモグループが持つ決済技術やサービスなどと連携することで、これから日本国内のレジなし分野でのシェア確保に大きな力を持つであろうことが予想できます。

ファミリーマート×TOUCH TO GO

2020年11月4日、ファミリーマートは無人決済店舗の開発を進めるTOUCH TO GO(TTG)が開発した無人決済システムを活用した無人決済コンビニエンスストアの実用化に向けて業務提携をしたと発表しました。

TTGが提供する無人決済システムは、店内で商品を取る動きをカメラが認識し、出口で購入商品が正しいかを確認することで決済完了となる仕組みです。

なお、TTGはJR東日本のグループ会社であるJR東日本スタートアップとシステムコンサルティング事業を展開するサインポストの合弁会社。2020年3月には高輪ゲートウェイ駅で同システムを導入したTTG直営店舗「TOUCH TO GO高輪GW店」を開業しており、10月には紀ノ國屋とレジなし小型スーパーマーケット「KINOKUNIYA Sutto目白駅店」を開業するなどすでに実際の営業を開始しています。

ファミリーマートにとっては、今回の業務提携によってレジなしコンビニ競争では一歩進んだ形に。今後の各社の出方にも注目が集まります。

西友×KKR×楽天

11月16日、ウォルマートが保有していた西友の株式をKKRが65%、楽天が20%、ウォルマートが15%保有することで合意したことが発表されました。

新しく3社が株主となることで各社の強みを生かした事業展開がなされていくことが想定されますが、西友はこのことについて、「日本を代表するOMOリテーラーを目指す」としています。「OMO」とは“Online Merges with Offline”の略称で、つまりオンラインとオフラインの融合を指します。

西友の場合、前段でご紹介してきたような無人店舗やレジなし店舗の展開もいずれ視野に入ることと思われますが、ネットで買い物をするオンライン販売と、実店舗で買い物をするオフライン販売の融合を強化し、「実店舗ありきのネット販売」の分野で日本を代表する存在になろうとしています。

米ウォルマートではネットで注文した商品を実店舗のドライブスルーで受け取るといったようなサービスが行われており、これもレジなし店舗の一種といえるでしょう。こうした、日本では未着手の分野を他社に先駆けてシステム構築していくことを狙っていると思われます。

レジなし店舗に各社が期待する理由

このようにコンビニ業界をはじめとする小売り各社は、レジなし店舗にどのような期待を抱いているのでしょうか。

まず、コンビニは日本の人口が減少局面にあるなかで、“24時間営業”という利便性を維持していくための労働人材の確保が喫緊の課題になっています。もちろん営業時間を短縮するといった方法もあるとは思いますが、中長期的な視点に立つと省人化の仕組みをつくらない限りは、いずれ先細りする労働市場の前に事業が立ち行かなくなってしまうのです。

こうした省人化への期待とともに、すべてがデジタル化することによってこれまで以上にデータ量が増えるという期待もあります。レジなし店舗では、来店客の行動をあらゆる方向から捕捉、データ蓄積することができます。それを分析して店舗運営や商品開発などに活用していくことで、より売り上げが上がることも期待できます。

そのほかにも、コロナ禍でなるべく人との接触を避ける傾向が強まったことに対応できること、会計に時間かけることなく快適な買い物体験ができることを強く訴求できる点など、さまざまな魅力があります。大きく変革するこれからの社会に小売り業界が対応していける手段として期待は大きいようです。

レジなし店舗の本格普及には課題も多い

メリットの多いレジなし店舗ですがその普及に向けてはまだまだ課題が多いようです。いくつか挙げて整理してみました。

“ホットスナック”の提供が難しい

レジ横のショーケースに陳列されている肉まんやおでんなどの“ホットスナック”は、通常は来店客が自ら手に取ることできない商品です。提供には、店員による調理も必要になるため、ホットスナック商品の販売をどうするかは難しいところです。

お酒やたばこの販売が難しい

コンビニの多くは、購入者が20歳以上か確認できない場合は販売してはならない、アルコール類とたばこも販売しています。ビデオカメラで追跡できるとはいえ、本人確認が十分ではないレジなし店舗の場合は、アルコールやたばこが販売できません。

ただし、先述の「TOUCH TO GO高輪GW店」は、たばこは扱っていないものの、バックヤードにいる従業員や遠隔コールセンターを活用して年齢確認を行うことでアルコール類の販売を可能にしています。完全無人化ではないものの、少なくともお酒の販売は不可能ではないようです。

個人情報漏洩の危険性

キャッシュレス決済もそうですが、こうしたレジなし店舗では企業や店舗側が「どこのだれがいつどこで何を買ったのか」といった顧客データを収集・蓄積することができます。

プライバシーポリシーに同意したうえでの使用とはいえ、消費者側はしっかりとしたデータ管理がなされているかどうかチェックする術もなく、いざ漏洩したときにそれにあらがう手段もありません。

個人情報漏洩のリスクを根本的に解決するのは難しいといえますが、レジなし店舗の普及とともに、消費者も事業者もこうしたリスクと共存しなければならなくなります。

変革期に小売り業界はどう対応していくか?

利便性や省人化を追求していくうえでは、避けて通れない課題がたくさん潜んでいるようです。アルコール類の販売など解決が進んでいる部分もありますが、なかには解決しがたいと思われる課題もあります。また、本格的に導入するともなれば入退店ゲートなどを各店舗に設置することが必要になり、大規模な設備投資、また時間が必要となることは避けられないでしょう。

日本は、完璧なまでにつくり上げてしまったコンビニのシステムであるがゆえに、こうした変革期にはかえって障壁となってしまうということなのでしょう。こうしたことから、レジなし店舗が普及するには、相当の時間がかかるのではないかと想像できます。

しかし、変革する時代に歩みが止まることはないでしょう。多店舗展開競争を続けてきたコンビニ、小売り業界は今後、どこが一番先に時代の変化に対応できるかという新しい競争を強いられることになりそうです。

文・J PRIME編集部

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